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異世界日記4日目〜マップ解放、散策開始〜

〜異世界転移より4日目〜


「おはよう、朝」


俺は今日も灰色でジメジメとしたこの世界に挨拶をした。この世界はどうも天気がすこぶる悪いようだ。まだ雨は降っていないが俺が来てからずっと曇り空である。


(俺は綺麗に澄んだ青い空が好きなのに……)


まぁ、それは置いといて。


「よし」


俺は異世界転移してから4日目にして、初めて冒険者らしいことをしようとしている。体の調子はすこぶる良い。昨日まで苦しんでいた腹痛と下痢が嘘だったかのようだ。そして俺は意気込んだ。


「俺、冒険者になる」


まるでどこかの主人公にでもなったんじゃないかと思わせる純粋な目だ。


そんな俺の目はスマホを見つめていた。


「今日も長い1日が始まった。今日の予定はすでに決まっている。それは!昨日新しくてダウンロードされたマップをもとに探索をするんだ!ここ!白い四角!絶対なんかあるから!」


今日の俺はやけにテンションが高かった。恐らく緑石実の回復効果のおかげで体調も良くなり、マップも開放されて調子に乗っていたのだろう。


あとは、テンションを上げなければやっていけないと俺の何かが訴えでもしたのだろう。


そして、俺はそのテンションのままSNSをチェックする。



昨日の投稿にはコメントが一件あった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【異世界でもスマホは使えるんすね】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(使えるから発信してるんじゃー!だけどその通りー!)


(まったく)


俺からスマホを取り上げたら何も残らないじゃないか。でもどんなコメントでも嬉しいもんだな。コメントしてくれるってだけでこんなに喜べるのか。


(おお!!!!!!)


しかもフォロワーも増えてるじゃん!気づかなかった!


俺のアカウントのフォロワーはいつの間にか2人になっていた。


あれは嬉しさを噛み締める。たった2人のフォロワーであったが、俺にとっては唯一の心の支えだ。


いやーでも、実際に俺が発信する立場になってみて分かるが、インフルエンサーって本当にすごいんだな。尊敬するよ。


俺の投稿は視聴はつくがコメントやいいねはほとんどつかず、底辺活動者そのものだった。


俺はそれでもめげない。


(継続は力なり!)


今日も頑張って生きて!俺の生きた証!異世界日記を投稿するぞ!


「はい!まず冒険者といえば!装備!」


俺は純粋な目のまま装備を整え始める。


服装は3日も洗ってない俺のお気に入りズボンと長袖(防御力Lv1)


ツタや危険な魔草を掻き分ける少し長めの棒(メイン武器Lv1)を手に持ち。


お気持ち程度の小石(サブ武器Lv1)と緑石実(回復弱)をポケットに詰め。


最後にスマホ(俺の相棒兼スペシャル魔道具)を持ったら完成!


(テッテレー!)



(ってなんか冒険者っぽいこと考えてる?どう?少し成長した?どう?)


……。


俺の思考は俺だけのものなのに誰かに馬鹿にされた気がした。


全てにおいて低クオリティー!


この世界に来て3日日も経つのに未だ冒険者Lv1の雑魚感が抜けないていない。


「だけど!とりあえず前に進むしかない!」


俺はLv1の装備に身を包み、スマホを持ち、威勢よく探索を開始した。


◻︎◻︎


「ひぃ!きもい!」


「ひぁ!こわい!」


「いやぁ!やめて!」


……


思ってたのと違う。何かが違う。


普通もっとかっこよくモンスターと戦ったり、トラブルを回避したりするもんなんじゃないのか?


俺の冒険は全然かっこよくなかった。


森全体は薄暗く巨大樹やツタ•草が生い茂り、それらに負けじと光を発する魔草や肉食植物が生え散らかっていた。


それらに溶け込むようにして小型モンスターたちが往来しており俺の逃げ場はほぼなかった。それでも、俺はトラブルは避けようと危ない奴らから逃げ回っていたのだ。


マップを頼りに川沿いに進んでいたが、川と森は一体化しており木々達は所構わずに伸び、日の光を遮るように葉を広げていた。


その木々たちは、水の中だろうと岩だろうとモンスターのナワバリだろうと関係なく、我関せずといった様子で堂々とそびえたっていた。


何処もかしこも樹木とツタ・草が生え、川と地面との境が見にくくかなり危険であった。


俺は水の方に足を踏み入れないよう慎重に足を運びつつ危ない奴らから逃げ回り、慎重(?)に進んでいた。


ツタや草をかき分けるたびに口のある肉食植物に食われそうになる。鋭い歯がついており噛まれると普通に痛い。服はビリビリに破れ腕や足には噛まれた跡がくっきりとついており、所々血が流れている。


俺はフリスクでも食べるかのように緑石実を口にする。


(これを食っとけば大丈夫!)


緑石実はやはり回復効果があるようで、食べるとじわじわと痛みや傷は引いていった。


俺はマップを頼りにさらに奥に進む。


◻︎◻︎


「痛い!また噛まれた!」


右足に鋭い痛みを感じた。


その近くを見ると俺の腰の高さくらいの肉食植物がゆらゆらしているのが見える。


頭と思われる部分には大きく分厚い葉が二枚重なっており、その間にはびっちりと鋭い歯が生え揃っている。その風貌はかの凶暴なワニを彷彿させる。


その頭の下にはろくろっ首のようなように茎が地面から伸び、規則性のない動きでゆらゆらと動いている。その動きはまるで俺を煽っているようだった。


(私、噛んでませんみたいな動きしやがって)


はちみつのような甘い香りが周囲に漂っている。この酔わせるような甘い匂いで餌となる虫や小型モンスターを誘き寄せているのだろう。尻部分には大きな袋と尻尾のように黄色く可愛らしい花がちょこんとついている。


(その袋で捕まえた獲物を溶かして栄養分にでもするのか?)


幸いにも大きさ的に俺は食われてしまうことはなさそうだが……俺より大きな肉食植物が出てきたらその時は一貫の終わりだな。


噛まれた右足には歯型……というより釘で刺されたような傷が数箇所あり血が流れている。深くはなさそうであるがかなり痛い。


(そんなにびっちり歯があるくせに前歯で噛んだんか?出っ歯か?)


(こいつ、噛んだ申し訳なさとかないんだろうな。

とりあえず目の前にいたんで噛んどきました感が腹立つ)


俺は怒りが湧き上がったが、変に攻撃して報復を受けてもめんどくさいと思い、怒りをグッと堪え、刺激しないよう後退りした。


(こいつの名前はマエバ)


俺が名付けた。歯と葉っぱが特徴だから、前歯と葉を掛け合わせた前歯(葉)的な!


(どう?うまい?)


俺は俺の思考に問いかけた。返事はない。


(まあ、それはよしとして)


肉食の植物達をよくよく見ると、マエバと同じような特徴の奴らがちらほら観察できる。マエバは色々な種類がいるようだ。少し形態は違うようで、顔の部分の作りや花の形は違うようだが、大きな袋がくっついている作りは共通しているようだ。恐らく胃のような役割をしている器官なのだろう。


(あ、やべ血止まんない)


俺はマエバに気を取られ噛まれたことを忘れていた。噛まれたことを思い出すとと傷口も痛いことを思い出したようで、足に痛みが広がってきた。


俺はすぐに緑石実を口に入れ、果汁を飲み込んだ。


(ふう、これでよしよしと)


(……ってよし、じゃない!)


だめだ真白。数も限りあるんだから慎重に食べないと。これくらいの傷だったら止血してもう少し様子見ろよ!貧弱者が!


俺は情けない自分にダメ出しをする。


その横で俺を憐れむかのように小型モンスターたちがこちらをじっと見つめているのが見えた。


(また変なのいるし)


(ってかやっぱり肉食植物とかキモモンスターたち増えてね?魔草もなんか見たことないやつばっかだし)


初日こんな感じだっけ?俺が無我夢中で覚えてなかっただけ?さすがに噛まれたりしたら覚えてるだろうに……。


(何かおかしいんだよなぁ)


(まぁ、考えても無駄か)



今の所大型のモンスターには出会っていない。

しかし、大型モンスターと遭遇なんてもってのほかだ。なんせ小型モンスターだろうが小さめの肉食植物だろうがこの森にいる奴らは揃って全部危険だからな。


俺は敵の大きさや力は問わず、何にも立ち向かうことなくひたすらに逃げ惑い進んでいった。


◻︎◻︎


さらに数十分歩いただろうか。気味の悪い奴らは総じて見ないようにしていたが、流石に俺の目の前を横切ったこいつはキモすぎて目に止まってしまった。


「うわ!何これ!きしょ!目ん玉動いてるんだけど」


モンスターか何かなのか目玉だけが地面を這いつくばっているのが見えた。目玉の後ろは紐のような筋組織がずっと続いているようでその続く先は見えなかった。


こういうのってさ、だいたいこの目ん玉の先に大ボスがいるんでしょ?こういうのは好奇心でたどらないほうが良いんだよ!


「ひえええ」


俺は一目散に逃げた。


◻︎◻︎


◻︎出発から数時間後◻︎


その後は小型モンスターや肉食植物の数の割には俺はほぼ無傷で済んでいた。緑石実のおかげも大きいが少しでも危ないと感じたら走って逃げるを繰り返していたのが功を奏したと思われる。


(冒険者としてはどうかと思うが……。なんだか少しずつ逃げ足が早くなっている気がする。気のせいか?)


服や全身はボロボロにはなったが、大きなモンスターとはかち合うことなく目的地周辺にたどり着いた。


「あの四角の場所はここら辺か?」


俺は周りを見渡す。マップでは、はっきりした自分の位置は表示されていない。しかし、森を進むたびにマップも移動していたため恐らくマップの中心が俺のいる場所だと推測した。


「ここら辺のはずなんだけど……」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

とてもとても嬉しいです。

もっと投稿頻度をあげられるように頑張ります。

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