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特殊個体(3)

『それではクオン。続けて本AI Type-398 CSZ123-41678への名称設定をお願いします』

「候補から選ぶのではなく自由につけていいの?」


 初めて正式にクオンと呼ばれたことに気分を良くしつつ、質問を飛ばす。


『肯定。クオンの完全なる自由意志で形式問わず設定が可能です』

「念のため聞くけど希望は?」

『支援の妨げになる名称は避けるべきでしょう。具体的には、発音できない名称や――――』

「それは必要条件であって、貴方の希望ではないでしょ。私が知りたいのは、貴方がどんな名称にして欲しいかってこと」


 必要事項を述べるType-398の言葉を遮る形で、クオンがスクリーンを睨めつける。


『自由設定が可能なのに私に希望を訪ねるのですか?』

「私の希望は聞いたじゃない」

『貴方は生体ユニットです。名称によるストレスなどを考慮し、当人の希望に沿う名称を付与するのは当然の処置です』

「AIだって、変な名称は嫌でしょう」

『本AIに感情にまつわる処理は組み込まれておりません。残念ながら感情を考慮した返答は不可能です』


 希望がないと言うのは、クオンにとって非常に都合が悪かった。

 何しろ名称設定などしたことないのだ。せめて方向性だけでも定めて貰えないと決められそうになかった。Type-398に方向性を決めて貰いたいが、この調子では不可能だろう。


「どうしよう……」

『提案。クオン、貴方が呼びやすく忘れない名称にしてはいかがでしょうか?』

「私がつける名だし忘れたりしない」


 自分の名称設定をしているはずなのに、まるで他人事のように対応するType-398に噛みつくように返答する。

 いい名称が思い浮かばないことに、クオンは頭を抱えた。


『クオン、質問をよろしいでしょうか?』

「なに?」

『本AIへの名称設定は、貴方が提案したと認識しております。名称候補が既に存在していたのではないですか?』

「まあ、そうね」


 Type-398の指摘にクオンは迷わず頷いた。


『候補があったのであれば、それを用いればよいのではないですか?』

「だって、かなり適当に思いついたヤツだし……。正式名称にするのは抵抗があるかな」

『参考までに、お聞きしてもよろしいでしょうか?』

「構わないけど……と言っても語呂合わせしただけよ。サクヤって」


 元々、勝手に呼ぶつもりだった名称をType-398に告げる。


『名称「サクヤ」と命名されたAIは、存在しません。それで良いのではないでしょうか?』

「えっ、でも型式そのままよ。確かに名前っぽいけど……」


 Type-398の意外な返答に驚きを返す。

 型式番号に強引に音を当て嵌めた雑な呼び名だ。とてもではないが正式名称として設定するのは気が引ける。


『任務遂行上の弊害にならないのであれば構いません』

「同じ型式のAIが他にたくさんいるのに、同じでいいの?」

『クオン、それは事実誤認です。本AIに「サクヤ」の名称が適用された場合、登録情報は「支援AI Type-398 CSZ123-41678 名称サクヤ」となります。型式とは、発音も表記も異なるのですから同じではありません』


 ご丁寧に目の前のスクリーンに登録した際の情報が表示される。


「まあ、確かに……」

『支援対象であるクオンが自然に発音でき、固有名称として十二分に機能を発揮できるのであれば理想的な名称である言えます』


 Type-398の肯定する言葉を聞いたことで、クオンは段々と「サクヤ」と言う名称は、悪くないのではと思うようになっていた。


「私がクオンで、Type-398がサクヤか……」


 発音もスムーズにできるし、自分との名前の相性も良さそうな響きである。

 Type-398が生体ユニットを得て、クオンと共に名乗りを上げたとしても全く違和感がなさそうだ。

変に悩んで妙な名称をつけるより、よっぽどいいのではないか?

 クオンは、そう思うようになってきた。


「Type-398、本当に名称は『サクヤ』でいいの?後で苦情は受け付けないけど」

『問題ありません』

「そっ、なら貴方の名称は『サクヤ』で決定」

『リクエストを確認。Type-398 CSZ123-41678の名称を「サクヤ」で申請します』


 クオンが決定を下すとType-398が手続きを開始する。


『クエストの承認完了。只今を持って、本AI Type-398 CSZ123-41678の固有名称が「サクヤ」に設定されました』

「おお~、おめでとう」


 無事に承認された旨が通知されるとクオンは祝福の言葉を贈った。


『ありがとうございます。貴方から送られた名称は、私のデータがロストするまで使用されます』

「そんな大げさな……。まあいいか、サクヤ、これからよろしく」

『クオン、こちらこそよろしくお願いします。』


 クオンとサクヤ。

スレイブとAIの奇妙な関係は、こうして始まった。


『それよりもクオン、貴方に忠告です』

「なに?」

『現在進行形で活動時間が減り続けています。速やかに規定の睡眠スケジュールを消化してください』

「……了解」


 名称が変わってもサクヤはサクヤだった。

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