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バディとアライメント(2)

『共同ミッションを特定の専任ユニットと受託できるシステムです。この契約を結んでいるユニット同士の関係をバディと呼称しています』


 理解していないクオンに、007(セブン)が簡潔に説明する。


「それって今回の共同ミッションと同じってこと?」

『今回のミッションは基地の指揮AIによる指名ミッションです。共同ミッションではありますが根本的に全く別のモノです』


 呟きを007(セブン)が訂正する。


『具体的なメリットとしてはツーマンセルでのミッションの優先受注件です。加えて、パートナーが見知ったユニットとなるので、ミスマッチによる不確定要素を避けられます』


 モニターに映るプラントイーターの状況を確認しながら、クオンは教えられたことを頭の中で整理する。

 素直な話、クオンにとってメリットは大きい話だ。

 実力が保障されている007(セブン)と組めるなら、高い安全が保障されたも同然だ。

 しかし、当然そこにはデメリットも必ず存在する。


「サクヤ、私が今の時点でパートナーを固定化することで発生するデメリットはなに?」

『結論として、クオンと007(セブン)とのバディ契約は推奨できません。主な理由は、クオンの経験が少ないためです。データ蓄積が十分でない時点で、バディ契約を結んでしまうとデータに偏りが生じます。適正度の低いミッションにアサインされる可能性も高まり、メリットよりもデメリットが多いと判断します』

「なるほど、007(セブン)契約はできなさそうです。理由は聞いていた通りです」

『了。元々、断られることは予想していたので構いません』

「予想通りなの?」


 思いがけない007(セブン)の返答に驚くクオン。


『はい、ほぼ確実に断られると予想していました』

「理由を聞いてもいい?」

『主な理由はそちらのAIが伝えた通りですが、契約をするとどうしても相手ユニットの行動に引っ張られますし、他のユニットとの接触を阻害する要因にもなります。それは活動を開始して間もない貴方にとって好ましくないでしょう。だからこそシステムを介した正式な申し出ではなく。口頭での意思確認に留めたのです』

「サクヤ、システムを介さない意思確認にどんな意味があるの?」


 理由を説明されたクオンは、己の知らない手法に対し興味を示した。


『システムを介さない口頭でのリクエストは、SPを必要としない点と正規ログに残らない点が最大のメリットになると思われます』

「SPは分かるけど正規ログに残らないのがメリット?」

『肯定。リクエストの申し出が拒否されたと言う事実は、他のユニットからすれば何か問題のあるユニットであると見られる要因となります。そうしたリスクを避ける為、口頭での意思確認は非常に理に叶っています』

「そんなに違うモノ?」

『数件程度では影響しませんが、数が多い点を問題視するユニットがいるのは事実です。AI判断にしても参考材料にするのは間違いありませんので、際立って数値が多いと問題視されます』


 どうやら正規ログにネガディブ要素が追加されるのは、思っている以上にデリケートな問題らしい。何気ない申し出を断られただけでも、ユニット情報に拭えない汚れが入るようだ。

 新米ユニットであるクオンからして見れば刷り込まれた知識が全てであるため、拒否されても「残念」と言う思いを抱くだけだ。そこまで重要な要素としては認識していなかった。

 やはり上位ユニットとの関りは凄まじく有益。

 その事実をクオンは改めて認識した。


007(セブン)、私はあなたとの交流を肯定的に受け取っています。可能なら今後も交流を続けたく思います」


 クオンは自身の思いを隠すことなくそのまま口にした。


『なら、アライメントに相互登録するのはどうでしょうか?これならば情報交換が容易になります』


 再びクオンの知らないシステム用語が飛び出した。


『アライメントとは登録した対象との情報交換を許可するシステムです。具体的なメリットは相互にデータの交換が可能になり、相手の動向も確認できるようになります。スレイブユニット同士の簡単なコミュニケーションが可能となると思えばいいでしょう。支援AIとしてはユニットの交流活性化に繋がるので推奨します』


 求める前にサクヤが解説をする。

 メリットを告げたのにデメリットを告げないのは、無視できるレベルのデメリットしか存在しないと言う事だろう。


「それってSPリストにあったけ?バディ契約も含めて見た覚えがないんだけど」


 数多の項目が用意されているSPリストだが、確認した範囲で見た記憶がない。


『クオンのリストには、権限が不足しているため存在していません』

「ん?そうなるとシステムの機能を私に教えるのは、ダメなんじゃないの?」

『権限を有している上位ユニットからの情報共有があったため、情報開示条件が満たされました。SPリストにも追加されます』


 疑問を露わにするクオンに、サクヤが説明をつけ加える。

 クオンの感知しない所で開示条件を満たしていたらしい。恐らく、こういった点もAIがアライメント登録を推奨する理由なのだろう。

 もたらされた情報をクオンは己の中で咀嚼していく。

 そして、リクエスト前にやらねばならない事を実行する。


007(セブン)、アライメントの相互登録を希望します。受けてくれますか?」

『素晴らしいです。私も貴方とのアライメントの相互登録を希望します』


 007(セブン)から返って来たのは、これまでの機械的な言葉ではなかった。少し抑揚の混じっていて、明らかに声色の質が変わっていた。

 どうやら対応は間違ってなかったらしい。

 クオンはほっと息を吐いた。


007(セブン)、私が口頭確認を取らなかった場合は拒否していましたか?」

『いいえ、拒否はしませんが許可もしません。与えられた情報を有効活用できないユニットと判断し、交流に値するユニットであると判断できるまで回答を保留します』


 つまりクオンは、値踏みされていたらしい。

 与えられた情報を即座に役立てられるユニットかどうかを見られていたのだ。

 007(セブン)の目的は最初からアライメントの相互登録だったのだろう。

 何も考えずバディ登録をしようとするなら失格。与えられた情報を役立てずアライメント登録を迫るなら扱いは保留。与えられた情報を即座に行動に反映し、口頭確認を行った上でアライメント登録を希望するなら合格。

 憶測だが、まず間違いないだろう。


007(セブン)、上位ユニットは皆そんなに強かなのですか?」

『不明です。ですが数多のスレイブの上に立つと言う事は、それに足る理由があると言う事です』


 クオンは、言外にこの程度で驚くなと言われた気がした。

 底辺ランクのユニットに対し「厳し過ぎないか?」と思うが、これが現実なのだろう。

 一筋縄にはいかないスレイブユニットへの対応を考え、クオンは少し億劫になった。


「改めて、Type- HN 007、アライメントの相互登録を希望します」

『了、Type- HN 774クオンとのアライメントの相互登録を歓迎します。私からリクエストを飛ばすので、そちらで承認してください』

「上位ユニットからのリクエストにも意味が?」

『上位ユニットから下位ユニットへのリクエストする場合、SPが少なく済みます。貴方は最低ランクなので、私のSP消費は全て免除されます』


 どうやら消費SPについてもランク格差が存在するらしい。

 ランクは高い方が好ましいと考えていたが、実利の面でもランクの恩恵は大きいようだ。


「サクヤ、私がリクエストした場合のSPは?」

『SP 30を必要とします』


 その後、007(セブン)とクオンとのアライメント登録は滞りなく完了した。捕獲ミッションは滞りなく成功した。

 トラブルもなくミッションを終了し基地に戻ったクオンだったが、これまでのミッションで一番疲労を感じていた。


 クオンの疲労の原因。

 それは上位ユニットと底辺ユニットとの凄まじいまでの格差を実感したせいだった。


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