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調査任務(5)

 真っ先にクオンの目に入ったのは、整然と並べられた兵器の車両軍。そして、クオンと同系統のヒューマノイド型のスレイブユニット達だった。クオンと同じ女性型だけでなく男性型も同じくらいの割合で存在していた。

 それぞれが目的をもって行動しているらしく足早に移動しては、車両に乗り込んだり整備を行ったり、コンテナを納品したりしている。

 活動しているのは、スレイブユニットだけではない。

 いくつもの小型の地上ドローンが車両と人の合間を縫って動き回り、コンテナの運搬や隔壁の洗浄、車両整備など様々なことを行っていた。


「初めて他のユニットを見た」

『初の基地ミッションなので当然です』

「それもそうか」


 ヘルメットに表示される誘導に従いながら歩みを進めるクオン。

 目的地を見失わないよう注意しながら進みつつも視界に入る各ユニットに視線を向ける。


「私と同じヒューマノイドのユニットばかりね」


 視界に入るのは多少の差異はあるモノの全てヒューマノイド型のユニットだった。


「別系統がいた方が運用に幅が持たせられると思うんだけど」


 クオンの知識にあるだけでもビースト系やドラコニア系などのタイプがある。

 惑星ラグナの環境に適したモノは、ヒューマノイドよりも数多く存在するはずだ。むしろ先に上げた二つのユニットの方がヒューマノイド型よりも環境適用能力は高そうである。


『当基地のレベルですと運用ユニットを統一した方が、効率が良いと言うのが結論です。理由としては、兵器群や施設の機器などを統一できるからです。サイズや食性、必要な居住環境などが異なると管理コストが跳ね上がります』

「なるほど、この規模の基地だとそれぞれ特色があるのか。でもそれだと他の基地との連携が不便そうだけど」

『肯定。周辺のユニットを受け入れられるよう最低限の施設などは存在していますが、多数のユニットの受け入れは不可能です』

「私がこの基地に配属されたのは必然ってことね。充足率の平均化を考えたら、他の基地と運用ユニットを合わせるのも手じゃないの?」

『充足率の平均化は推奨されていません。平均化して多くの施設が機能不全に陥るより、局所的に機能しない施設が存在する方がいいと判断されています。局所的であればリカバリーは容易です』


 思ったことを口にするクオンに、サクヤが回答する。


『クオン、当然のことですが貴方には戦略面での理解が不足しているようです』

「戦略知識はインストールされてないからね」


 サクヤの評価に肩を竦めるクオン。

 その言葉通り、末端のスレイブユニットであるクオンには戦略知識はインストールされていない。

 もちろん最低限の知識はインストールされているが、それは個人レベルの範囲だ。

 どんなに頑張っても精々が両手の指の数程を運用できる程度の知識しかない。


『上を目指すのであれば、一定レベルの戦略&戦術知識のインストールを推奨します』

「無知でいるつもりはないからその内ね。ちなみに必要SPは?」

『該当情報の取得に必要な権限が不足しています』


 インカムから聞きなれた定型文が届く。

 どうやら今のクオンの立場では、戦略&戦術知識のインストールに必要なSPの量すら教えて貰えないらしい。


「末端は辛い」

『活動時間を考えれば当然かと』

「まあ、そうね。私が知識を得られるのはいつになる事やら」

『スレイブとして価値を示せば技術は必ず取得できます』


 ボヤくクオンに冷たい現実が告げられる。


「分かりきった意見ありがとう」

『どういたしまして』


 少しムッとし嫌味を返すとクオンに、淡々と言葉を返すサクヤ。


「大変優秀な支援AIですこと」


 的確な返しにクオンは頬を膨らませる。


『お褒めに預り光栄ですクオン。今の言葉は、私の評価データとして記録させていただきます』

「これは皮肉よ」

『承知しています。ですが誉め言葉を貰った事実には変わりありませんので』


 ああ言えばこう言う。

 全く動じないサクヤの言動にクオンの表情が引き攣る。

 相手はAI、こうなるのは当然だ。それはクオンも分かっている。

 だが、釈然としない。


 何とも言えないもやもやが、クオンの胸の内で蠢いている。

 ぐっと拳を握り、いつか同じ思いをサクヤにさせてやると心に誓う。


『クオン、握り込んだ拳は何を意味しているのでしょう?』

「あれ?見えているの?」

『施設カメラで追跡中ではありますが、それとは別にプラグスーツのモーションログから判別可能です。原則的に常時モニタリングしております。それでクオン、握り込んだ拳は何を意味しているのですか?』

「誰かさんにいつか同じ思いをさせてやると言う誓いの拳よ」


 どこかで聞いた事のある目標だと思いつつ、心の誓いを正直に言い放つ。


『……以前にも似たような目標設定をした記録があります』

「そうだったかなぁ」

『些か不穏な目標として記録されていますが、こちらも目標に追加しますか?』


 とぼけるクオンにサクヤが粛々と対応をする。


「是非、そうして」

『了、目標に追加します』


 投げやり気味に応えながら歩みを進めると、車両が並べられたエリアに辿り着いた。

 多種多様のバイクが整然と並べられており、どれを受け取ればいいのかクオンには判別できなかった。


『手前のコンソールを操作してください』


 コンソールに手を翳すといくつかのコマンドが出て来た。

 装備受領のコマンドがあったので、選択するとIDの入力が求められた。


「入力するのはミッションIDでいいの?」

『肯定』


 パネルを操作し、ミッションIDを入力していく。

入力を完了するとUIが切り替わり手形が表示される。


『手を置いて静脈データのスキャンを行ってください』


 指示に従いパネルの上に手を置くと程なくしてスキャンが完了する。


『スレイブユニット「クオン」に駆動2輪RO357-B7ラグーンを貸与。オプション装備は調査用コンテナ1、ドローンコンテナ2』


 サクヤとは違うAIによるシステム音声が流れる。同時に流線形フォルムをした白塗りのバイクが車両群から抜け出し、クオンの目の前で停車する。

 後輪が二つタイヤで構成された安定度が非常に高い重量級のバイク、それがラグーンだ。

 既にオプション装備はセット済みらしく。後方に各種装備が付けられている。ご丁寧にもフロントポケットには水分補給用のボトルが複数セットされている。


『貸与完了。当該ユニットの完全なるミッション遂行を期待する』

「さっさと行って、さっさと帰って来ますよと」


 クオンがラグーンに跨りスクリーンを操作し、ラグーンの状況を確認していく。

 各種のパラメータゲージはMAX状態で完品。プラグスーツとのデータリンクも問題ない。


『想定より一分ほど遅れています。速やかに発信し、合流を目指すことを推奨します』

「了解」


 刷り込まれた知識に従いラグーンを操作すると、正面の外部へのゲートが開いた。


「サクヤ、ナビよろしく」

『お任せください』


 ラグーンが小さな駆動音と共にクオンを乗せて走り出した。

 惑星ラグナでの初ミッションが開始された。

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