親友と戦利品
「無理無理無理無理絶対無理!!」
「でも好奇心を刺激してくるだろう?試しに1回だけでも……」
「絶対無理!断固拒否します!!」
パーツが、ミソラのものだとわかった王子から、実際に使っているところを見たいと言われ、断固拒否する持ち主の図である
ミソラが男性??そんなの発狂してしまう。
〔ユウリ……?〕
「そんな疑問そうな顔を向けられても……とにかく、ミソラはミソラだから私ともやっていけてるので、余計なものいりません!」
「そうか、それは残念だな……アンナもそう思うだろう?」
「私ですか?!……まあ、好奇心で言うなら見てみたい気もするけど……」
「そんな!アンナまでそんなこと言うなんて……」
どうしてだ、味方が居ない……
私コミュ障なの知ってるでしょうに!なんでそんなに好奇心が勝つんだ!許さんぞ好奇心め
「とまぁ、からかうのはここまでにして、どうだろう、ユウリ。俺たちは友達になれそうじゃないか?」
「どこがですか!」
「現に、こうやって普通に会話できているだろう?それだけの関係でいいんだよ。簡単だろう?」
「簡単って……」
そんな他人事のように言われてるうちは友だなんて名乗りたくない
イラッとしたが、相手は王子だ。イライラのままに話すわけにもいかないし、一旦深呼吸する。
「とにかく、男性型パーツは、そちらで管理してください。私には一生縁がないと思いますが、もし必要になる時が来たらその時でも眺めてください。一生縁がないと思いますが。」
大事なことなので2回言う
ミソラが男性になんてなったら話しかける事すら出来なくなっちゃうじゃないか。生活の危機だ。断固拒否する
女性型ならまだいいものを……いや、マシだという意味でだけど
「そんなに言うなら、例のパーツはこちらで預かっておくよ。その代わりと言ってはなんだけど、ミソラの事を調べさせてもらってもいいかな?」
「調べる……?」
「なんせ、自ら動いている自動人形を見るのは初めてだからね。いくらでも調べ甲斐がある。それに、俺のコレクションに入っている自動人形が、なんで動かないのか分かるかもしれない。
なんなら、冒険者ギルドを通して、依頼としてもいいよ」
「えっと……、王宮に行かなくていいのであれば……」
「そんなに王宮に行くのが嫌かい?僕に対しては今みたいに話してくれてればいいのだけれど……」
「絶対無理です行きません」
「そっか、それは残念。
まあ、ちょっと見せてもらうだけでも良いから、調べさせて貰えないかい?」
少し考えたあと、ミソラに確認をする。
ミソラは、特に嫌ということも無くうなづいた
「ミソラがいいなら、私は構わないですけど……」
「ありがとう。じゃあ、さっそく……」
「……え、今からですか??」
「旅をしているのだろう?次いつ会えるか分からないんだ、それに、また逃げられる可能性だってあるだろうし?」
からかうような口調で、前回逃げたことを上げられては、ぐうの音も出ない
「……分かりました。ミソラが嫌がることだけはしないでくださいね」
「大丈夫、その辺はちゃんとわきまえてるよ」
じっくり見たいからと別室に移動して行く王子とミソラを見送った後、
私は親友に詰め寄る
「アンナ……?私、旅に出た理由知ってるよね??なんで王子とこんなとこまで来てるの?」
「落ち着いてユウリ、抵抗したくても抵抗できないことってあるのよ……」
「なんでさー!アンナが来ると思わなくって私ビックリして透明化魔法解けちゃったじゃんか!王子に見つかっちゃったじゃんかぁあああ!」
「あら、なら、私居ない方が話せたのかしら?」
「うっ……それは……絶対ないけど……」
「あと多分、透明化魔法してても王子に見つかったと思うわよ?暗殺対策は万全に済ましてるって言ってたもの」
「ぐっ……それなら、アンナが居てくれた方が良かったのか……不服ながら……ありがとう」
「どういたしまして」
何となく小声でやりとりした後、そういえば、素材の売却があったなと思ってギルドマスターに声をかけよう……として、ハッとする
(ミソラがいないからギルドマスターに声掛けられない!)
気づいた瞬間少しあわあわしてしまったが、親友がいることを良いことに、通訳をお願いする事にした
「えっと、ギルドマスターさん?」
「あら、話し合いは終わりましたか?」
「ええ、それで、ユウリがダンジョンで手に入れた素材を売りたいと」
「分かりました、エリ!お仕事よ!!」
ギルドマスターが、机の上のベルを鳴らしながら呼ぶと、数分後に急いだ様子のエリさんが部屋に入ってきた
「なんでしょうかぁ〜ギルマス〜今ちょっとオークの解体で大変なのですけどぉ〜」
「追加の素材よ。ユウリさんが未踏破部分にいた魔物を解体して欲しいそうなの」
「はわぁ〜さらに増えるんですかぁ〜?しかも未踏破モンスターってことは、慣れてない解体ってことにぃ……」
「世話かけるわね。でもエリが頼りなのよ」
「もぉ〜そういえば私が喜ぶと思ってぇ〜。
分かりましたよォ〜ユウリさん、解体場まで一緒に行きましょ〜」
ちょっとふくれっ面になりながら、エリさんがちょいちょいと手招きをするので、それについて行くことにする。
アンナも強制的に連れて行く。いてもらわないと会話が成り立たないから仕方ない。うん。
解体場に着くと、オークの解体の最中だった。数が数なだけに、冷凍魔法で凍らせて腐らないようにしてから、数日かけて解体する予定だったそうだ。
私が自分から話さないのをわかっているからか、アンナへ聞かせているのか、ずっとエリさんが喋っててくれたので、変に会話をすること無く解体場に着いたわけだが、
解体場に着くと、「空いてるスペースに素材置いてくださったらいいですからねぇ〜」と言って、オークの解体に混ざって行った
「うっわぁすっごい量のオーク……もしかして、というかもしかしなくてもユウリが討伐したの?」
「なんでそんなに確信系なのか分からないけど、そうだよ。正確には、私とミソラとでだけど」
「そういえばミソラも戦えるのよね、そうは見えないけど……」
「実際私よりも強いよ、ミソラは」
「なるほど、それなら王子直々に調べてもらって正解かもね。」
「なんで?」
「そんなに戦力が高いのなら、隠しててもバレるだろうし、バレた場合に、全く知られてないのと、王子が調べてくれててある程度素性がわかってるのとじゃあだいぶ違うでしょう?」
「そっか、それもそうだね」
会話をしながら収納魔法を探って、戦利品の素材を取り出す。
私同様虫が苦手な親友は、素材の姿を見た瞬間「うぇっ……」と吐き気を催したようだ。気持ちは分かる。
素手で触るのが嫌で、机の上に落ちてくるように収納魔法を展開して、素材を置いていく。
最後に親玉と親玉の後ろにあった卵(といっても、泡の塊みたいなもの)を置くと、いつの間にか横にエリさんがいた。
「はわぁ〜卵ですかぁ〜。先に処理しないと。孵ってしまったら大変ですからねぇ〜」
よいしょ〜と間延びした掛け声とともに卵を担いだエリさんは、そのまま、部屋にあった大きなお湯の貼った鍋へと卵を沈めてしまった。
「あれ?卵は素材にはならない感じなのかしら?」
思わず思った疑問と同じことを親友が喋ってくれた
意外なところで以心伝心だ
「違いますよぅ、今、中身の魔物を殺してるところですぅ。多分泡の成分を固めれば、いい防具になりますよぉ〜
。
見たことない素材ではありますけれど、虫系魔物の卵はこうして処理することが多いんですよぅ〜」
「なるほどそういうことだったのね」
「あとはぁ、このカマキリの解体方法ですねぇ〜。どこがどう使えるかまだ未知数ですからぁ、全部の素材を分離しないといけませんねぇ〜」
忙しそうに解体に励むエリさんを暫し眺めた後、
特にすることもなかったので、アンナとギルドマスターの部屋へと帰ることにした。