博物館とユウリ
翌日、博物館の入口につくと、入場の際にバッチを見せる。
すると、すんなりと中へと通してもらえた
(警備が手厚くなったのは、予告状が見つかった日から。それなら、もしかしたらあの魔法で……)
なぜ予告してまで取ろうとしてたのかを探るべく、朝から頭をひねらせているのだが、魔法を使う前提でひとつの仮説ができたが、それ以外は想像力が足らないのか思い付けないでいた。
思いついた内容が当たっていることを信じて、予告されたアーティファクト達を見せてもらう
3つ目のアーティファクトを見た時に、仮説が正しいと確信した
(もしそうなら、既に盗られてるものが数点ある……これは責任者に相談しないといけない)
全てのアーティファクトを見せてもらったあと、警備員のまとめ役の人と、博物館の館長に集まってもらう
〔「時間をお取りして申し訳ございませんですが、自体は一刻を争います。
アーティファクトのうち、数点が既に盗まれています」〕
「馬鹿な、ちゃんと警備をしているし触れたものはいない!盗まれるところなんて見ていないぞ」
〔「お気持ちはわかりますが、事実です。鑑定魔法の結果からすると、恐らく予告の時間に、数点のアーティファクトが姿を消すでしょう。」〕
「その言い方だとまだ取られていないとも取れるが、どういうことなのかね?」
〔「盗賊は、複写魔法で盗むアーティファクトの偽物を作り出し、博物館内に予告状と共に残したのです
複写魔法というのは、その魔法の達人であれば、手で触れてれば100%精密に本物そっくりな偽物を生み出すことが出来ます。偽物の消し方は、そばにいなくてもできるため、予告の時間に合わせておそらく姿を消すはずです。」〕
「その言葉の通りなら、予告が来た時点でもう取られてるということでは無いじゃないか。わざわざ予告した理由はなんなんだ?」
まとめ役さんが疑問を投げてくれたのでそれをキャッチする
〔「ひとつはまだ取られてないと錯覚させるため。もうひとつは姿が消えたアーティファクトの混乱に乗じて、ほかの数点も盗る為でしょう。予告状の届いていないものも狙われている可能性があります。」〕
「警備を強固にしろ!どの展示物にも人を触れさせるな!」
私の仮説を聞いてすぐにまとめ役の人が動いてくれた。
あとは……
〔「既に盗まれている数点ですが、追跡魔法で痕跡を追うことが出来ます。」〕
「おお、それは本当ですか!」
王子に託されたアーティファクトが既に盗まれてると知って頭を抱えていた館長が、ようやく頭を上げてくれた
〔「ですが、1度に追えるのは3点ほどが限界です。それに、時間が過ぎてしまっているものほど見つけにくくなっています。
その為、時間は急を要するのですが……」〕
既に盗まれているアーティファクトは7点ほどあった。これではいくつかはそのまま取られてしまう
「なにか私達にできることがあるのなら言ってください!」
〔「そうですね……能力増強のアーティファクト等、ございますでしょうか?」〕
「確かあったはずです。ですが、マスターは獣人国で登録されておりますので、使用は……」
〔「大丈夫です。それをお貸ししていただけますでしょうか?」〕
館長は、しばし悩んだ後、「かならず返しに来てくださいね」と念を押して、博物館内のそのアーティファクトの元に私達を案内した
アーティファクトを受けとり、動作確認をすると、使えることが分かる。
ユウリは自身の出生を思い出し少し顔を顰めた後、
追跡魔法を発動した。
ーーーーーーーーーー
追跡魔法で追跡できたのは6つ。ひとつは追うことができない計算になってしまうが、他のものと一緒にあってくれと願うも、
6つとも様々バラバラな場所へと運ばれていることが追跡魔法でわかった。
とりあえず、1つが王子のいる町の方へと向かっていたので、念話で王子に事情を説明し、そのひとつを奪還してくれるように頼むと、
ほかの5つの場所も聞かれ、少なくともそのうち3つはすぐ対処出来るものがいるとの事だった。
なんでも、遠距離通話のアーティファクトが複数あるんだとか。念話魔法が廃れるわけだ。
とにかく、計4箇所のアーティファクトを王子に任して、私は残り残り一つと、追跡魔法外になってしまってた1つを追うことになった
方向的にはどちらも魔族の国に向かっているらしく、強化魔法でミソラを抱えると、翼を出し大急ぎで魔族の国へと海を越えて飛び立った。
複写魔法にはもう一つ性質があって、コピーした状態で本物を壊すと、コピーが本物に移り変わってしまうというものがある。だが、登録のような外部からのアクセスはコピーされないため、本物で登録されてたものが登録無しのものになってしまうのだ。おそらく盗賊団の狙いはそれだろう。
なので一刻も早く本物を壊すか、本物を奪還する必要がある。
(……だけど、国で管理されているものだから壊すのは最終手段にしないといけない。万が一、コピー魔法を解いてある物を壊してしまったらそれこそ、王宮にお呼ばれからの責任問題になってしまう)
背筋がゾワッとするのを感じながら飛んでいると、半日たった頃に陸が見えてきた。
(盗賊がわざわざ警備の厳しい王都を経由するとは思えない
おそらく私たちと同じように海を通って陸地へ持ち込んでいるのだろう。
海の旅は魔物との遭遇の危険性が高い為、目的地まで一気に進んでしまうと聞いた。時期的に数日前には確実に運ばれてるはずだ。
コピー魔法で本物を壊し本物とコピーを入れ替える為には、一般の宿ではやりにくいはずだ。隠れ家的な場所が必要だろう)
様々な憶測を浮かべて盗賊が今何をしているのかを探る。
これは、対峙した時に大切になってくるはずだ。
(コピー魔法を解いて、本物を壊さない手段を使うのが実は1番恐ろしい。
国で管理してるもの=対象の国を収める立場である国王や王子、姫は使うことが出来るということだ。それは、アーティファクトの発動者が別人でもマスター登録に反応して作動してしまう場合もある。
つまり、今追ってるアーティファクト、姿を消すアーティファクトともうひとつが魔人国でマスター登録されてる物だとしたら、
勝手に魔人国の王族に使って、王族の姿を消すことが出来てしまうということだ。それだけは避けねばならない)
幸い、魔人国は縦に土地が長く、私のスピードなら、一番下の所にある魔人国の王都まで行くよりも先に追いつけるだろう
(どうか、最悪の事態だけは免れますように……)
私はミソラを抱える腕により力が入るのを感じながら、魔人国の空を全力で飛んだ
何気に重要回です