21話 廃墟となった町での救出作戦
〈キャラクター紹介〉
ゲドー・クサレ
指名手配中の奴隷商人。人身売買の他、数々の犯罪行為に手を染めている。
遂には死神に目を付けられるほどになり、シュワルツ君に「殺害して地獄に連れてくるように」との命が下った。
~西の街道~
バイクで廃墟となった町の手前まで来た。
突入前に丘の上から双眼鏡で偵察を行う。
「思ってたより人が多いな。護衛か?」
「奴隷商人の護衛と拉致部隊だろ。ざっと30人位。エルフ達が囚われているのは…おそらく、あの茶色い屋根の建物だ。出入口のドアに見張りが居て、窓は木の板で塞がれている」
建物を良く見ると、冒険者ギルドだったようだ。2階の壁にギルドのエンブレムが描かれている。
ギルドの建物は頑丈に造られている。廃墟となった今でも使えるのだろう。
「うん?シュワルツ君。もう一件、見張りが居る建物が有るぞ。もっと奥…グレーの屋根の建物だ」
「ふむ…窓は空いている。脱走を防ぐ為の見張りではないな。奴等は護衛だろう。となるとゲドーはあの建物か?」
気に入らない。一際目立つあの建物は役場の構造だ。そこを根城にするとは、支配者気取りか?
ポツッポツッと頭に水滴が落ちて来た。
空を見上げると分厚い黒い雲。バイクに乗ってる時から気になっていたが、この雲は積乱雲だ。
「雨か。丁度良い。視界は悪くなり、足音も消える」
隠密行動には都合が良いらしい。だが…
「急いだ方が良い。この雨は嵐になる」
遠くでゴロゴロと雷の音がする。
「…そのようだな。隠密行動は止めだ。俺が東門から突入して騒ぎを起こす。その隙にお前は北門からコッソリ侵入してエルフ達を逃がせ」
「ゲドーは?」
シュワルツ君が収納魔法を開く。中から禍々しい形のショットガンを取り出した。
「ゲドーは俺が殺る。お前はエルフ達を逃がす事だけ考えてろ」
~廃墟となった町 東門~
「うん?何だあれは!?おい!止まれ!!止ま…」
「おい!今の銃声しなかったか!?」
「総員、戦闘配置に付け!鉄の馬に乗ったオーガの襲撃だ!」
~廃墟となった町 北門~
シュワルツ君が突入したらしい。
ショットガンを撃ちまくってるらしく、銃声が鳴り響く。
騒ぎで北門の門番も行ってしまい、侵入は容易かった。
~冒険者ギルドだった建物~
流石に、ここの見張りは持ち場を離れなかった。
睡眠魔法で全員、眠ってもらった。強力な魔法なので朝までは起きない。どんな大きな物音が立ってもだ。
ドアを少し開けて中を覗く。直ぐに入らないのは罠を警戒しての事だ。
見える範囲に人も罠も無し。中に入る。
この建物、中の構造もガルシアの町のギルドと同じだ。迷子にはならないだろう。
索敵魔法で人の位置を探す。
人の反応が5つ。この位置は職員休憩室からだ。
職員休憩室の前に来た。見張りが居たので、彼も魔法で眠らせた。
この部屋のドアには後付けの南京錠が付けられている。
「ちょっと!聞こえてないの!?開けなさい!何が起きてるの!?」
中から女性の声。
「ドアを開けてやる。少し離れてろ」
身体強化魔法を掛けて、ドアの破壊を試みる。しかし頑丈なドアはびくともしない。
「チッ!無駄に頑丈に造りやがって。なら…」
炎属性魔法を指先に一点集中させる。
それで南京錠を加熱させる。すると中の鉛が溶けて南京錠が崩れ落ちた。
ドアを開け、中を確認する。エルフと亜人達が閉じ込められていた。
「誰!?」
「アイツは確か、最近転生して来た…」
部屋を見渡すが、ユーノの姿が無い。
「俺はダイスケ・レッドフィールド。助けに来た。捕まってたのは、これで全員か?」
「もう1人、エルフが…」
既に売られてしまったか!?クソっ!!
「エルフのユーノが偉そうなデブに連れて行かれて…今頃あんな事やこんな事をされてるかも…うぅ(泣)」
売られてはいなかったようだ。まだ助け出せる。
あんな事やこんな事をされてたら心のケアが必要かもしれないが…
シュワルツ君が更に激しく暴れだしたのか、銃声と爆音が鳴り響く。
「俺は、そのエルフを助けに行く。お前達は自力で脱出してくれ」
「え?ちょっ!?」
「大丈夫だ。退路は確保してある。お前達の没収された装備品もロビーにまとめて置いてあった」
急いでユーノを助けに向かった。
~中央広場~
シュワルツ君…派手にやったな。
建物は何軒も炎上し、辺り一面に死体が転がっている。流石、鬼。容赦が無い。
役場だった建物の2階のガラスがバリンッと割れ、偉そうなデブが落ちてきた。
続いてシュワルツ君も飛び降りた。
「くっ!?この悪魔め!」
シュワルツ君がショットガンをコッキングしながら偉そうなデブに歩み寄る。
「地獄に落ちろ、ゲドー!」
シュワルツ君が引き金を引き、偉そうなデブは絶命した。
「シュワル…うわ!?」
声を掛けようとしたらショットガンで撃たれた。
さっきの身体強化魔法の効果が残っていたので怪我は無い。衝撃で吹っ飛ばされただけだ。
「あっ…おい!大丈夫か!?」
シュワルツ君は反射的に撃ってしまったようだ。
「痛てて…だがこの程度で俺は死なん!俺を殺したかったらプレ○ターでも連れて来る事だ」
冗談を言える程、余裕が有った。
「…面白い奴だ。殺すのは最後にしてやる」
シュワルツ君が言うと冗談に聞こえない。
「え?坊やも来てたくれたの?」
役場だった建物からユーノが出てきた。裸足でローブを羽織って…生足がなんともエッチだ。て事は、つまり…
「クソっ!遅かったか!?既にあんな事やこんな事を…」
「されてないから!確かに危ないところだったけど、彼が助けてくれたのよ」
ギリギリ間に合ってたようだ。
「ねえ。貴方の名前は?」
「ニックだ。ニック・アイゼンハワー」
…え?ニック??
「シュワルツってのは?」
「あれはコードネームだ。『ラスト・アクション・コマンドー』という映画の主演俳優が好きで、名前を借りている。正確には『シュワルツェ』だ」
コードネームだったのか。
と言うかラスト・アクション・コマンドーって何だ?地獄で上映されてる映画なのか??
「ニック…良い名前ね」
「君も、凄く美しい」
なんか2人の世界に入りやがった。雨足も強くなって来たから、早く帰りたいんだが…
「もし良かったら、ガルシアに戻った後で食事でもいかがかな?」
「良…ダメよ!私はエルフ。貴方はあの時の鬼でしょ?種族どころか住んでる世界も違うわ」
そうだ。さっさと諦めて帰れ。
「そうはいかない。初めて見た時から、君を攫うと決めていた」
ユーノを壁ドンするシュワルツ君。近くで雷も鳴ってるからマジで早く帰りたい。
「…っ!?2人とも伏せろ!!」
何者かの攻撃で爆発が起こる。魔法のバリヤーで、なんとか防いだ。
「私の留守中に派手にやってくれたな」
相手はワインレッドの全身鎧に黒いマント。兜で顔は見えない。武器は刀の形状をしたノコギリ。ちょっとカッコいい。
空気が震えている?いや歪んでいる?何と表現すれば良いのか分からないが、コイツはヤバいくらい強いのが伝わってくる。
「私の名はゲドー。闇に堕ちし転生者なり」
「何?ゲドー??じゃあシュワルツ君が倒したコイツは?」
「残念だったな。そいつは影武者だ。さあ、武器を取れ。全員、血祭りにしてやる!」




