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近接戦闘訓練(5)

「テイク、再構築を開始」


 コールに遅れて再構成が開始される。

 寸分違わず元の健全な肉体によって復活したクオンは、即座に距離を取り柱の陰に隠れた。

 その場所に、配置されているのは攻撃性の低い武器であるスモークグレネード。

 迷わず手に取り周囲にそれを投擲する。

 弾頭から白煙が一気に広がり、たちまち視界を遮りはじめる。


 柱に張り付きながら煙が十分に充満するのを見届けたクオンは、瓦礫を遠くの壁に向かって投げつけた。そして、真逆の方向に走り出す。

 殆ど視界が効かない中、記憶と僅かな視界を頼りに目標に向かう。

 足音が響いているがそれも計算の内だ。

 二秒から三秒経過するごとに、変則的な動きを入れて回避運動を入れる。


 先ほどまでクオンが存在していた場所を、弾丸が風切り音と共に通過していく。

 もはや分析するのも馬鹿らしいが、サクヤの射撃能力は常軌を逸している。

 姿を見せた瞬間にヘッドショットを決める異常なまでの正確性。同じ武器を使っているとは思えないほど的確に殺しにくる。こうして視界を遮っても僅かな情報から位置を特定し撃ってくる。

 質が悪いのが向こうも発砲に合わせてきっちり回避運動を取っているのだ。

 視界を遮っての銃撃。いやと言うほど試して通用しないことを悟った。かすり傷ひとつ付けられなかった時点で察したのだ。


 次に手に取ったのはダミーポイント。武器と言うより偽装トラップだ。

 設置個所に使用者の立体映像を出現させることができる。至近距離だと映像であることがすぐに分かるが、少し離れると見分けが困難になる。視界不良のこの空間内であればサクヤ相手であっても十分に効果を発揮してくれるはずだ。

 手に入れた三つの内のひとつを設置し、その場を離れる。


 ダミーポイントが起動するとその場にレーザーガンを構えたクオンの姿が投影される。

 投影された虚像の足元に伏せ、フロア中央に顔を向ける。

 クオンの動きに合わせるようにダミーポイントのタイマーが発動し、中央に向けてレーザーガンを光らせる。


 光を纏った弾丸がクオンの虚像を撃ち抜く。弾丸は虚像が構えたレーザーガンの中央を正確に捉え、貫いていく。もし実態だったら銃ごと腕を破壊されていただろう


 軌道からサクヤの位置を割り出したクオンは、サクヤが存在しているはずの空間を中心に弧を描き移動する。

 サクヤの現在の武装は、コンバットナイフとリニアガン。リニアガンは連射が効かない代わりに貫通力が高い、数センチ程度の装甲なら容易く貫通する代物だ。デフォルト装備のクオンと比較すると上等な装備をしていると言える。

 この狭いドーム空間でリニアガンの銃弾を防げる場所は多くない。

 それを把握しているサクヤは、空間情報と足音から正確にクオンの位置を特定し銃撃を行ってくる。


 発射された超音速の弾丸が足を掠める。

 撃たれたと言う事実を自覚しながら、全てを押し殺しクオンは走り続けた。そして、目標地点に到達した。

 到達したのは施設を管理するためのコンソールパネル。これまでは何の意味も持たないただの障害物だったが今は違う。

 素早くパネルを操作し換気を開始する。フロアに空調の稼働音が響きはじめ、上から下に空気の流れを作り出す。

 操作の完了と同時に即座に距離を取りその場から遠ざかる。

 滞留していた白い煙が流れはじめ上方から少しずつ薄くなっていく。


 空気が、かき乱され煙が大きく流動する。

 刺突。突如、白煙の中からサクヤが現れ、空間を引き裂く。

 視界の端でそれを捉えたクオンは冷や汗を流しつつ足を動かし続けた。

 既にクオンはその場を後にしていたが恐ろしいまでの察知能力だった。きっちりと煙に紛れるよう上体を低く保ち、遮蔽物の隙間を走り抜ける。


 遮蔽物に隠れつつ、ダミーポイントを柱に設置する。そして速やかに離れた。

 タイマーが起動し、再びクオンの姿が投影される。今度は中央に向かって銃を構えて走るクオンの虚像が足音付きで生み出される。

 空間を引き裂き、弾丸が虚像の足を貫く。

 さらに二発の弾が発射され、壁面に設置されたダミーポイントが破壊される。本物かもしれない虚像を排除した後、対象の位置を音から正確に位置を割り出し


 ふたつの囮を用いて辿り着いたのは、フロアの端にあるラグナが一望できるウィンドウの前。サクヤの首を取るためにクオンが辿り着きたかった場所。それがここだった。

 最後のダミーポイントを床に設置する。そして腰の煙に紛れ銃を構えた。

 

(これで地獄を終わらせる)


 繰り返される死から逃れるためサクヤを殺す。そう心に決め、クオンは来るべき瞬間を待った。

 徹底した使用武器の限定と弾薬の処理によって、サクヤの行動は非常に限定的だ。禁止されている殺害方法は、「斬殺」「射殺」「撲殺」のみっつ。

 限定された武装の中で、殺害ルールを守るためには殺害する場合は接近するほかない。

 クオンが未だに殺されていないのは、偏にそのおかげだった。

 致命傷を避けなければならない射撃に加え、振り方が限定されているコンバットナイフ。煙によって遮られた視界と言う特殊な状況も加わり、殺害を難しいものにしていた。


 死ぬ度に検証を繰り返し、準備をして来たクオンの努力は遂に実を結び。サクヤを穿つことに成功する。

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