ラグナアント掃討作戦(3)
クオンとB09の併走は、僅か15分程度で終了した。
荒野に設定された集結地点に到達したからだ。
集結地点には、指揮車両を始めとした戦闘ボットが整然と並んでいた。
既にほかのゲートから出撃したスレイブユニットも到着しており、指揮車両の前に整列していた。
「俺たちが最後みたいだな」
「私たちのゲートは集結地点から一番遠かったから必然ね」
ラグーンを車列に合わせる形で並べた二人はラグーンから下車する。
『B02到着したようですね。指定の戦闘ボットの掌握を願います。武装の確認も合わせて行ってください』
「了。B02より指揮下ユニット、事前の割り振りに従い戦闘ボットのチェックを開始」
『『『『『『了』』』』』
待機していたスレイブの内、直下のスレイブ5名が散らばりチェックを開始する。
クオンは、増設した外部タンクを確認する。
受領時にB01とAIのチェックが入っているのでまず問題はないが、これも必要プロセスとして義務付けられている。工程を飛ばすと評価に影響するので絶対に怠れない。
モニターからタンク内の状況を確認した上でコンテナ車両との接続部などをひとつひとつ確認する。異常がないのを確認する度に、スクリーンに表示されるチェック項目が消えていく。他のユニットに任せたチェック項目についても順調に消化されていく。
『チェックリストの69%を消化。終了までおよそ300』
「チェックを通過した戦闘ボットの制御キーを各員に配布。移動開始時点から制御権を移譲」
『了、指揮下ユニットに制御キーを配布します』
クオンは自らの制御下に入る戦闘ボットに歩み寄る。
六足のスパイダー型の戦闘ボッドだ。
胴体部分の車高がかなり低くされており、頭部からは副兵装である2門の銃座が顎のように突き出されている。胴体にはレーザーガトリング2門と各種メイン兵装が設置されている。メイン兵装は、機体ごとにことなり火炎放射やレールガンなど様々だ。一部の機体には、各種特殊弾頭をセットしたランチャーセットされている。
デリケートな関節部分や弾薬の装填状況などを目視で丁寧に確認していく。
「B02より指揮下ユニット、チェック終了と同時に戦闘ポッドを起動。移動に備えよ」
『『『『『『了』』』』』
「B09、予定通りフロントは貴方に任せます。取得情報を元にルート修正を」
『了』
B09は、部隊内で最も経験豊富なユニットだ。習得済みの技能も多く斥候として必要な技能も粗方習得している。戦闘能力も高く能力的に死角がないので、高いスキルを要求されるフロントに配置するのは最適解と言える。
『チェックリストの全項目を消化しました。結果を管制へ共有、戦闘ボットの兵装ロックを解除します』
「B01、チェック完了。ステータスオールグリーン出撃準備よし」
最後の項目にチェックが入るとクオンは自らの制御下にある戦闘ボットを起動させる。
ラグーンに乗車し、戦闘ボットとのデータリンクを確認すると発進姿勢でB01からの号令を待った。
『B02、出撃を許可する。作戦ポイントαまで移動を開始せよ』
「了。B02より指揮下ユニット、移動開始」
『『『『『『了』』』』』
号令に従いB09のラグーンが飛び出す。続いて制御下の戦闘ボッド3機が追走を開始する。続いて2機のラグーンと6機の戦闘ボットが追随する。
それを見て取ったクオンがアクセルを入れる。クオンのラグーンが滑らかに走り出す。
クオン制御下の戦闘ボット5機も追走を始める。
更にその後には装甲車とコンテナ車両と続く。最後尾につくラグーンと僚機の戦闘ボットが発進をレーダー情報から見て取ると周囲へ視線を向ける。
装甲車を中心とした綺麗な縦長の方円陣形がラグーンで組まれている。軸線などもきっちり調整されていて、理想的なポジション配置がされていた。
上空には偵察ドローン3機を飛ばし、指揮車両に周辺データを送信している。
『B01より指揮下ユニット、現行速度を維持したまま作戦ポイントαまで移動。交戦は任意、ラグナアント発見時は駆除を優先』
『『『『『「了」』』』』
程なくして部隊は荒野を抜け平原に入った。同時に、レーダーに複数の赤い点が表示された。今回はターゲットとしている為、ラグナアントが敵性生物として表示されている。
「B02より指揮下ユニットへ、戦闘ボッドにてラグナアントを掃討せよ。なお、兵装の使用はサブ兵装のみとする」
『『『『『『了』』』』』
部隊のフロントと両翼に展開していた戦闘ボッドが、レーダー上のラグナアントの赤い点へと近づいていく。
「サクヤ、07のメインカメラ映像を表示」
『了』
一番接敵が早いボットを選びメットのスクリーンの映像を表示させる。
前方に見える小さな黒い影に向かって白い草原を進んでいく映像が流れる。有効射程になると散発的に射撃が開始され、数体の黒い影が吹き飛ばされるのが見て取れた。
07のボットはそのまま影に近づき対象が蟻として判別できる距離に到達した。
事前の情報通りラグナアントは、20cm程度の巨大な黒い蟻だった。
拡大して状況を確認すると戦闘ボッドから発射された数発の弾丸は、頭部と腹部の中央に正確に命中、加えて3対ある足の一部が銃弾で吹き飛んでいた。
腹部には弾頭に弾丸サイズの穴が開いており、そこから緑の体液が流れ出ている。頭部の方は開いておらず、割れた陶器のように甲殻が弾丸によって割られていた。足がまだわずかに動く様子からして、まだ絶命はしていないようだ。
『サブ兵装でも掃討には十分のようです』
「頭部甲殻の貫通までには至っていないようね。腹を狙うのが確実かな」
『その判断を支持します。的の大きな腹部を狙うのであれば、弾薬の節約できるかと』
「B02より指揮下ユニットへ、銃撃時は対象の腹部を目標としてください。絶命はしませんが、十分なダメージを与えられます」
『『『『『『了』』』』』
ラグナアントへのターゲット補正を頭部から腹部へと変更し、ボッドの火器管制に即座に反映する。
その間に蟻と接敵したボッドが交戦に入り、レーダー上の赤い点を次々に消していく。
「B01、発見された蟻34体の処理を完了。必要ならサンプル回収可能です」
『兵装の有効性を確認できたためサンプルは不要と判断。すみやかに戦闘ボットを戻し、警戒に当たってください』
「了」
B01から予想通りの回答を得たクオンは、各員にボッド戻す旨を伝える。
こうしてB部隊は、ミッション開始からさほど時間が経過していないにも関わらず小さな群を処理すると言う確実な成果を上げ、幸先の好いスタートを切るのだった。




