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別れと出会い

「あんたの戦い方にはついていけない!ここでパーティから抜けてもらうからな!!」


そんな、心当たりがあるような無いような言葉でダンジョンの途中に置いてかれて早数十分。

元パーティメンバーは私を完全に見捨てたらしい


「何がいけなかったんだろ?」

リーダーがハーレム作り出して、無反応の私に話しかけてきてたから?

ダンジョンにハーレムは不要だから無反応で正解だよねこれは。

リーダーの部屋に夜に呼ばれていかなかったこと?

それは下心丸見えだから今考えても却下。


そういえば、戦い方うんぬんって言ってたっけ?

「物理ヒーラーそんなにダメかなぁ…?」

ヒーラーが真っ先に狙われる時代に、回復だけしてろって、考えが古いと思わない?ヒーラーは回復薬じゃなくて回復役なんです!人なんですよ!

あ、今上手いこと言った?


それに、近距離用に物理に降っておけば後は通常魔法も使えるから遠距離もできるし、自由自在だよ?ソロの時はこれでのし上がったんだよ?

魔力も高いからずっと浮遊魔法で浮きながらひょいひょい避け放題だし。移動も楽々。


…そんなだから親友に「パーティというものを組んでみろ」って指摘されたんだけど…


今回でパーティから外されるのは早5回目。

しかも、今回はダンジョン内で取り残されるという常識が裸足で逃げ出すようなお別れの仕方である。


魔物だって当然出てくる。私が普通の人だったら殺人罪だぞ。


「まあ、このレベルのダンジョンで死ぬことは無いけど。」


現に、今私の体に貼ってる結界をガジガジしてる獣は、全く攻撃を通せていない。

強化魔法で握力あげてエイヤと殴れば、そのまま破裂して、魔石を残して消えてゆく。魔石ウマウマ


はぁ…私はパーティに向いてないってことかな?

なんだか自信がなくなってしまった。

親友には悪いけど、私はそもそも独り言ばかりで集団行動が苦手なんだ。ソロが向いてる。

いい加減、親友もわかってくれるだろう。ソロ活動に戻りたい…


「っとなると、ギルドに戻ってソロ活動の再開の手続きをしないと。とりあえずは…このダンジョンを抜けることからかな。」


行動としては2つある

そのままダンジョンを進んでボスを倒して、地上へのワープ装置で外に出る手段が一つ。

ダンジョンを戻って、入口に帰る手段がもう1つ。

現在地からすると、後者の方が早いが…


「せっかくソロになったんだし、寄り道したいよねぇ〜ワクワク」

既に攻略済みのこのダンジョンは、Cランクパーティ以上なら誰でも入れる。故に、マップも最短距離しか記載されていないものが多く、パーティで行動してる以上、最短距離を進むしかなかった。

それは逆に言えば、ソロでは入れないダンジョンだということ。

だが今は違う。せっかく例外的にソロでこのダンジョン内にいるのだ、何か見つかるかもしれないとワクワクする気持ちが押えきれない


「よしっ!寄り道しながら奥に進もう!」

ボスも確かワンパンで通れたはずだし、脅威は無い。私は最短距離をはずれて、マップを埋めるように歩き出した




数分後、私は迷子になっていた

トラップの無いとされていたこのダンジョンで、魔法の反応のする隙間を見つけて興味本位に指を突っ込んだ結果、

どこだか分からない場所へ転移魔法で飛ばされてしまったのである。


「唐突な魔法に対処できなかったのが悔やまれるけど…まあ、それはおいといて、今はこの場所を探ってみようかな」


転移先は、通路と言うより部屋のような作りになっており、出入口がない。

完全な密室空間である。

そんなど真ん中に、とても大きい。例えるなら巨人の書斎の机のようなものが堂々と置かれており、いかにもこれが目当てだろ的なキラキラと光る宝石が机の上に散乱していた。

宝石はパッと見分からないが、鑑定魔法を使えばすぐに分かる。フェイクだった。


「宝石は全部フェイクだよね。リーダーなら飛びついただろうけど、宝石にそこまで興味はないんだよな」

いや、元リーダーか。なんて修正を入れながらも、そーっと机を調べていく。

引き出しが机部分に3つ、足部分に2つと3つ。合計8つある。

あまりにも大きいので浮遊魔法で浮きながら、試しにそれぞれを引き出してみるが、大きさの割には軽く開き、右下にあるひとつが開かないことを除いて、どれも空っぽだった。

「開かない引き出しか…こういう場合、大抵その上の引き出しに…」

あった、仕込み板。2段構造である。

板を外すと、ロックが解除され、あかなかった引き出しが開いた。


中には…


「人形…?」


メイド服を着た人形が、お山座りの状態で収納されていた。


「これは…」

即座に鑑定を使うと、詳細が表示される


ーーーーーー

名前︰自動人形(オートマタ)

性別︰表示を阻害されました

マスター︰登録無し

戦闘技能︰表示を阻害されました

詳細︰およそ1000年ほど眠りについている

ーーーーーー


「表示を阻害されました…?こんな表示初めて…」

自身より強い者へと鑑定をすると出てくることがあると聞いていたことがあるが、まさかこんなところでお目にかかるとは思わなかった。

もしこの人形と戦闘になった場合、私の方が不利だと鑑定結果は言っているのだ。

それに、自動人形(オートマタ)。これは世界の遺産の歴史に出てくるような貴重なアーティファクトである。私なんかが触れるべきでは無い。


「これは…このまま封印しておくべきだよね。過剰な戦力は良くないことを引き起こすものだもんね」


そっとしておこう。そう思って引き出しを戻そうとすると、

引き出しの手前側の板が外れた

大きさ的に身長と同じぐらいはある板に、押しつぶされる

そう思った時、

板の向こうから、それを遮る手が出てきた


〔ロックの解除を確認ーーー新たなマスターを登録致します〕


板を退けてその人形は起動を開始した

「…新しい…マスター?」

思わず反芻した言葉に、〔YES〕と反応が帰ってくる。

〔ロックの解除者を新たなマスターとするようにプログラミングされています。

あなたがロックの解除者で間違いないですね?〕

「ぁあ、…ええ、そうだけど…」

〔名前を伺います〕

「ユウリよ。ユウリ・アサファルト」

〔ユウリ・アサファルトーーーをマスターに登録

私への命名をーーーユウリ・アサファルト〕

「命名って…」

そんな急に言われても…そう思って初めて、人形の目と視線がかち合う。

顔がとても整っている。シュッとしたシルエットに切れ長の目。大きな瞳赤く鮮やかな唇。私なんかとは違う綺麗な銀髪のポニーテール。流石人形なだけはある。その中でも、とても綺麗な水のような空のような水色の瞳が、とても印象に残った


「ミソラ…水空なんてどうかな?まんまだけど」

〔ミソラーーー水空ーーーデータに上書き中ーーー完了致しました

私は今日からミソラです〕


自分で決めたものの、いきなり受け入れられると少し恥ずかしい気がする。

でも、あの瞳を見たら瞳の色を名前に入れたくなったのだ

〔マスター。ご命令を。〕

「マスター?…あ、今ので私がマスターに登録されたってこと?!」

ソロで行くのを決めた次の瞬間からソロじゃなくなってしまっている。私はどうしようか迷ってしまった

いや、迷うべきはそこじゃない。アーティファクトを連れて歩くなんてもってのほか。即座に王宮にお呼ばれコースだ。そんなの私に何とかできることじゃない!


「…まあ、仕方ないと言えば仕方ない、か…」

今はそれより何とかお呼ばれしないで済む方法…


〔マスター?〕

「あぁ、ごめんちょっと考え事してた。…ってミソラ、もしかしてずっとマスター呼びするつもりだったりする…?」

〔マスターが設定した呼び方に変更可能ですーーー変更致しますか?〕

「うん、ユウリって呼んで欲しいかな」

〔ユウリーーー呼び名を変更致しました。今後ユウリと呼ばせて頂きます〕

「うん。よし。」

…いや、全然よしじゃない

鑑定し直さなくても分かるけどマスターが私に書き変わってる。

ミソラを回収に来た人には絶対に私がマスターだとバレてしまう

なんで断言できるかって??

その回収班担当が、親友だからである。

昔から良く様々なアーティファクトの話を語り合う仲で、親友は子供の頃の夢の通り、アーティファクトに関わる仕事に就いたのだ。

見逃してくれるかどうかは…

「五分五分かな…?早かれ遅かれ報告するだろうから、王宮に行きたくないならこの街からは出ないといけないだろうけど…」

まるで逃亡者だ…

いや、アーティファクトはマスターになった者の所有物になるので追われるような身にはならないのだが。

では何故、王宮に呼ばれるのか、なぜそれが嫌なのか。


「王子がアーティファクトマニアなんだよなぁ…」


マスターの決まってないアーティファクトを買い占め、厳重に保管した博物館を建てたり、

マスターの決まってしまったアーティファクトを手に入れるためにマスター自身を引き抜いたり。

そして何よりも、自身も周りもアーティファクトで固めている。生粋のマニアだ


いや、防衛力を考えればこの趣味はありなのかもしれない。だがしかし、私は王宮に行くなんて大層な事出来ないだって…

礼儀作法なんて習ったことがない。ただの人見知りの激しい一般人だからである。

「…それが理由でソロのランクもAランク止まり。いや、パーティ組んでる間に下がったのかな?B…Cランク?S以上は王宮に行かないと、ランクが上がらないって誰得な設定なの…?」


いや、きっと王族にとって得なのだろう。強いものを傍に置けば安全だからである。でも私には関係ない。関わらないでほしい。


「仕方ない…なっちゃったもんは、仕方ない。」

自分によく言い聞かせる

そうじゃないと決心が鈍りそうだからだ


「よし、街を出よう」

〔YES。ユウリ。

ーーー最優先行動が選択されました〕


ーーーーーー

そんなこんなで、私の、私達の、長いような短いような不思議な旅が始まるのであった。

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