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SNSで助けを求める

俺の頭は思考停止していた。すると急に俺の頭を起動しなおすかのような熱さが太もも付近に走った。


「あつっっっ」


その熱さを発している正体はすぐにポケットに入れてあったスマホであると分かった。


「スマホ!」


(なんだ?水没してショートでもしたのか?)


(一応防水って話だが……。さすがに壊れた?)


いや、もしかしたら位置情報が見れるかもしれない……。俺は小さな希望を抱きスマホを開いてみる。


◻︎◻︎


「やっぱりだめか」


水没してしまったせいかスマホは上手く操作できず故障しているようであった。


一応画面を開くことはできたが、動きは遅くすぐにフリーズしてしまう。電波もたっていなさそうだ。


「くそ……なんか緊急SOSとか使えないのかな?」


どうにか連絡ができる手段はないか、俺は必死にスマホを操作した。


色々試しているうちにかなりゆっくりであるがなんとかスマホは操作できるということが分かった。しかし、データはほとんど飛んでしまっているようだった。


残ったアプリを一つずつ開いてもエラー表示となってしまう。


俺は半ば諦めつつも一つ一つアプリを開いてみた。


◻︎◻︎


(まさか)


「ひ、開いた……」


唯一開くことができたアプリがあった。それは俺がいつも暇つぶしに使っているショート動画を見ることができるSNSのアプリであった。


開けたはいいものの、そこにはいつも表示されるおすすめの動画もいいねした動画もすべて消えていた。


「開けただけか……」


俺はがっくりと肩を落とした。


「いや、待てよ」


俺は見る専門で動画を投稿したことはない。でも、このボタンって……。


いつもは使わないボタンを押してみる。使えそうだ。このままいけば投稿ができそうである。


俺は唯一の希望をその投稿にかけSOSを発信することにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【助けてください。誰かこの動画を見れる方はいますか?どうやら異世界に迷い込んでしまったようです】


【18歳男です。卒業式を終えて海を眺めていたら風に押されて海に落ちました。岸にあがってみたら異世界らしき場所に着いてたんです。このアプリだけは開けたんですけど、誰かこの投稿を見れている方はいますか?】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いけ!」


焦って打ったため文章が変な気もするがこの際仕方ない。俺は奇跡が起これと心の中で願いながら投稿ボタンを押した。送信に時間がかかっているようで画面中心はぐるぐると回っている。


(いけ、いけ)


俺は心の中で強く願った。



◻︎数分後◻︎


「い、いったー!」


時間はかかったがなんとか投稿できたようだ。しばらく様子をみてみよう。



(お願いだ。どうか誰かの目に止まってくれ)

俺は自分の投稿画面を一心に見つめた。


しかし、画面には何の変化も起きなかった。


(さすがに無理か……)



俺は絶望し、何も考えられなくなった。何かしなければとは思いつつ、現実を受け入れられずにぼーっと海を眺めていた。


「俺、これからどうなっちゃうんだろう」


俺の頭は完全に思考停止していた。



◻︎数十分後◻︎


どのくらいだったのだろうか。

俺は無意識にスマホに目線を落とし、アプリを起動させていた。


◻︎◻︎


「え……まさか」


画面が先ほどとは少し違うことに気づく。

先ほどまで0であった動画の視聴数が変化していた。


俺の投稿に視聴がついた。誰かがこの投稿を見ている。見ることができている。助けを呼べる。


俺は咄嗟に追加で文章を送った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【異世界に迷い込んでしまったみたいです。海に落ちて岸にたどり着いたら知らない場所にいたんです。信じられないかもしれませんが、光る植物や気味の悪い獣がいました。電波も届かず連絡手段もありません。唯一このアプリだけが起動したんです。どうすればいいかわからないです。誰か何か知っている方はいませんか?なんでもいいです。情報をください。】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しかしコメントはつかない。だが、確実に誰かが視聴しているようで数字は変化していた。見ている人は俺の元いた世界の人なのか?ただのバグなんじゃないか?この非現実的な世界におかれ、何もかもが信じられなくなってきた。


(お願いだ。誰でもいい。助けてくれ)


俺は誰でもいいからSOSに気づいてくれと目を閉じ祈った。


◻︎◻︎


しかし、誰からの返事もなかった。そりゃそうだ。誰かの創作やいたずらだと思われても仕方がない。俺もこんな状況じゃなかったらこんなバカげた投稿は無視している。


異世界と信じてもらえるように写真を載せようとするが、どの写真も白くぼやけてしまう。

投稿した動画にコメントはつかない。


「くそ」


(助けがくるまでここにいろって?死んでしまう。明らかにやばそうな雰囲気の森だ。入ったら変な獣か毒蛇にでも噛まれて死んでしまうかもしれない。せめてサバイバルの知識でも知れたら……)


しかし、やはり誰からの返事もなかった。


「はあ」


俺は深いため息をついた。


青く澄んだ空を見上げても飛行機は飛んでいない。深い青色の海が永遠に続く水平線を眺めても船一つない。


(ここにいて誰かに助けを求めているだけではだめだ)


俺は重い腰を上げ勇気を出して森に入る決意をした。獣が出てきたときのために近くにあった少し長めの木の棒を持って少しずつ森に近づく。


(まるで冒険者Lv1って感じだな。情けない)


先ほどからこちらを見ていた気味の悪いうさぎは俺が動き出すとものすごいスピードで逃げて行った。完全にあいつの存在を忘れていた。いや、考えないようにしていたの方が正しいか。


「なんだったんだあいつは……」


◻︎◻︎◻︎◻︎


「やっぱり怖い!」


俺は完全にビビッていた。森の中は見る限り大きな獣はいなさそうであるが変な虫がごそごそと這いずり回っているのが見える。絶対にやばいやつだ。猛毒持ちかもしれない。


俺は一旦森に入るのは諦めた。


(ああ、俺は本当に度胸も何もない)


俺は昔からそうだった。自分1人じゃ何もできない、いつも誰かに頼って生きてきた。今だってそうだ。たかが森に入って様子を見るだけだろう。そんなのもできないだなんて、本当に情けない。


◻︎◻︎


俺は情けない自分に嫌気がさし、俯きながらトボトボと海岸に戻って森を背に腰を下ろす。


他力本願な自分に嫌気がさしたが俺の頼みの綱は投稿のコメントのみであった。


「誰かコメントしてくれてないかな……」


そんな淡い希望を持ちもう一度アプリを開いてみた。するとコメントがあるとメッセージがきているのが見えた。


「え、まじ?」


俺は胸が熱くなり、泣きそうになった。


「これで助かるかもしれない」


俺は震える手でコメントを開いた。


コメントは2件きているようだった。

まず1件目。俺はドキドキしながらコメント欄を開く。


「どれどれ……えーっと」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【18歳男です。卒業式の最中に男友達からほ〇れそうになってからの続きが見れません。大丈夫でしたか?】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


◻︎◻︎


「え、えっと……ん?」


見間違えじゃないよな?


俺はもう一度しっかりと読み込んだ。



「うん。読み間違いではなさそうだ」


きっと、携帯の故障でバグって文字化けでもしちゃったんだよね。それで俺は元の世界では男友達にほ〇れそうになった奴になってしまったのか……。


◻︎◻︎


◻︎◻︎


「ってんなわけあるかあああ!!!!」


まったく。ふざけたコメントだ。


俺は期待していた分裏切られた気持ちになり、ひどく落胆した。


(まあ、現実はこんなもんだよな……。)


でも、どんなコメントでも今は嬉しいと思ってしまう。だってこの画面の先に誰かがいるってことだろ?


何も来ない、誰も俺に気づいてくれない、そう思ってたから。この投稿がどこかに繋がっているというだけで大きな収穫だ。


「もう1件コメントがあるが、あまり期待はしないようにしよう」


俺は、期待はせずにもう1つのコメントを読んだ。


「えーっと」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【近くの村でも行って職業を探してゴールドを稼げ】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「え?」


俺の目は輝いた。


(おおお!アドバイスっぽいアドバイスだ!)


俺は感動した。こんなわけもわからない投稿にしっかりとコメントしてくれる人がいるだなんて。涙が出そうになった。このコメントの主がどの世界の住人かも分からないが俺にとっては救世主に違いない。


俺はそのコメント主に心から感謝しアドバイスをもとにとりあえず村を探してみることにした。


(やばい。急にやる気になってきた)


俺は単純な男だった。お先真っ暗な中に見えた一筋の希望の光。今までの不安が消し飛んでしまったようだ。


「よし!さっそく村を探すぞ!」


◻︎◻︎


俺は自信満々に森の前に仁王立ちになる。木の棒を持ち冒険者Lv1のような恰好で。


「いくぜええええ」


そんなかけ声と共に足を一歩前に踏み出す。しかしその威勢とは裏腹に俺の一歩は小さかった。


やっぱり恐怖心に嘘はつけなかった。


(だってこの森、明らかにやばそうな雰囲気を醸し出してるんだもん)


背筋はゾクゾクし、恐怖心はぬぐえなかった。しかし視聴者のコメントに後押しされ、勇気を出して森へ一歩足を踏み入れる。


湿った土と草を踏みしめる感覚が足裏から伝わってくる。


気持ちの悪い感覚。やはり普通の森ではなさそうだ。

お読みいただきありがとうございます。

文章も拙く読みにくいこともあると思いますが、少しずつ成長できたらと思います。何かあればご指摘よろしくお願いします。


主人公の気持ちに近づこうと思い立ち実際にSNSを始めてみました(驚)視聴数やコメントってこんな感じに増えるのかぁと日々新しい刺激をもらえて楽しいです。

視聴者参加型でストーリーが進んでいくのって新しくて面白いなと思い小説に書き起こしてみました。

もし見つけたらいいね等していただけるととても嬉しいです。(>人<;)


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