調査任務(3)
『指定の技能インストールを完了。クオン、お疲れ様です』
クオンの頭からヘッドギアが外れ、シートがゆっくりと起き上がる。
「すぐにミッションに入るつもりだけど問題ある?」
『ミッションの開始に問題はありませんが、クオンに対しリクエストが届いています』
腕を伸ばし大きく伸びをしながら訪ねるとスクリーン上のサクヤが光る立方体を差し出した。
「リクエスト?」
『当施設に所属しているスレイブユニットからです。調査ミッションに護衛として同行を希望しているようです』
スクリーン上に、相手ユニットの情報が表示される。
どうやら同じヒューマノイドタイプのスレイブユニットのようだ。スレイブランクはクオンより五つも上だ。
「スレイブランクが上ってことは普通に考えて私より重要ユニットだよね。上位ユニットに護衛されるっておかしくない?」
上位ユニットの護衛に入るのであれば分かるのだが、逆に護衛される意味がわからない。
少なくともド底辺のクオンより、スレイブランクの高いユニット。
『スレイブユニットの欠損を防ぐための処置のようです』
「経験の浅いユニットが死なないようにかぁ。でも、同伴ユニットが一名増えただけで効果あるの?その程度のことで数値が減少するのならもっと早く解消してそうだけど」
『僅かでも目的に沿った改善がされるのであれば成果として評価されるべきです。各施設の運営は統括AIと上位のスレイブによる総合判断によって行われます。実施している以上、効果があると見ていいでしょう』
「なるほどね。どの程度の改善効果が出ているのかデータを取得できる?」
『該当情報の取得に必要な権限が不足しています』
定型文を受け取ったクオンは、やっぱりと思いつつシートに深くもたれ掛った。
「リクエストを断れる?」
『可能ですが、お勧めできません』
「理由は?」
『リクエストに対しどのような行動を取るのかも含めて評価されるためです。協力ができないユニットと評価されかねない行動は慎むべきです。特に今回は下級ユニットに配慮した施策であるため、断ればクオンにマイナス評価がつくのは間違いありません。相手ユニットに何らかの問題があればその限りではありませんが、データを確認する限り優秀なユニットです』
クオンに与えられたのは、承認する一択。
初任務から別ユニットとの共同作業とは中々に敷居が高い。
配慮しているからこその対応なのは理解しているが、実質的に選択肢が与えられないのは辛い。
「そ、なら、リクエストを承認」
『了、リクエストを承認します。クオンのミッション&装備の詳細情報を共有します』
内心を押し殺し、クオンはリクエストを承認する。
するとスクリーン情報が切り替わり、相手のスレイブユニットの装備の詳細とミッション情報が表示される。
「相手ユニットって、事前に私の情報を完全に把握してない?護衛どころか調査ミッションも請け負ってる」
示し合わせたように、こちらと同じ型式のバイク。両翼に武装コンテナを積み、背面に警戒の複合ドローンコンテナを設定。背面のコンテナの上にサンプル収集用のコンテナを増設している。防護服や携帯武器は、クオンの装備の上位互換と思われるモノで揃えられていた。
『恐らく事前に装備情報を取得していたのでしょう。アクセスレベルが高いユニットである証拠です』
「つまりそこまでアクセスレベルを高くできるほどSPを稼いでいると。本当に優秀なユニットみたいね。装備も私より遥かに良さそう」
『使用できる装備は、スレイブランクや消化したミッションに合わせて解放されます。順調にミッションを消化すればクオンも使用可能となります』
「地道に頑張るしかないか」
目に見える格差を知り、クオンは小さく肩を落とす。
『クオン。相手ユニットから更にリクエストが届いています』
「内容は?」
リクエスト内容は、ここまでの情報ですぐに察しがついた。
というかこれでリクエストが無かったら相手の正気を疑うレベルだ。
『採取用ドローンのシュアを求めています。使用料として調査ミッションで得られたSPの30%を保証。前提条件として、クオンのサンプル収集を優先』
リクエスト内容は予想した通りだった。
「リクエスト承認」
『了、リクエストを承認します。対象ユニットの調査ミッション完了時に、報酬SPの30%を受け取る権利をクオンに付与します。受け取りと同時に権利は消滅します』
クオンにとっては既定路線なので、あっさりとリクエストを承認する。
流れるようにサクヤの音声が響き手続きが進められていく。
『承認と同時に相手ユニットはミッション待機へ移行。クオンのミッション開始と同時に活動状態に入ります』
「サクヤ、念のため確認だけど装備に抜けはない?」
『調査ミッションに必要と思われる装備は揃っています。いつでも受領可能です』
スクリーンにマップが表示され、装備の受領地点が表示される。
『合流は装備受領後、A地区の4番ゲート。ミッション開始から二十分後を想定』
切り替わるマップ表示を見て、頭の中にある基地構造とリンクさせていく。
「了解、ミッション開始」
『了、ミッション開始します。スレイブユニットの調査活動を許可します。ポッド解放』
ミッション開始を告げるサクヤの言葉に合わせ、居住ポッドがゆっくりと開いていく。
未開惑星ラグナでのクオンのはじめてのミッションが今開始された。




