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『神田川のキツネ』

作者: 成城速記部

 神田川のほとりに、キツネが大勢集まっていました。

 十月二十八日は、速記記念日ですから、毎年、早稲田速記医療福祉専門学校を会場として、速記交流競技会が開催されますので、それに出場しようと思って集まったわけです。よい心がけです。

 同じ日の同じとき、同じ建物の別の部屋では、高速度速記競技会が開催されています。速記技能検定試験1級よりも速い速度で朗読されますので、生半可な気持ちで出場できるものではありません。しかし、優勝すると、速記日本一を一年間名乗ることができます。ということは、準優勝すると、速記日本二位、十位だと、速記日本十位を名乗れるということです。お得感があります。

 キツネたちは、どのくらい速い速度で朗読されるのか、聞きにいきましたが、とても書けそうにない速度です。朗読者もつらそうです。キツネたちが、諦めて、速記交流競技会に戻ろうとすると、一匹のキツネが、言いました。

 速そうに聞こえても、もしかしたら書けるかもしれない。僕は高速度速記競技会に出場するよ。見れば、十二人しか出場していない。僕は、堂々と出場して、速記日本十三位を名乗るよ。

 負ける気満々の出場宣言でしたが、ほかのキツネたちはそれなりに感心しました。

 君は勇気があるね。ぜひ、後で、どんな感じだったか教えてくれたまえ。

 高速度速記競技会が始まりました。一匹だけ出場したキツネは、頑張りました。頑張って、書いたり抜けたりしました。五分間を書き終えて、一次審が始まりました。感染症拡大の影響で、ことしは自己採点とするという連絡がありましたが、意味はわかりません。

 高速度速記競技会は、分速三百五十字で五分間ですから、千七百五十字読まれます。一文字も反訳しなければ、ミス千七百五十です。でも、反訳したり、抜けたりを繰り返すと、採点がとんでもなく大変になるのです。

 一匹だけ出場したキツネは、一次審が終わらず、ほかのキツネのもとへは戻れませんでした。



教訓:出場した勇気を買います。

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