27話 殺意に目覚めたダイスケ
町には誰も居ない。皆、何処かに避難したのだろうか?
通信魔法で連絡を試みるが、上手くいかない。召喚獣も連絡が付かない。
まるで俺だけが取り残されたみたいだ。
武器屋と道具屋に行き、残っている物を全て収納魔法に入れる。
もし店主が帰ってきた時のために『代金は後で払う。冒険者ダイスケより』と置き手紙を残しておいた。
~冒険者ギルド~
幸い、ここに火は放たれていなかった。
倉庫を見に行くとドアが開いていて、中の物は綺麗に無くなっていた。
略奪に合った痕跡はないので、冒険者か職員が持ち出したのだろう。
「ローリー、もう直ぐだ。しっかりしろ!」
ロビーからセシールの声。戻ってきたのか?
いや、それよりローリーがどうした?急いでロビーに向かう。
「っ!誰だ!?…ダイスケ!無事だったか!?」
「閉じ込められてただけだ。それよりローリーはどうした!?」
セシールにおぶられているローリー。ぐったりしている。
「こっちだ!職員休憩所にベッドが有る。ひとまずそこに寝かせよう。」
ベッドに寝かされたローリーに話し掛ける。
「ローリー!しっかりしろ!ローリー!!セシール、何があった?」
「南の町に撤退中に、敵に囲まれて弓兵に射られた。かすり傷だけど、矢に毒が塗られてたんだ」
「毒?毒消しなら持ってるぞ。これを…」
「ダメだ。これは猛毒だ。毒消しが効かない。魔法も、セイラさんだけが使える最上位の解毒魔法でないと、この毒は消えない。けど…セイラさんは…もうこの世に居ない」
セイラも亡くなったのか?だとしたらローリーは…
「俺がやる!」
「解毒魔法を出来るのか!?」
「出来る出来ないじゃない。やるしかないんだ!でないとローリーは死ぬ。解毒魔法…リフレッシュ!」
魔法による解毒を試みるが上手くいかない。
「クソっ!もっと魔力を集中…スーパーリフレッシュ!!」
何度もやるが、ローリーの身体から毒が消えない。
「何でだ!?何で毒が消えない!?」
前にセイラから「繊細さが足りていない」と言われたのを思い出す。あの言葉を真摯に受け止めて、もっと回復魔法の練習をしとくべきだった。
「ダ、ダイスケさん…」
ローリーが目を覚ました。だが、声が弱々しい。
「ローリー!目が覚めたか?」
「ダイスケさん…お願いがあります。私を…殺して…下さい」
「っ!?何言ってる!必ず助ける!」
再度、解毒魔法を試みる。繊細さなんて今すぐにはどうにもならん。なので闇魔法でブーストを掛ける力技を試みた。
しかし失敗。
「もう…手遅れです。毒が全身に…凄く…辛いんです。お願い…私を…」
いくらローリーの頼みでも、殺すなんて…そんなの…
「できるわけ無いだろ!そんなの…俺はローリーを愛してる。殺すなんて…殺すなんて出来ない」
「ダイスケさ…ゲホッゲホッ」
「ローリー!?」
ローリーが吐血した。彼女はもう限界だ。そんなのは分かってる。分かっているけど…
セシールがナイフを鞘から抜いた。
「このまま苦しませるよりは…ダイスケがやらないなら、私がやる」
そう言うセシールも、ボロボロと涙を流している。
「セシール…いや、俺がやる」
覚悟を決めた。だがナイフは使わない。
「苦しまないように即死魔法を使う。ローリー、直ぐ楽にしてやる」
即死魔法の成功率は低い。だが、これだけ弱ってるローリーになら絶対に成功するだろう。
「ダイ…スケさん…また…来世で…」
「っ!?ああ、約束だ。神を脅してでも君に会いに行く。即死魔法!」
即死魔法は成功した。
ローリーは静かに息を引き取った。
「ローリー、安らかに…眠…う…うわぁぁぁぁぁ!」
「ダイスケ…大丈夫か?」
「ああ、問題無い。涙はもう枯れた」
どれくらいの時間、泣いてたのだろう?涙も出なくなった。
「探知魔法に反応。どうやら敵さんが性懲りもなく来たみたいだな。セシールはここに居ろ」
「いや、私達も行く!」
セシールも戦う気のようだ。だが…
「ダメだ。貴族様には町の復興と言う大事な使命が有るんだろ?命を掛けて戦う必要は無い」
これは建前だ。本音は、今からの戦闘をセシールには見せたくない。
「ダイスケ!気持ちは分かるが1人でなんて…ひぃ!?」
セシールが小さく悲鳴を上げる。
「何だ?俺の顔に何か付いてるのか?」
「い、いや、何でもない。分かった。ダイスケに全部任せる」
「?そうか…」
敵を迎え撃つため、町の中央広場へと向かった。
「ダイスケのさっきのは…鬼のオーラ?いや、違う。もっと禍々しくて危ないオーラだった。アレはまるで…死神?」
~中央広場~
もし、この世界に神が居るのなら、先ずはソイツから葬ってやりたい。
ローリーを失った悲しみ、怒り、憎しみ…様々な感情が沸き上がり、俺の心が壊れていく。そんな気がしてきた。
いや。気がしたのではなく、実際にそうなのだろう。
西門からゲドーの部隊が攻め込んで来た。
前回の盗賊や山賊みたいな奴らとは違い、赤い鎧を纏った兵士達だ。主力だろうか?人数は60人といったところだ。
「町の連中は?全員、逃げたのか?もぬけの殻だぞ。俺達Aチームが来るまでも無かったな。とっとと戦利品を奪ってズラかるぞ」
「おい見ろ!広場に1人だけ男が居るぞ。どうする?」
「決まってんだろ。殺っちまえ!金目の物は金歯まで没収だ!」
剣士達が抜刀して突っ走って来る。
「クズ共が!消え失せろ!!地獄の業火」
火属性の魔法に、闇属性のブーストを掛けた。常識を遥かに越える威力となった炎が、奴らを焼き尽くす。
「手加減などしない。してなるものか!皆殺しだ!!」
剣士達は悲鳴を上げる間もなく、骨すら残らず焼けた。
「俺はここだ!全員まとめて掛かって来い!1人も残らずぶっ殺してやる!!」
〈キャラクター紹介〉
殺意に目覚めたダイスケ
ローリーの死を切っ掛けに心が壊れて理性が吹っ飛び、殺意に目覚めてしまったダイスケ。
敵と認識した者は全て殺しに掛かる。しかし敵と認識しなければ殺さない程度には理性が残っている。
暗黒魔術師である事に加え、殺意に目覚めた事で、通常の魔法に闇属性のブーストを掛ける「闇ブースト」の威力と精度が格段に向上している。




