7話 圧倒的クマ
〈キャラクター紹介〉
セシール・ベルナール
猫系亜人で自称騎士。自称なので騎士の資格はおろか研修も受けていない。
実家は貴族。政略結婚(相手がデブ)が嫌で家を飛び出した家出娘。
強い奴が好みで、自身の性格はドM。強くて雑な扱いをしてくるダイスケにときめいてしまう。
~西の街道~
ガルシアの町に帰る為、街道沿いを歩く。
セシールは肩を組んで、離れてくれない。
改めてセシールを見る。黒髪のポニーテールで背は高めでスラッとしたボディライン。顔も美人だ。
しかし、それを上回る残念な性格をしている。
「ご主人様。帰ったらお風呂にします?ご飯にします?それとも…子孫繁栄ですか?キャー(照)」
「何が(照)だ!?普通、子孫繁栄って言わないだろ!」
セシールは無理矢理にでも俺と結婚しようと考えているらしく、猛烈アピールが止まらない。吊り橋効果って凄い。
やっぱり、縛られたままにしとくべきだったか?
「子孫繁栄じゃなかったら、何て言うんですか?教えて下さい」
セシールはジト目で口元はωになっている。コイツ、俺にエッチな事を言わせたいようだ。
「下僕の癖に調子に乗るな。その尻尾を引っこ抜くぞ」
実際にそんな事はしないが、脅しで尻尾を掴む。
「ふにゃぁぁぁぁ!?」
セシールが変な声を出す。
「え!?いや、ゴメン。痛かったか?」
セシールが顔を真っ赤にして涙目でコッチを睨み付ける。
「ご主人様のスケベ!ヘンタイ!いきなり女の子の尻尾を鷲掴みにするなんて!ヤる気満々じゃないですか!!」
状況が良く飲み込めない。尻尾って触ったら痴漢扱いなのか?
「え~と…なんか良くわからんが、すまんかった」
「謝るくらいなら、お嫁に貰って下さい(怒)」
「だから、何度も言ってるだろ!俺は金無しの宿無しだから…うん?」
「ご主人様?…っ!?この足音は、ワイルドベアー?」
岩影からクマ型のモンスターが現れた。
気持ち良く寝てた所を騒ぎ声で起こしてしまったらしく、機嫌が悪そうだ。
「コイツ、3mは有るぞ!頭はモヒカンっぽい毛並みで、腕には固そうな殻。セシール、コイツは何だ?」
「あ…嘘だ…そんな…」
「セシール!?」
セシールの様子がおかしい。顔が真っ青だ。
「ニンゲン!ペットと飼い主ごっこしてる場合ではない!逃げるぞ!!」
逃げると行っても、目的地は熊の向こう側。倒すか迂回するか…よし、倒そう。
「早くしろ!」
セシールに手を掴まれ、来た道を引き返した。
「セシール!?何処に行く気だ!邪魔な奴は倒せば良いだろ?」
「ニンゲン。お前、転生者か?なら覚えておけ。アイツは『獣王マッスルベアー』。昔、封印された凶悪モンスターだ。勝てる相手じゃない!」
神出鬼没のマッスルベアーには要注意と聞いていた。それがアイツだったようだ。
前方に「ドシンッ!」という音と共に、マッスルベアーが降ってきた。
「んなっ!?まさか、空を飛んで来たのか?」
「飛んできたと言うか、ジャンプで跳んで来たっぽい。大したジャンプ力だな~。セシール、下がってろ。どうも安眠を妨げた奴をぶっ殺さないと気が済まないらしい」
この距離なら範囲攻撃でも巻き込む心配は無いだろう。
「やれ!ハイパーナパーム!!」
ナパーム弾を落とす火属性魔法。今回も戦闘爆撃機が登場。しかし…
「ぐおぉぉぉぉ!」
熊の口からビームが発射され、爆撃機が撃墜される。爆撃機はそのまま消え去った。
「…は?セシール!今のは!」
「う、嘘だ…あれはドラゴンのブレス。それも、強い方の熱線ブレス…」
セシールの顔が絶望に染まる。
「…召喚魔法、やれるだけやってみるか。イメージ…ドクロの兵士達」
自分の周りに剣を持ったガイコツ達が現れる。数は10体。イメージが悪かったのか、ホ○ーマンみたいで頼りない。
「総員、突撃しろ!」
ガイコツ達が一斉に襲い掛かる。だが、どう見てもダメージが入ってるようには見えない。
熊野郎も強烈な右フックで応戦する。ガイコツ達は全員、ワンパンで消え去った。
「チッ!やっぱ火力が必要か。アパッチ!ハインドD!」
戦闘ヘリを2機、召喚する。
「何だアレは?空飛ぶ鉄の馬?」
「セシール、離れるぞ!」
セシールの手を引っ張り走り出す。
戦闘ヘリは対地ミサイルを連射。機銃掃射もお見舞いする。地上は爆風に襲われる。
砂煙が舞い上がり、マッスルベアーの姿が確認できない。
「やったか?」
「ガンッ!」と何かが当たった音がすると同時に、アパッチが墜落し消え去る。
「何!?」
砂煙の中から大岩を持ち上げたマッスルベアーが姿を表す。アレだけの攻撃を喰らって無傷だ。
マッスルベアーが大岩をぶん投げる。それがハインドにも直撃し、墜落した。
「クソッ!魔法で呼び出した戦闘ヘリが…」
「確かに勝てる相手じゃない。逃げた方が良さそうだな。テレポー…」
転移魔法の発動より先に、マッスルベアーが急接近し、顔面狙いの強烈な左ストレートが炸裂した。
間一髪避けたものの、カスってすらいないのに左頬が切れて出血した。
「クッ!?なんて速さだ!」
今、転移魔法を使うとコイツも付いて来てしまう。倒す事は不可能でも、気絶などで動きを止めなければ!
「速度3倍化魔法!炎の剣、氷の剣!」
3倍速で魔法の剣を使い、滅多斬りにする。
しかし、マッスルベアーもこの動きに付いてくる。腕の殻が硬くて斬れず、全ての攻撃を防がれる。
「これならどうだ!?超高速化!」
この魔法になると、マッスルベアーも止まって見える。これなら一方的にやれる!
右手に持っていた炎の剣を、横一文字に振る。
マッスルベアーの胴体を一刀両断にした。だが、斬った感触が無い。
「まさか…残像!?」
マッスルベアーが背後に回り込んでいた。
「バカな!?超高速化より速いだと!」
マッスルベアーに抱きしめられる。この技は…ヤバい!
「身体硬化!」
とっさに防御魔法を掛ける。
直後、体を持ち上げられ、頭から地面に叩き付けられた。バックドロップだ。
「ぐはっ!…防御魔法やってなかったら死んで…おいおいおい!?止せ!」
マッスルベアーに胸ぐらを掴まれ、更に地面に叩き付けられる。
「ゴホッ!」
強烈なダイナミック床ドンに耐え切れず、吐血した。
「セシール、逃げ…グフッ!」
尚もマッスルベアーのダイナミック床ドンは続く。
「居たぞ!あの熊だ!!」
薄れゆく意識の中で、知らない奴の声が聞こえた。いつの間にか超高速化の魔法も切れたらしく、周囲の時間は普通に進んでいた。
「奴は俺が手懐ける。ソフィは負傷者を頼む」
誰かがマッスルベアーを引き離す。
「ニンゲン!?しっかりしろ!」
「退いて!…重傷だけど、まだ息はある。大丈夫、直ぐに回復魔法を」
もう1人が俺に回復魔法を掛ける。女性の様だ。朦朧とする意識の中で、凄く大きなオッパイにコウモリの翼と謎の尻尾が見えた。何の亜人だろうか?
回復魔法の最中に、そのまま意識を失った。
残り時間 ?:??