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29話 死んだ俺の行き先は…

~生と死の狭間(三途の川)~

 又、ここに来てしまったか…

 崩れ去った体は元に戻っている。


「来たか…」

 話し掛けてきたのはムリムキマッチョな鬼。シュワルツ君だ。

「崩れた体は元に戻してくれたのか?」

「あん?何言ってる。今のお前は魂だ。生身の体ではないぞ」

 ああ、そうか。この体は生身じゃなくて、魂が元の体の形をしてるだけなのか。


「テトラー!リーン!何処だー?出口を教えてくれー!」

 遠くで誰かが叫んでいる。声の主を見付けた途端、彼は光に包まれて消えた。

「あれは?自力で脱出したようだが、現世に生き返ったのか?」

「ああ。多分な。ここに来たからと行って、死が確定した訳じゃない。たまにああやって自力で脱出する奴も居るぞ」

「じゃあ俺も…」

「お前はダメだ。現世のお前の体は、既に崩壊している」

 ダメだった。期待して損した。


「じゃあ、何で俺はここに居るんだ?天国に行くのか地獄に落ちるのか知らないけど、直通で良いだろ?」

「お前は殺意に飲み込まれていたからな。閻魔様の所へ連れて行く前に状況を確認し、場合によっては魂を消す必要が有った」

 魂を消す!?

 慌ててシュワルツ君から距離を取る。

「心配するな。お前の魂は元に戻って正常だ。消す必要は無い」

 ビックリさせるんじゃねぇ!

「それじゃ、今から閻魔様の元に…」

「うわぁぁぁぁ!!」

 シュワルツ君が言い終わる前に、巨大なイカの足に体を捕まれ、川の中へと引きずり込まれた。

「……おい!クラーケンの飼育係!ちゃんと教育しろ!!」



~閻魔大王の玉座~

「ニーガ…コホンッ。閻魔様。ダイスケを連れて来ました」

「ご苦労。…全く。折角、転生させてやったのに簡単に死におって」

 いやホント、申し訳ない。

「閻魔様はお元気そうで。ユーチュ…ヘルチューブだったっけか?アレはどうなりました?」

 実は気になっていた。

 閻魔は動画投稿サイトにて、自信のチャンネル登録者を増やしたいが為に職権乱用し、死神からこっぴどく起こられていた。

 だが、こうして閻魔大王をやってるという事は、解雇にはならなかったらしい。候補が居ないだけかもしれないが…


「あれはアカウントが凍結された。不具合らしいが…手続きが面倒で、もう引退じゃ」

 不具合か。ユー○ューブでも似たような事が定期的に有るらしいが、似たようなシステムでも使ってるのだろうか?

「じゃが、何もせず家でゴロゴロしてると嫁さんに怒られるのでな。今は『小説家をやろう』と言う小説投稿サイトに半フィクションの小説を書いて投稿しておる」

 嫁さんってどんな人(鬼?)だろうか?小説家をやろう?小説の内容は?凄く気になるが、長話したくないからスルーする事にした。


「さて、ダイスケよ。お主は今回も地獄行きじゃ。満員だった地獄も増設工事が終わったから、受け入れ態勢も万全。つまり転生のチャンスは無い」

「そうか。地獄行きか…大勢殺したからな」

 正直、何人殺したのか、どんな殺し方をしたのか覚えていない。シュワルツ君の言う通り『殺意に飲まれてた』

「うん?あの重犯罪者共は何人殺しても地獄行きにはならんぞ。地獄行きになったのは、無抵抗な少女を殺したからじゃ」

 無抵抗な少女?

「ローリーの事か?いや、あれは苦しんでたから安楽死を…」

「分かっておる。じゃが今の法律では、お前は地獄行きじゃ。すまんのぉ」

 …まあ、仕方ないか。ローリーを殺してしまったのは事実だ。


「今からお前の行く地獄は、『労働地獄』じゃ」

 初めて聞く。何だそれは?

「労働地獄は辛いぞ。1日約8時間、完全週休二日制での労働じゃ」

 何だと!?冒険者だったら働きたい時に働くだけだったと言うのに…。

 必ず週5日、1日8時間も働けと言うのか!?

「有休は年に20日じゃ。これも必ず取らなければならん。誰かが休んだら仕事が増えるじゃろ?辛いぞ~」

 強制的な有休で同僚の負担を増やすだと!?人手がいくら有っても足りねぇぞ…

「残業なんてさせん!仕事は時間内できっちり終わらせるのがルールじゃ。最も、残業やっても出来高給じゃから残業代は出んがな」

 残業代も無し!?なんてブラックな…

「フハハハハ!恐怖で顔が歪んでおるぞ!」

 そりゃあこんな内容を聞かされたら誰だって絶望する。


「労働地獄に送る前に、堕獄だごくボーナスをやろう。あのゲドーを相討ちで連れ戻してくれたからな。その分の報酬じゃ」

 そういえばゲドーはどうなったんだ?今度は逃げられないようにしてるのか?

「墮獄ボーナスとして、お前には前世の記憶を…待て!コイツ、何で前世の記憶を持っておる?」

 あれ?そう言えば俺、死んだけど記憶は失っていない。

「おそらく、記憶が消えない『特異点』でしょう」

「やれやれ。また特異点か…。最近多いのお。新米女神の仕事が雑なんじゃないのか?」

 専門用語やら女神やら、話に付いていけない。

「あの~…」

「うん?ああ。しょうがないから前前世の記憶でも思い出させてやる。あ~、つまらんの~。前世の記憶が戻って『ふぁー!?』とか『みゃー!?』とかなるのを楽しみにしてたのにの~」

 閻魔様のやる気が一気に下がり、かなり雑に堕獄ボーナスを貰う事になった。


「ほれ、前前世の記憶を思い出させてやったぞ。シュワルツ、連れて行け」

 シュワルツ君の後を付いて行く。


 前前世の記憶が戻って思ったのだが、労働地獄って現代日本の労働基準と変わらなくね?

 寧ろ、かなりホワイトな企業のような気さえしてくる。



~労働地獄~

 着いたぞ。ここが労働地獄だ。

 晴れ渡る空、鉄筋コンクリートの街並み、車は走り、飛行機は飛んで…え?

「俺、日本に転生したのか?」

「何言ってる?ここは地獄だ。ちょっと方向性を変えて、明るくて奇麗な感じに仕上げているがな」

 前に地獄を少し見て周ったが、地下だった。

 労働地獄は地上エリアに造ってしまったのか?何とも大胆な事をする。


「この書類を持って、そこの職業安定所に行けば良い」

 書類の入った封筒を受け取る。

「住む場所は?」

「安定所に行けば分かる」

 書類を持って安定所に向かう。

「ああ!言い忘れてた。ここでは魔法は使えないからな。身体能力もかなり落ちている。前前世くらいの体のつもりで過ごせ。アイルビーバック」



~職業安定所~

 中に入る。エアコンが効いているのか、かなり涼しい。

「こちらへどうぞ…あら?」

 受付の女の子に声を掛けられ…え?

「猫耳…犬の尻尾…その顔に声…ローリー?ローリー・ハウンド!?」

「まさか…そんな…ダイスケさん!?」

 ローリーが受付カウンターを乗り越えて、飛び込んで来る。

 しっかり受け止めて、ギュッと抱き締めた。

「ローリー!こんな所で会えるなんて…。もう離さないからな!」

次回、最終話

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