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最終話 地獄の暮らしも悪くない

 地獄に落ちてから3ヶ月が過ぎた。

 それまでに色々有ったが、何だかんだで楽しく過ごしている。


~労働地獄 警備会社ヘルソック~

「では、巡回に行ってきます」

 社有車に乗り込み、エンジンを掛ける。

 ここは地獄だ。しかし地獄だというのを忘れてしまうほど、環境は日本に近い。


 労働地獄に落ちた俺に与えられたのは、警備の仕事だった。

 ゲドーみたいに脱走する奴が居るから、巡回して回る。


~モフモフ地獄~

 ここは犬や猫がいっぱいの地獄だ。猫カフェみたいなのを想像して貰えば良い。

 動物好きなら天国かもしれない。実際、危険度レベルは1。労働地獄と変わらない。

 だが、ここに放り込まれたのは動物嫌いだったり、アレルギー持ちだったりする。彼らにとっては、これ以上無いくらい地獄だろう。


「あら?坊や。ご苦労様」

 モフモフ地獄の管理人は、あのエルフのユーノだ。

 彼女は死んだ訳ではない。シュワルツ君にスカウトされて、ここに来た。

 なので俺は魂だが、彼女は生身の肉体が有る。…生身も魂も地獄ここではあんまり変わんないけど。


「センサー類の故障も無し。何か変わった事は?」

「昨日ここに来たドワーフが…」

「た、助けてくれ!俺、犬は苦手なんだ!ひーー!!こっち来んな!!」

 それらしきドワーフがチワワに追い掛けられていた。

「…異常無し!次」

「あ!待って!実は…」



~女地獄~

 名前だけ聞くと天国のように思える。

 だが、ピチピチギャルが居るとは言っていない。女=ピチピチギャルだと、いつから錯覚していた?


 センサーの点検をしていると悲鳴が聞こえた。

「た、助けてくれ!性欲バリバリな80の婆さんに追われてるんだ!た、助け…アーーー!」」

「…何も見なかった。次…と、その前に」


 ここには脱走の前科持ちも居る。今日はそいつに会う事が出来た。

「久しぶりだな、ゲドー。調子はどうだ?」

「…サキュバス怖い。何?あの底無しの体力?おい、あんた。頼む…助けてくれ…」

 死んだ魚みたいな目のゲドー。

 ゲドーも前世の記憶が残って地獄に来た『特異点』だったが、脱走の再発防止策として閻魔が記憶を消し去った。

 もう俺と激しい魔法戦や殴り合いを繰り広げたことは覚えていない。

 ぶっ殺そうと思うくらい大っ嫌いな奴だったが、今は何だか可哀想に思えてきてる。


 しかしサキュバスか…ご褒美のようにも聞こえるが、相当辛い目に合わされたのだろう。

「あら?お兄さん、初めて見る顔ね。私達と遊んで行かない?」

「て言うか襲わせろ!!」

「ヒャッハー!男狩りだー!」

 サキュバス達に見付かった。ヤバい!

 大急ぎで逃げる。ここは女地獄。危険度レベル5の超危険区域だ。

 車に飛び込み、アクセル全開で逃げた。



~労働地獄 警備会社ヘルソック~

「ただいま戻りました」

「ご苦労さ~ん。しっかしダイスケ君のルートは大変だろ?遠いし、レベル5の女地獄なんて」

「2か所だけで済むんで、楽で良いです」

 他の同僚達は1日に5か所回っている。それも数名のチームでだ。

 俺のルートは誰も行きたがらないので、単独で行っている。こっちの方が気楽で良い。


「只今戻りました。いや~、灼熱地獄は暑かった。今日なんて気温49度ですよ」

「俺なんて釜茹地獄で江戸っ子の爺さんに捕まって、一緒に温泉に入らされたぞ。43度の源泉掛け流しが熱いの何のって…」

 同僚達も次々と巡回から帰って来る。


「ダイスケの女地獄はどうだった?可愛い子居たか?」

「いや。太ったサキュバス3人組にジェットス〇リームアタックを喰らいそうになって、大慌てで逃げて来た」

「Oh…俺、女地獄は行きたくないや」

「そう言えば、新しく『男地獄』が出来るってよ。方角的には女地獄とは反対方向だから、ダイスケ以外で誰かが巡回する事になるぞ」

 全員、顔が青ざめる。

 男地獄か…流石に俺も行きたくないな。


 監視カメラ、ドローン異常無し。

 定時になった。夜勤のメンバーと交代する。

「そんじゃ、お疲れさ~ん」



~公営住宅~

「ただいま~」

「おかえりなさい。お風呂にします?ご飯にします?それとも…わ、わた、私…ひー!恥ずかしくて言えなません!」

 エプロン姿でお出迎えしてくれたローリーが可愛くて、ギュっと抱き締めた。


 ローリーとは先月、結婚した。

 結婚しない主義のローリーだったが、俺の全力プロポーズで考えが変わったらしい。


「汗かいたからお風呂からにする。その後で晩御飯と、デザートにローリーだ」

 服を脱ぎつつ、こんな事を言ってみる。

「ダ、ダイスケさん!言ってて恥ずかしくないんですか!?聞いてるこっちが恥ずかしいです」

「恥ずかしがったら負けだ。」

「…カッコよく言ってるつもりなんでしょうけど、パンツ一丁だと台無しです」


 ローリーが何で地獄に居るのか?

 聞きたい気持ちもあるが、言いたくないかもと思って聞いていない。

 ローリーも、俺がまた地獄に来た理由を聞かない。もしかしたら気付いてるのかもしれないが…


 ローリーに前世の記憶が有った事にも驚いた。

 特異点なのかと思ったが、どうやら閻魔がサービスで記憶を戻してくれたらしい。

 そして閻魔は「いつになるか分からんが、もう1つプレゼントを送ってやる」と言ってたらしい。

 このプレゼントというのが、たぶん俺の事だ。閻魔の計らいで、こうしてローリーと再会できた。

 閻魔って偉そうにしてるが、根は優しいのだろうか?


 風呂から上がり、食事も済ませる。

「ご馳走さま。美味しかったよ」

「お粗末様でした」

 食器を片付けようとして、ある事を思い出した。

「ああ!そうだ。ローリー。ノアールさんが見付かったぞ。元の世界でドワーフに生まれ変わってるそうだ」

 ユーノに調べて貰った。彼女は管理人という立場なので、こういった情報にアクセスできる。

 最初はシュワルツ君に聞こうとしたが、彼は物凄~く偉い鬼だったらしく、長く会っていない。


「ノアールさんが!?自爆魔法セルフ・デストラクションでこっちに来たと思ってましたけど…」

「いや。ユーノが言うには、自爆や自殺で地獄行きにはならないらしい。呪い(バッドステータス)が付いて転生だそうだ」

 ローリーの顔が僅かに曇る。

「呪いと言っても、『レベルが上がりにくい』とか『盾しか装備できない』とか嫌がらせみたいなものらしいから、心配いらないらしいぞ」

「…まぁ、レベル5の地獄で苦しんでるよりは良かったです」

 と言いつつも吹っ切れない様子だ。



 ローリーをギュッと抱き締める。

「ダイスケさん?…ダイスケさんは、何処にも行きませんよね?」

「当然だ。俺はローリーから離れない。万が一の事が起きても、何としても君に会いに行く」

「…約束ですよ?もし私を置いて行って、帰ってきた時に私の事を忘れてたら噛みますから」

「ああ。約束だ。ずっと傍に居る」


 地獄に落ちた時はどうなるかと思ったが、なんとかやっていけてる。いや、ローリーが居るから苦に感じないのかもしれない。

 これからも俺達は地獄でも幸せに過ご……



「あれ?あれれ??ローリー?これは一体…」

 晩御飯を食べたら体が動かなくなった。

「言ってませんでした?私、今日から発情期休暇です」

「いや、聞いてな…待て待て待て!なんだその怪しいお薬!?ていうか逃げない俺の体の自由を奪う必要ないだろ!」

「何言ってるんですか?動けない男に襲い掛かるのが楽しいんです!!」

 こんな所にサキュバスみたいな奴が居た。

 やはり自宅ここは俺にとってのレベル5の地獄なのかもしれない。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

今回は読み易くする為に、文字数を制限したりしてました。

それでも読みにくく感じるのは私が国語(特に作文)が苦手で勉強して来なかったからです。自覚はあります。


話数が予定よりかなり長くなっていまいました。

当初の予定では一章で終わるつもりでしたが、早く終わり過ぎてキャラに愛着が湧かないため、ダラダラと書いてしまいました。反省してます。

今後は15話と決めたら15話で完結(延長無し)を目指したいと思います。

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