馬車旅とギルド
朝になり、馬車で移動すること数時間
ミソラは子供たちに囲まれてしまった
私?
子供に囲まれてるミソラに近づくことも出来ず、馬車の上に乗って外をぼーっと眺めながら魔法を使ってましたよ。
プカプカ。
街が見えてきたあたりで、それをミソラに伝えると、その言葉を聞いた子供が駄々を捏ね始めた
(あー。こうなると長いんだよね、知ってる。)
母親が宥めるも、やや不服そうな子供たちに、
しょうがない……と、腰をあげる
(こうゆう役はキャラじゃないけど、旅を円満にするためだ、気張れ私)
フワリと浮遊魔法で中に入ると、視線が集まる。
心の中で絶叫しながら、それでも子供たちの前に向かうと、
手の平の上のものを「ん」と差し出した
「何これ?」
「きれー!」
上の子には不評そうだが、下の子にはウケたようだ。
その手の上の物……コイン程の大きさの真っ黒な魔石を上の子に渡すと、呪文のように昔見た本の一説を唱える
「我、ここに絆をみいだせし者
絆、それはすなわち心の力
我、力の証に宝玉を得る
それすなわち出会いの証」
唱えながら魔力を魔石に送り込むと、意図した通り、ミソラの瞳と同じ色に魔石が変わる。
何をしたのかと言うと、結界魔法と治癒魔法をこの魔石に刻み込んだのである。
そうすれば、この魔石の持ち主の意志に応じて、魔法が発動するようになるのだ
上手くできたそれを確認した上で、子供に語りかける
「これは、ミソラがあなた達と出会えたからできたもの。
これを大事にしてれば、怪我もすぐ治るし、病気なんてかからないですむよ」
「本当?」
「ほんとー?」
「うん。ミソラの……ま、マスターである私が保証する」
〔ユウリ……〕
「それに、大事にしてたらまた会うことができるよ」
「本当に?」
「ほんとにー?」
「ミソラのマスターは信じられない?」
「んーん。……信じる」
「ひんひるー!」
「それじゃ、また今度のために、今はバイバイ。できるかな?」
「……できる」
「きるっ」
「よし、偉いぞ」
そこまでやり取りして、顔を上げると、母親と冒険者の視線がこちらを向いてることに気づくなぜだ。
何故そんなにじーっと見ているんだ、やめてくれ、穴があく……あっ、そうか、得体の知れないものを子供に渡したからそれで見つめてるのか
「あっ、……あにょ、これは、ですね、危険なものとかではなくて……」
「ありがとうございます、ユウリさん」
何を渡したのか説明するまもなく、お礼を言われた
なんだ、何に対してのお礼なんだ……??
「子供たちを宥めてくれてありがとう」
「あ……ぃぇ、……これくらいのことしか出来ないので……」
「これくらい??何言ってんだ、魔法付与の魔石なんて貴族様が持つようなものだぞ、それを軽々と作るとか……それこそひゃく「わーわーわーわー!!」なんだなんだ」
なんだなんだは私のセリフである。せっかく価値とか関係なく受け取って貰えそうだったのに余計な知識を与えないでほしい……
〔恐らく、価値関係無しに受け取って頂きたいのかと。〕
「はぁー?戦闘も魔法もそうだがあんた達色々規格外過ぎるんだよ、売ったら一生不自由なく暮らせるぞ?」
「そっ、そんな高価なものなんですか?」
ほれみろ、お母さんビビっちゃったじゃないか
「お、お返しします、私には支払える蓄えなんて……」
「あーあーあーあー!良いの、私には簡単に作れるし、家宝ができたぐらいの気持ちで貰ってしまえばいいの!」
「でも……」
思うように話が進まなくて思わず声をはりあげてしまった……
チラリと母親を見るが、とても困った顔をしている
でも、魔石は子供のために作ったものだ、そこに価格価値なんてものを付与しないで欲しい
暫く沈黙が続いたが、子供の喜びようを見たからか、はぁ、とため息をついて、ようやく貰ってくれることになった。
ため息つきたいのは私の方だ……冒険者め……後で覚えてろよ……
そんなこんなしてると、馬車が街に着いた。
親子と冒険者は、検門を受けるために、馬車をおりて、入街の待ち列へと並んだ。
(馬車ごと待つのは目立つから、降りてもらったけどこの馬車どうしよう)
しばし悩んだ後、ギルドに聞こうと思って収納魔法に収納する。
検問に並ぼうとすると、何故かまた多くの視線を集めていた。
やめてくれ……灰になる……私何もしてないよ……?
〔収納魔法が珍しいのでは?〕
「なるほどそういうことか!」
今度から目立たない場所で使おう。そうしよう。
早足で列に並んで、素知らぬふりをした
なんも無いですよーなんもしてないですよー
体が震えるが、知らないフリを通してたら、視線が少し減った。
ホッとしたのも束の間、検問の順番が回ってきた
検問は、プライバシー?の保護とかで、他の人には見えないように行われる。そのため、専用の部屋に通されるのだが……
「身分証明書を提示してください」
通された先で即そう言われた
身分証明書とはその名の通り悪いやつじゃないか身元を特定するために必要な証のことである。
普通なら、冒険者または商業者ギルドカード、住民票などだが……
「はい……」
私が、アーティファクト所有者の証を提示すると、一瞬検問員の顔が厳しいものになった
アーティファクト所有者は少なく、それが何処にあるかは、国にとって、街にとって重要な事だからだろう。
「アーティファクト……ふむ……そこの嬢ちゃんがそうなのか?証拠は」
「ミソラ、手袋片方外してあげて」
〔了〕
「これは……確かに人形の手だな、義手のようだが、自動人形っつう事は、全身こんな感じなのか」
ほうほう、と感心するようにミソラの手を眺めた検問員は、よし、と入街許可証を渡してきた
「もし街から出ることがあれば、その許可証と出る理由を提示すれば出れる。ひと月以内ならその許可証で再度入ることも可能だ。
ひと月過ぎて入りたい場合は、また許可証を発行するから、検問に並んでくれ。なにか質問は?」
「な、無いですありがとうございます」
心做しか早口になりながらお礼を言うと、検問を抜ける。
ようやく次の街に入ることが出来た。
街に入ったら次の目的地は決まってる。冒険者ギルドだ。
冒険者登録をミソラとのパーティに切り替えなければならない。
本当なら元々居た街で手続きをすればよかったのだが、急いでた為この街で登録をしようというわけだ。
ついでにオーク素材を買い取ってもらおう
ギルドに入ると、一瞬多くの視線がこちらを向くが、直ぐに興味なさげに視線が外れる。
私は、なるべく人が並んでいない受付を探して、順番に並んだ。
ミソラと2人並んでると、嫌な視線を感じる
無視をしていたが、視線の主の方が近寄ってきた。2人組だ。
「おいおいここはお嬢ちゃまの来るような場所じゃないぜ?魔物に食われたくなきゃ帰ってママの乳でも吸ってるんだな」
「体売るならもっとぼいんになってから来なきゃァな?ぎゃははははは」
うるさい余計なお世話セクハラの3コンボである
特にうるさいのはやめて欲しい。目立つじゃないか
……と思ったが、日常茶飯事なのか、視線はあまり集まってないようだった。これなら……
「身体強化」
魔法を自分にかけると、体感的に遅くなった時間の中で素早く2人組にアッパーを食らわす
。
そして何事も無かったかのように列に並び直した
遅くなった時間が元に戻った頃、2人組はアッパーで吹っ飛んでギルドの屋根の梁に引っかかった状態になった
「これでも22だばぁーか!」
コンプレックスなロリ体型のことに触れられて思わず捨て台詞まで吐いてしまった
当然、今度は視線が集まってしまう。
やば……と思いながら、なんでもないふうを装うのだった
2人組を梁から下ろそうとわらわらしだしたとき、ようやく受付の順番が回ってきた
「次の方ー……あら?先程絡まれた……大丈夫でしたか?」
「大丈夫です……あっえっと、パーティ登録をしたくて来たんですけど……」
「パーティ登録ですねかしこまりました。身分証明になるものはお持ちですか?あと、以前にギルド利用してらっしゃった方なら、ギルドカードの定時もお願い致します。」
「はい」
言われた通りにアーティファクト所有者証明書とギルドカードを出すと、驚かれた
「アーティファクト……すみませんお客様、奥のお部屋で手続きをさせていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「え、あ、はぃ……」
真剣そうな瞳に押されて、了承すると、そのままギルド受付を超えて奥へと誘導される。
着いた部屋は、貴族とかをもてなすためなんじゃないかと思うぐらいに装飾が豪華な部屋だった
(装飾がまぶしぃ……一体なんだってこんな部屋に……)
何とか椅子に座るも、眩しさに耐えかねて思わずミソラの袖を握ってしまうと、
ミソラが一際眩しい装飾との間に立ってくれた。
状況を察せるメイド……なんて素晴らしい!
ミソラの働きに感動してると、先程の受付の人が対面の席に座った
「単刀直入に言わせて頂きます
パーティは組めません」