19話 偶然生まれた必殺技と暗黒魔術師
~冒険者ギルド~
「…以上が冒険者の『兵種』です」
ドラ○エとかの職種みたいなのが、この世界の冒険者にもあるらしい。兵種と呼ぶそうだ。
正規冒険者になったので、兵種を選べるようになった。
昨日は魔剣が買えると聞いて浮かれてしまい、兵種の設定を忘れていた。若さゆえの過ちというやつだ。
選べる兵種は剣士、戦士、魔道士、格闘家の4種。それと、何の特徴も無いが弱点もない無職。
「ダイスケさんなら魔道士が良いと思いますよ」
ローリーは魔道士を薦めてくれた。
「だが物理防御が貧弱すぎるだろ?かといって剣士や戦士は脳筋だし…魔道戦士みたいなのは無いのか?」
そんな都合の良いもの、有るわけ無いか…
「有りますけど、選べる兵種じゃないんですよ」
「有るのか!?でも、選べない?」
「はい。魔導士になって物理攻撃を続ける事で魔道戦士に変化します。進化兵種って言います」
魔道士で物理攻撃って…かなりのムチャ振りだが、やってみよう。
「魔道士への兵種変更、手続き完了です」
「…何も変わった感じがしないな?」
もっとこう力が溢れてくるようなのを想像していた。
「実感は無くても、解析魔法では魔法系能力が大幅に向上して、物理系能力が大幅に減少していますよ」
「試してみないと分らんな。ローリー、討伐クエストを。この『グレートチキン』とか言うモンスターで良い」
今朝からクエストボードに出ているこのクエスト。弱虫と言うくらいだから大した事ないだろう。
「え?グレート…ダイスケさんなら大丈夫ですよね」
あれ?何だろう?この反応は強いモンスターなのか??
~西街道~
「誰だよ鶏とか言った奴!ダチョウじゃねーか!!」
グレートチキンは中型モンスターだった。ファイナルファ○タジーのチョ○ボっぽい感じだ。
かなり機嫌が悪いらしく、こちらを見るなり飛び蹴りを仕掛けて来た。
「っ!?速い!」
咄嗟に横に飛んで蹴りを避ける。蹴りは後ろに有った木に当たり、木がへし折れた。
「何て奴だ。こりゃ物理攻撃で遊んでる場合じゃないな」
「炎の双剣!速度2倍化魔法!」
魔法の双剣で一気に畳みかける。
グレートチキンはかなりすばしっこく、攻撃が当たらない。
「っ!?シールド展開!」
左腕上腕部に魔法の盾を形成し、グレートチキンの回し蹴りをガードする。しかし、強烈な蹴りに耐え切れず、引き飛ばされた。
10m程飛ばされ、地面を転げ回る。
「痛てて…物理防御が下がってるから、いつもより痛てーぞ」
グレートチキンが更に突進を仕掛けて来る。
「接近戦は不利。なら…雷魔法、雷電!」
雷撃がグレートチキンに襲い掛かる。しかしグレートチキンは華麗に回避してしまう。
どんどん距離が詰まる。
「これならどうだ!?砲千火!」
無数の火の玉で弾幕を張る。それも避けられてしまう。
「くっ!?近距離で一撃必殺を狙うしかないか…」
右手の拳に魔力を溜める。
グレートチキンが飛び上がり、急降下キックを仕掛けて来た。
「今だ!喰らいやがれー!!」
こちらも右手の拳を出し、溜め込んだ魔力を一気に放出した。
拳から出た紫色の熱線がグレートチキンを焼き払う。
「コケコッコーーー!!」
「はあっはあっ…コケコッコーってコイツ名前の通り鶏だったのか?どう見てもダチョウだろうに」
自分の右拳を見る。パンチのつもりだったが、闇属性の強力な熱線が出た。
「技名は…『デスバスター』とか良さそうだ」
デスバスターと名付けた必殺技。威力は強烈だが、射程は短い。
魔力の消耗も激しい為、カウンター狙いの必中が求められるだろう。
こんがり焼けたグレートチキン。辺りには美味しそうな焼き鳥の匂いが漂う。
「コレ食えるのか?一応持って帰…」
「コケーコココ!」
グレートチキンが他にも居やがった。
「3体のグレートチキン。こっちの魔力の残りはデスバスター1発分だけ。どうするべきか…」
「コケーーー!!!」
仲間を殺された恨みだろうか?怒り狂った様子で襲い掛かって来た。
アイツ等、ホントはダチョウだろ?メチャメチャ足が速い。
「逃げられそうにないか。来い!相手になってやる!!」
~冒険者ギルド~
「え?ダ、ダイスケさん!?」
「クエスト完了だ。チキンの癖に骨の有る奴だった」
「いや、そんな事よりボロボロじゃないですか!」
「ボロボロになったのは服だけだ。傷は回復魔法で治ってる」
「服だけって、上半身裸でズボンも膝に大穴空いてますよ!どんな戦い方したらこんなになるんですか!?」
激しい戦いだった。まさか奴らが破壊光線を撃って来るとは思わなかった。
クエスト完了の手続きと報酬を受け取る。
1体につき5万ゼニ。4体倒したので合計18万ゼニ…うん???
「2万ゼニ足りないぞ?」
「所得税が天引きされたんです」
異世界でも納税の義務は有るらしい。
「所得税が10%!た、高けえ…」
「安心して下さい。そっちの世界の『コーセーネンキン』や『ケンコーホケン』は有りませんから」
それはそれで将来が不安だ。
「あれ?ダイスケさん、兵種変わってますよ」
ローリーに解析魔法を掛けられた。ローリーの視線がやたらと低い…こ、この位置は!?
「どこ見てんねん!?」
慌ててズボンのチャックを隠す。おや?大丈夫だ。開いてない。
「ち、違います!丁度この位置に表示されてる文字を読んでたんです!」
解析魔法は本人にだけ見える文字や数値が現れるらしい。
「暗黒魔術師…魔術師!?暗黒魔道士なら分かりますけど、魔術師?」
ローリーが何やら考え込む。
「魔術師と言うのは魔道士のエリートの中のエリートだけが成れる特殊な兵種なんですよ。そんな1日で成れるような物じゃ有りません。ダイスケさん、一体何をしたんですか?」
「何って…魔力を全て使い切ったうえでチキン達の破壊光線を魔法で弾き返したり、瀕死の状態から魔力を絞り出して回復魔法を使ったり…」
「魔力を使い切って魔法を?訳がわかりません」
「とにかく、限界を超えた超次元バトルを繰り広げていた」
「そんな危ない時は召喚獣呼びなさい!」
何故か怒られた。
「ダイスケさんのムチャクチャな戦いっぷりで兵種が暗黒魔術師に変化したようです。これは闇魔法のスペシャリストで、最上級の兵種です」
「武器や防具に制限は?」
「有りません。無職同様、全て装備できますし、使いこなせます」
「他に特徴は?」
「闇魔法に限って威力増し、消費魔力半減です」
かなり優秀な兵種だ。死にかける程、自分を追い詰めた甲斐が有った。
~夜 ローリーのアパート~
「あれ?あれれ?ローリー、発情期終わったよな?」
ローリーに床ドンされてしまった。魔法も掛けられ、身体は石のように重く動かせない。
「たった1日で最上級兵種に成る程の人。徹底的に調べたくなりました」
色気付いた顔のローリー。何を調べる気だ!?
「怖がらなくても大丈夫ですよ?痛くはしませんから」
ああ…ローリーの目の色が変わってしまった。亜人は興奮すると一時的に発情期となるらしい。
アレは発情期に獲物に襲い掛かる狩人の目だ。
この夜、お婿に行けなくなるくらい色々調べられた。




