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頼みと狙い

〔「見学……ですか?」〕

「そう。……と言っても、ただの見学じゃないけれど」

王子の一言に身構えていると、それを笑うように王子が言葉を続ける。


「ただの見学じゃないってことは、その何かが頼み事ってことですね?」

「ご明察。頼みというのはほかでもない、その博物館に関することなんだ」

〔「博物館に関する頼みって……もしや、警備……?」〕

「いや、警備は別でちゃんといる。頼みというのは、この件だ」

スっと1枚のカードを差し出して見せてきた。


「なになに……貴方には勿体ない代物だ。このアーティファクトは奪わせてもらいます?」

〔「これって……」〕

「イタズラだとは思うんだけど、博物館の1部のアーティファクトに、盗むって予告が来ててね。

カードが警備にバレないように置かれた事もあるし、本当だったら国の一大事だ。というわけで、これの真偽、はたまた対処をして欲しいんだ。」

にっこりと笑って簡単そうに言うが、そう簡単な物じゃないことを私はわかっている。


思わずジト目で王子に抗議すると、「大丈夫」と王子は言った

「王子が強い冒険者を雇ったって事実さえあればいいんだ。

幸い、アーティファクトは全て各国でマスター登録されてるものばかりだから、奪ったところで使えやしない。

マスター以外が使おうとすると拒絶反応が出て吹き飛ばされる仕組みになってるんだよ。

だから、いてくれるだけでいいんだ。楽だろう?」

〔「……そういうことなら……」〕

アーティファクトを見てみたいし、見学できるなら見学したい。面倒事に巻き込まれたことよりも、好奇心の方が勝ってしまった


「ありがとう、では早速、博物館のある街まで向かってもらいたいのだけれど……」

〔「今すぐにですか?」〕

「本当なら警備に任せるつもりだったから、もう期限まで時間が無いんだ。」

期限?と思って律儀に書かれてた予告の日にちを確認すると、もう3日しか猶予がなかった


〔「3日って、私でもギリギリ間に合うかどうかの時間じゃないですか!」〕

「ああ、でもミソラなら間に合うだろう?」

〔「まさか、観察したいって言ったのってその為……?」〕

「そうだよ。アーティファクトの力なら可能にできることも多い。警備を回したことで王子としての体裁は取れていたけれど、いまいち心許なくてね。その点、ミソラならきっと期待通りの仕事をしてくれるだろう」

(私のミソラを勝手に戦力に数えてたっていうの……?)

そうなればいいな程度で王子は言ったことだろうが、あまりにマスターである私を蔑ろにしてないかと、少しイラついてしまう


〔「そうですね〈ミソラなら〉きっと大丈夫でしょうね」〕

少しトゲのある返しになってしまったのは許して欲しい

イライラをぶつけるわけにもいかない相手なのだから本当に困る


「それじゃあ、早速、博物館のある、王都の隣街まで向かってもらってもいいかな?」

〔「どうせ通る道ですし良いですよ」〕

こうなったらミソラだけじゃない私の実力で間に合うように着いてみせる

変な意地の張り合いが始まってしまった

私は、護衛の証明となるらしいバッチを受け取って、そのままミソラと一緒に、アンナと王子に早々にお別れを言い、屋敷を後にした



準備?前に準備したものが残っているので大丈夫だろう。

今から私は急いで1週間はかかる距離を3日以内に走り抜ける必要があるのだ

遠慮なんてしてられない


「ミソラは全力で走り抜けて。私は空から向かう」

ミソラにそう言うと、「幻影魔法(イリュージョン)」を使い自身にかかってる幻影魔法を()いた


途端に、白い翼が私の背中に現れる


〔ユウリ……?その翼は……〕

「鳥獣人の羽だよ。獣人と魔族のハーフなんだ、私」


心做しか明るい色になった気がする髪をミソラのように後ろで一纏めにすると、バサリと空を飛ぶ

普段、浮遊魔法で浮いてるのは、落ち着かないからと、羽で飛んでる時の誤魔化し用だ。

でも、今回全力で飛ぶとなると幻影魔法(イリュージョン)で隠せる限界がある。

だからあえて、翼を晒すことにした


(本当は人間の国に居る時点では目立つから隠してたんだけど……急ぎの用事だから仕方ないよね)

久々に翼が風を掴む感覚を味わいながら、ミソラに「行くよ」と合図する


そしてふたりは、街道を走り(飛び)抜けていったのだった。


後に、その街道で天使が空を高速で過ぎったという噂が経つのだが、私はまだ知らない。



道中、魔物も現れたが、全てミソラが瞬殺してくれた。

本当なら素材を集めたいし、放置すると魔物が近寄ってくるので拾っておきたかったが、拾う時間ももったいないので高熱魔法で燃やし尽くしてあとかたもなく消滅させる。


恐らく、オークを十数体、ゴブリンを30体程仕留めたところで、目的の街へとたどり着いた。

日にちはまだ一日の余裕がある。楽勝だ


……それはともかく、ずっと飛び続けていて疲れていたので宿をとることにする。

残りの一日で十分に体を休めることが出来るだろう。


「で、どこで宿をとるかだけど……」

門番の人に(ミソラ伝いで)聞いたところ、「栗の実」という宿屋がオススメだと言われたので、探すために大通りから外れた脇道に入る。

……あ、因みに羽はまた幻影魔法(イリュージョン)で隠してある。

王都が近くなって、ほかの種族も珍しくなくなっているが、やはり余計に目立つようなことは避けたいので隠したまんまだ。


裏路地を行くと1分ほどで「栗の実」へと着いた


「いらっしゃいませー!」

中へはいると受付から幼い元気な声がする

まだ10歳ぐらいの子が、受付をしていた

「お姉さんたち、食事?宿泊?」

〔「2名宿泊で。出来れば3日間部屋を借りたいんだけど」〕

受付に書いてある料金表を見て、お金を置くと、

「かしこまりましたー!お部屋は、2階の1番手前だよ」

元気な声と共に、鍵をポンと渡される。


あぁ、明るい。浄化されそう。やめてくれ……

キラキラした顔の子供はどうも苦手だ、私も昔こんな時が……あったのだろうか?


まあそれは置いといて。


部屋に入ると、ダブルベットと作業机とクローゼットのある、シンプルな部屋だった。

疲れていることもあって、そのまま当然のようにミソラを連れて共にベッドに横になる。


ミソラは寝る必要は無いだろうが、気分的な問題だ。

私が寝る時は寝るようにと言ったら、休憩(スリープ)モードという物で一緒に休んでくれる事になった。


(ミソラと添い寝……)

ふと考えて、なんだか恥ずかしくなってきた

誰かと添い寝なんて、お母さんが添い寝してくれてた時以来じゃないだろうか。

(ミソラは無性別ミソラは無性別……)


呪文のように唱えて、恥ずかしさがマシになった頃には、疲れも相まって、眠ってしまっていた。

何気に大暴露回。

ユウリ本人にそんなつもりはありませんが←

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