25話 仕組まれた罠と迫りくる町の危機
〈キャラクター紹介〉
ハン・サム・ゴブリン
突然変異(ユニーク個体)で産まれた8頭身のイケメンゴブリン。
マッスルベアーに拠点を滅ぼされて以降、ガルシアの町に住み着いている。
性格も野蛮なゴブリンとは真反対で、真面目で優しい。
頻繁に発情期の通り魔に追い回されている。
~酒場MATATABI~
「この人をを知らないか?」
「ああ、アイツだ。カウンター席でラム酒飲んで寝てる奴」
「おい!ダイスケ。起きろ」
女性の声が聞こえる。
「う…ん…誰だ?折角、気持ち良く寝てたのに…」
「家に帰って寝ろ!もう何日も帰ってないんだろ?ローリーが心配して捜索クエストまで出されたんだぞ」
酒の飲み過ぎで頭がガンガンする。俺、何日帰ってないんだっけ?
「一体、何があったんだ?」
「どうもこうもあるか!俺のやることが裏目裏目に出るようになって、地震は起きるし山は崩れるしシャムネ湖は干上がるし!その度に憲兵に連れて行かれてお仕置きと反省文だ!!やってられっかバーカ!」
そうだ、思い出した!ネズミ系亜人の拠点破壊で地震を起こしたのが2週間前。
そして何やかんやで1週間前から酒場に入り浸ってる。
「この前なんか酷かったぞ!オッパイぷるんぷるんな発情期の通り魔に襲われて、なんとか撃退したら駆け付けた憲兵に『君、暴行の容疑で逮捕する』だってよ!大規模人事異動で来た犬のお巡り共、正当防衛だっつってんのに聞く耳持たねーの!チクショーメー!…誰だ!俺のラム酒飲んだ奴は?スターリンか!?」
ラム酒をボトルで注文し、ラッパ飲みする。
「ダイスケ!まだ飲むのか!?いい加減にしろ!!」
「うっせーわ!やってられっか!!」
~20分後~
「「やってられっかーー!」」
いつの間にかセシールも一緒に酒を飲んで、酔ってしまった。
「何で父上が持ってくる見合い話の相手は肉団子ばかりなのだ!?自分の娘が肉団子に○○○されるのを望んでるのか!?この前なんて…」
セシールも色々と大変らしい。
「…おい、ダイスケ。聞いてるのか?」
「うん?ああ、もちろん。セシールも頑張ってたんだな。偉い偉い」
何気なく、セシールの頭を撫でてやる。
「ふみゃ!?ダ、ダイスケ。何を…」
「誉めてやってるだけだが…こっちの世界では頭を撫でたりしないのか?」
「子供ならするが、私はもう大人なんだぞ」
照れて顔を真っ赤にするセシール。あれ?セシールってこんなに可愛かったっけ?
「きゃー!誰か!!」
外から悲鳴。誰かが暴れてるのか、物音もする。
急いで外に出る。
「っ!?何だアイツは?ライオン?いやトラか?」
酔って幻覚でも見ているのだろうか?体長5mはある巨大なライオンかトラかよく分からないモンスターが居た。
「ラ、ライガー!?何でアイツが町中に?」
「とにかくアイツを討伐し…おうっぷ」
酒を飲み過ぎた。気持ち悪い。
「ほら、酔い醒まし。即効性で良く効くぞ」
セシールから酔い醒ましを貰う。『ウコンとシジミの濃縮エキスを配合』とヤバそうな説明が書いてある。
飲んでみたが最高に不味かった。
「そこだ!」
セシールがレイピアでライガーを突く。急所狙いの一撃。当たれば即死の暗殺技だ。
「決まっ…え?消えた!?」
「残像だ!セシール、伏せろ!」
セシールの背後に回り込んだライガーが、セシールに襲い掛かる。
「しまった!うわぁぁぁぁ!!」
「…あれ?ダイスケ!!」
指先から魔法の糸を出してライガーに絡め、なんとか動きを止めた。
操り人形にしてやりたいところだが、ライガーのパワーが強すぎて出来そうにない。
「セシール!早く逃げろ!長くは持たな…うわ!?」
ライガーが走り出した。そのまま引きずられる。
「ダイスケ!?」
走り出したライガーに止まる気配は無い。
それにコイツは想像以上に強そうだ。周りへの被害を考えると、町中での戦闘は避けた方が賢明だろう。
「町の外に出すには…そこを右だ!曲がれぇぇぇ!」
魔法の糸を束ねて綱引きのように引っ張り、ライガーの進路を変える。
急旋回により俺の体は遠心力で振り回され、建物に激突する。
「痛って~。けど良いぞ!大通りに出た。そのまま真っ直ぐ…どけ!道を開けろ!!」
通りに居る人々に道を空けるよう注意を促す。幸い、ライガーは人々に襲い掛かる様子は無い。
魔法の糸を収縮させ、ライガーの背中によじ登った。
「もうすぐ北門…嘘だろ!?閉まってやがる」
普段は開いてるはずの門が閉まっていた。門番の姿も見当たらない。
Uターンさせて南門へと思ったが、魔法の糸を引っ張っても制御できない。
「クソっ!拘束解除」
魔法の糸を切り、ライガーから飛び降りる。
ライガーは門に激突。木製の門を木端微塵に破壊し、そのまま北へと走り去って行った。
ライガーを追いかけて来た冒険者、野次馬も集まって来た。
「ダイスケさん!?」
1週間ぶりに聞くローリーの声。
「どこ行ってたんですか!?心配したんですよ!」
ローリーの猫耳が『イカ耳』状態。かなりお怒りの様だ。
「いや~、えーと…は、発情期の通り魔から逃げてて…」
ローリーに言い訳をしていると、憲兵が駆け付けた。
「また貴方ですか…派手にやりましたね」
憲兵は木端微塵になった門を見ながら俺に話し掛ける。
「ダイスケ・レッドフィールド。器物損壊の容疑で逮捕する」
うん。こうなると思った。
憲兵に手錠をはめられる。それも魔法封じ加工の施された特殊な手錠だ。
「待って下さい!ダイスケさんはライガーから町を守ろうと…」
「誘導して門を破壊したのは明白だ。そもそもライガーが突然、町中に現れるなんて不自然だ。コイツがモンスター召喚したのかもしれん。とにかく逮捕だ」
「言い掛かりだ!」「横暴だ!」
集まった人達から野次が飛ぶ。最近来た憲兵の事を町の人達も良く思って無いようだ。
「ダイスケさん…」
「ローリー、心配するな。いつも通り反省文書いて来る」
逮捕後、直ぐに拘置所まで連れて行かれた。
~拘置所 ??室~
頭に袋を被せられ、どこか分からないようにされて運び込まれた。このパターンは初めてだ。
椅子に座らされたが、手錠で身動きが取れない。
頭の袋を取られた。
目の前に居たのは憲兵の男と、もう1人は誰だ?ケツアゴの男。何処かで見たような…
「ご苦労だった。下がって良いぞ」
ケツアゴは偉い人なのか、憲兵に命令している。
「久しぶりだな。マッスルベアーを従えし者よ」
久しぶり?マッスルベアー。それにケツアゴ。声も聞き覚えが有る。
「まさか…ゲドー?死んだはずだ!?」
「ああ。死んでたさ。だが一度っきりの特殊スキルを使って地獄から舞い戻って来た」
地獄を抜け出すとは…閻魔やシュワルツ君は何をやってるんだ!?
「何が目的だ?俺に復讐するつもりか?」
「復讐?そんな物に興味は無い。ただ、この町での商品(奴隷)の仕入れを邪魔されたくなかったのでな。君にはここで大人しくしといてもらう」
「仕入れだと!?まさかこの前の憲兵の大規模異動や、俺が憲兵に目を付けられてたのはお前の仕業か!?」
「お喋りはここまでだ。Bチームが到着する時間なのでな。失礼する」
ゲドーは退室し、ドアに鍵を掛けた。
「おい!待て!町の奴らに手を出すんじゃねえ!ゲドー!!…クソがぁぁぁ!!」
魔法封じの手錠で何も出来ない。
ローリー、ノアール、セシール、その他諸々の冒険者達や町人達。どうか無事で居てくれ。
そう願う事しか出来なかった。




