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指揮訓練(2)

 クオンは施設内を走っていた。走っているのは天井が見えないほど高い廊下で、黒塗りの壁に覆われていた。

 手にはアサルトライフル、身体には黒プラグスーツとアシストスーツを装備していた。

 スレイブユニットとして強化された肉体とアシストスーツの力によって200mの距離を僅か6秒で走破していく。


『右前方距離500、上方17.6に反応あり』

「了」


 インカム越しに伝わる情報を元に索敵し、視界に入った球体型のドローンを撃ち抜く。

 撃ち抜かれたドローンが沈黙し、地面へと落下する


『ヒット、目標ポイントとの誤差0.15。修正の必要あり』


 射撃結果を観測したサクヤが淡々と告げる。

 ドローンの姿勢制御モジュールを的確に撃ち抜いたつもりが、大分ズレている。当たり所が良かったため沈黙させられたが、上手い迎撃とは言い難い。


「弾丸の薬液を0.2㎎ 減少」

『警告。射程&貫徹力の減少が想定されます』

「基地内だったら問題ない。標的が1000を超えるようなら薬液の量を戻して」

『了。弾薬の薬液を調整し撃発時の衝撃を緩和します。調整完了、マガジンをA2に変更してください』


 言葉に従い、素早くライフルのマガジンを交換する。装填済みの弾丸は、通路に設置された定点カメラを撃ち抜いて処理する。

 R-06と記載された巨大な扉を確認したクオンは、その扉を監視する装置をバイザーのスクリーン情報を元に処理していく。

 巨大なゲートだけあって監視&防御装置の数が多い。


『定点カメラR-05-29を破壊を確認。R-06ゲートの監視装置を排除しました』

「こちらB02、目標地点確保。続けて装置αの設置を行う」


 最後の装置を撃ち抜くとサクヤの知らせを元に指揮ユニットへ報告を行う。R-06ゲートに到着してから防衛&監視装置の排除に約200秒もの時間を費やしていた。

 クオンは、破壊した定点カメラが設置された小さな足場に飛び乗り、カメラの回線ケーブルに四角い装置を接続する。

 稼働を示す緑のランプが点灯し、基地セキュリティへのハッキングを開始する。


『こちらB01、接続を確認。セキュリティロック解除まで180秒』


 情報が更新されカウントダウンが始まる。

 それに少し遅れてアシストスーツのセンサーが振動を拾う。

 センサー情報から推測するに複数の人型ユニットであることが分かる。


「B01、R-06ゲート内より振動を感知。複数の敵性ユニットの可能性大。会敵予測90秒後」

『B02、装置の死守は可能か?』

「相手の目標はR-06ゲートの奪還にあると想定。装置の死守は不可能と思われる」

『R-06ゲートからの侵入は断念。装置を囮にしポイントR-13へ移動せよ。移動ルート上の目標物の排除よりも移動を優先せよ』

「了。R-06のゲートに対しトラップの設置を提案。20秒の残留を許可されたし」

『B02、20秒の残留を許可する』


 指揮ユニットから許可をもらったクオンは、2箇所にプラズマグレネードを設置する。

 ひとつは時限信管でゲートの直上にセット。もうひとつはゲートの先から見た際に装置で視覚になる形でプラズマグレネードをセットした。どちらも効果範囲は最大にしてある。上手く行けばかなりのダメージを与えられるはずだ。


『スパイロボットを装備するべきでしたね』

「次の装備の課題かな」


 サクヤの言葉に全面的に同意しつつR-06ゲートを離れ、R13ゲートへと向かう。

 暫くすると背後から数発の銃撃音が聞こえる。薄っすらと届く光が2回届いたお陰で、プラズマグレネードの炸裂は確認できた。

 しかし、敵を巻き込めたかどうかは分からない。


「B01、トラップの発動を確認したものの成果については不明」

『了。B03&B07との通信途絶、バイタルが停止したことから死亡と判断』

「B01、両ユニットの死因について情報はありますか?」

『不明。バイタルが停止後、通信途絶』

「了。警戒レベルを上げて行動します」


 クオンと同じ役割をしていたユニットがやられた。しかも、どちらもクオンの近くにいたはずのユニットだ。


「サクヤ、現時点で考えられる可能性を教えて」

『バイタルが停止した後に通信途絶した点&接敵報告がない点を考慮すると認知外からの攻撃と推測できます。直前までバイタルに異常がみられないことから外傷による死亡。それも即死と思われます』

「私が想定しているのは狙撃だけど、貴方の分析は?」

『その判断を支持いたします。狙撃もしくはそれに類似する何かだと思われます』


 スクリーンに映る両ユニットの死亡予測地点を確認する。

 マップを見る限り二人の位置関係は直線距離で見れば近い。しかし、道順を沿って動くとなるとそれ相応の時間がかかる。両者を同じユニットが攻撃するのは無理があった。

 それにスレイブユニットの移動は三次元軌道だ。とても狙撃できるとは思えない。


「私が攻撃されるポイントはどこだと思う」

『R-13ゲートでしょう』

「なら、そろそろ来るかな!」


 受け答えと同時にクオンが壁を蹴り大きく進路を変える。

 すると一瞬遅れて、背後から銃弾の雨が降り注いだ。R-06ゲートから抜けてきたユニットだろう。

 これは本命ではないクオンを狩るための罠だ。壁に着地し、銃弾がやって来た方へと顔を向ける。


「挟まれた」


 トラップを設置してまで時間を稼いだのに、R-06からやって来たユニットは容易くクオンに追いついた。クオンがトップスピードに近い速度で移動していた筈なのにだ。

 完全にこちらは後手に回っている。完璧に作戦負けだ。

 クオンは、その事実を自覚し歯噛みする。


「B01、R-06ゲート方面より攻撃を受けた。R-13ゲートへ追い込むためと思われる」

『その通りです。そして、貴方の命は其処で終わりです』


 その言葉を聞いてクオンは、ピタリと動きが止まった。

 聞こえて来たのは指揮ユニットであるB01の声ではなかった。その通信の声は、クオンの知っているだれの声でもなかった。


『クオン、止まってはいけません!』


 ヘルメット内に響くサクヤの声。

 完全に止まっていたのは、刹那とも言える時間。

 その刹那の間に、クオンの命はあっさりと刈り取られた。



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