3日間ひたすら木の実採取
~異世界転移5日目~
「おはよう、俺」
今日はとてつもなく良い目覚めだ。理由は分かっている。
「なんたって、俺は昨日、家・水・食料をゲットした最強男なのだから!」
「フフフ」
俺の昨日の激闘を皆に見てもらいたかったぜ……。ボロボロになっても果敢にモンスターに挑むかっこいい俺の姿を。
俺は一人で昨日の出来事を思い出し、ニタニタしていた。
「あ、そういやー、昨日そのこと投稿しておいたんだった!なんか反応来てるかなー」
SNSを開くとコメントが2件、いいねが1件きていた。
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【トカゲ竜の歯は武器になるぞ!歯は水晶と同じくらいに硬いからな】
【あ、本当に範囲魔法撃ってる……】
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コメントが2件も!?
俺の投稿はコメントやいいねが1つあるか無いかの底辺投稿である。そのため、コメント2つといいね1はかなりすごい事であった。
「なるほど!モンスターの一部を剝ぎ取って再利用するなんて良い考えだ!」
俺はそれに対して返信しようとしたがなぜか返信することができなかった。何か不具合か?まあ仕方ない。
しかし良い案をもらった。ありがたいな。
トカゲ竜の倒し方について俺がアドバイスをもらった相手は、俺がその通りに動いたことに驚いているようだった。
「ああ!俺の頼みの綱はコメントしかないからな!力のない俺は今は操り人形なのさ!それでも俺は良い!それで生き抜けるなら!ありがたくその運命を受け入れようじゃないか!」
俺は視聴者に心から感謝し、今日の1日を開始した。
「ここ最近体に負荷がかかりすぎているから、今日はゆっくり過ごそう」
そう考えていた俺は、とりあえず神殿の入り口の石の階段に腰を降ろし、ひたすらにトカゲ竜の歯をむしりとっていた。
昨日の爆発で入口一帯の草は燃えてしまったが、掃除の手間が省けたため逆に清掃料を支払わなければいけない立場である。
俺はぼーっと森と白い花畑を見ながらトカゲ竜の歯をむしりとっていた。トカゲと言っても普通のトカゲに比べればやや大きめであるため、少し大きな歯であればカッターナイフとして使えそうだ。
◻︎◻︎
「飽きた」
俺は飽き性であるため、同じ作業をひたすらに続けるのには向いていない。
トカゲ竜の歯を取る作業に飽きた俺は、昨日採取したきのみや果実を選別することにした。
◻︎◻︎
「うひょー!結構食べられそうなのあんじゃん!」
トカゲのようなゲテモノを食べてしまった俺は、もうなんでも食べられる気がしていた。
「これも行けそう」
俺はトゲトゲボールのような見た目をした黄色の果実の中身を取り出そうとした。
「いてええええ」
中の実に触れた瞬間、俺の指には激痛が走った。すぐに手を離すが、無惨にも俺の手はただれてしまった。
「くそ」
俺はすぐに緑石実を口にして傷を回復させた。緑石実も無限ではないため、ここで使われるのはかなり痛い。
「指の先っちょだけで確認しなければ」
俺はその反省を活かし、実に触れるときは指先だけを犠牲にすることにした。
しかし、その心がけは意味なかったようだった。選別を進めるにつれ、俺はどんどんボロボロになっていった。
毒に侵されたり、木の実が動きだして急に噛みつかれたり、果実の匂いを嗅いだだけでぶっ倒れたり、食べたら急に記憶を無くし踊っていたり……散々な目にあった。
俺は8割は食べるのは危険と判断した。
□□
「ふう、食べられそうなのはこれだけか?」
俺の目の前には選別に受かった木の実たちがちょこんと置かれている。あれだけ採取した木の実たちは選別審査に落ち、かなり数を減らしてしまったようだ。
俺はそれらを大切に抱え俺の寝床近くに置いて今日分の選別を終了した。
「結構時間かかっちゃな」
あたりはもう薄暗くなっていた。
「さて、腹ごしらえしますか」
俺は寝床に戻り腰をおろした。
「今日も頑張ったな」
俺は今日の俺を褒めておいた。そして、日課になりつつある今日の出来事を簡単に日記にして投稿した。
「ただでさえ過疎ってるんだから、毎日主張しておかないと忘れられてしまうからな!」
その投稿にはいいねが1ついた。
誰かが俺の人生を見守ってくれているようで安心した。
「よし、さっそく今日選別した果実でも食べるか!」
赤色で、おもちのようにぷにぷにとしている果実を口にした。その瞬間
――バタン
俺はそのまま意識を失い眠りに落ちた。どうやら食べられると思っていた果実ではなく、その果実とそっくりな見た目をしていた別の催眠作用のある果実だったようだ。
◻︎◻︎
~異世界転移6日目~
「今何時?」
一瞬学校に遅刻したのかと思った。
「あれ、俺何してたんだっけ?」
昨日の夜の記憶がなかった。あたりを見渡すと床には血だまりのようなものが……。
よく見ると自分の体も真っ赤に染まっていた。
「ひぃぃ!殺人事件!俺刺された?」
俺は急いで体中に傷がないか確認する。
「ああ、よかった。どこも刺されてない」
だんだんと昨日の夜の記憶が戻ってきた。
「昨日の最後は……赤い果実を食べた後に急激な眠気に襲われて……その後の記憶が飛んでいる」
赤い果実に催眠作用があったのか?食べられるはずだったんだが……。見た目が似た違う果実を食べてしまった?
それが眠った俺の手から転がり落ち、寝返りをした俺に押しつぶされ、果汁が飛び散って殺人現場になってしまった……それで辻褄が合う!
「見た目に騙されないようにしないとな」
「ってそれにしても汚れすぎだろ!」
俺はさすがに汚れすぎた服や体、床を綺麗にすることにした。
服と体は5日体も洗ってなかったしちょうどいいな。
◻︎◻︎
俺は神殿の中にある噴水の水で服を洗い、体の汚れも流すことにした。
「ん?なんだこれ」
ポケットから何かができてた。
「お守りだ」
それは祖母からもらったお守りだった。俺が形見として大切にしていたものだ。
「ポケットに入れたつもりはないんだけどな……」
俺は疑問に思ったが、祖母が俺を守るためにこのお守りをよこしたに違いないと確信した。海に溺れた時も、最初にこの森に入った時も、守ってくれてたんだな。
「ありがとう。ばあちゃん」
俺は天国のばあちゃんとお守りに感謝した。
◻︎◻︎
「さて、洗濯と風呂だ!」
俺は真っ赤に汚れた服をじゃぶじゃぶと洗い、干している間に自分の体も洗った。
5日分の汚れは凄まじかった。そんじゃそこらの汚れではない。汗や泥水など、ありとあらゆるものが凝縮した汚れである。
◻︎◻︎
「さっぱりしたー!」
やっぱり体が清潔になると心も晴れるな。
その後、俺は服が乾くまで昼寝をした。そして服が乾いた後は再び森で木の実や果実を採取し、選別に入った。
俺は昨日と同じようにボロボロになりながらなんとか選別をすすめていった。
◻︎◻︎
「今日もあっという間だったなぁ」
気づいたら6日目が終了しようとしていた。忘れないうちに今日の日記を早々に投稿しておく。特に木の実採取していた以外書くことはないが……。
「選別もなんだかんだ疲れるな……」
ここ2日は選別ばっかしていて森の探索とか冒険っぽいこと全然できてない。
回復効果はないが食べられる果実、きのみの選別がかなり進んできた。薬草に使えそうな草も取っておいてある。
そろそろ食料も良さそうか?
焦げたトカゲ竜も保存が効きそうだ。味は良くないが。
そろそろモンスターたちにも目を向けないとだな。
冒険者と言えばモンスター討伐だからな!
明日は、あとちょっと採取しておきたいのがあるから、それが終わったらモンスター観察でもするか?
俺はそんなことを考えながら眠りについた。
◻︎◻︎
~異世界転移7日目~
午前中はいつも通り木の実を採取して過ごした。
束の間の休憩、ふとスマホを見ていたら見覚えのないアプリがインストールされているのが分かった。
「なんだこれ」
俺はすぐにそのことをSNSに投稿しておいた。
するとそれに対してコメントが1件きた。
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【ステータスを確認したりするアプリだべ】
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……とのこと。なるほど。マップときたらステータスか?
そうだったら本当に嬉しい。ステータスがわかれば、かなり冒険をすすめやすくなるだろう。
なんせ俺は今、冒険者というより木の実採取人みたいになってるからな。
そのアプリのダウンロードは遅く、この日はダウンロードが完了することはなかった。
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