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17話 判決

〈モンスター紹介〉

召喚獣マッスルベアー

 絶命後、召喚獣化したマッスルベアー。人語も話せるようになった。

 偉そうに振舞ってはいるが、時々子供っぽい言動が見られる。

 召喚獣化により戦闘力が大幅に向上したが、やっぱり犬や犬系亜人は苦手。召喚獣界でフェンリルに手伝ってもらい、克服しようと特訓中。

~地獄 閻魔の執務室~

 いつも通りギルドに向かう途中、突然開いた穴に落ちた。

 その穴が特殊な転移魔法だったらしく、行き先は閻魔大王の目の前。直通だった。


「1週間ぶりじゃのう。赤野大介」

 赤野?俺の事か?

「閻魔様。コイツは前世の記憶を無くして、今は『ダイスケ・レッドフィールド』と名乗ってます」

 後ろからの声に振り返ると、扉の前に鬼のシュワルツ君が居た。

「うん?そうか。すまん」

 赤野大介。それが前世での俺の名前らしい。今となってはどうでも良いことだが…


「さて、ダイスケ。今日は貴様の地獄行き免除トライアルの結果発表で呼び出した」

 閻魔大王はパソコンを操作し、プロジェクターで動画投稿サイトをスクリーンに写し出した。

「聞いているとは思うが、貴様の24時間の行動を動画投稿サイトHellTubeヘルチューブに投稿し、その動画のイイネの数が1000を超えたら地獄行き免除じゃ」


 動画は24時間ぶっ通しというわけにいかず、何本かに分けられていた。

 閻魔大王が動画のイイネの数を集計する。

「997イイネ。僅かに足りんかったのぉ」

 数え間違いじゃないかと思い、自分でも数える。

 やはり997イイネだ。


「人間にしては頑張った方じゃ。じゃが、だからと言ってサービスする気は無い」

 地獄行きが確定してしまったようだ。すまない。ローリー…


「異議有り!!」

 声と共に何者かが転移魔法で現れた。

 黒いフード付きコートを来た女性だ。

「げぇ!?ミウ様!!」

 閻魔が玉座から飛び降り、ミウと言う女性に深々と頭を下げる。

「お久しぶりです!ほ、本日はお日柄も良く…(以下略)」

 何やら長い挨拶が始まった。


「なあ、シュワルツ君。ミウってのは閻魔大王様より偉いのか?」

「ミウ様は死神だ。機嫌を損ねたら消されるぞ!」

 シュワルツ君も焦っていて、顔が冷や汗で凄い事になっている。

「そこの貴方。知らないみたいだから教えてあげる。閻魔なんて所詮は大王。死神は死を司る神。私の方が偉いし、その気になれば閻魔なんて瞬殺よ」

 つまり破壊神ビ○スみたいな奴か。


「そ、それでミウ様。本日はどのような御用件で?」

「言わなくても分かるでしょう?あんた人間を異世界転生させる権限が無いのに、コイツを異世界に送り込んだ」

 え?権限無かったの??

「いやー、それはですね。急ぎの用事だったので書類審査や立入検査を後日行う方向で調整して…ひぃっ!?」

 死神が何処からともなく出した巨大な鎌を閻魔大王の喉元に突き付ける。

「急ぎの用事?アンタの娯楽よね??動画投稿サイトの閻魔ちゃんねる。アレのマンネリ化脱出のテコ入れのためにコイツを使った」

「な、何故それを…?」

「死神ギルドは秘密警察より優秀なのよ。因みに、コイツを地獄に連れ戻す為にグッド…あれ?イイネだったかしら?それを138減らして地獄行き判決が出るようにしたのも知ってるわよ」

 何だと!?思いっ切り不正してたのか!


閻魔ニーガン!どういう事だ!?」

 シュワルツ君が鬼の形相で閻魔の胸ぐらを掴む。

「ぐぅ…死神が言った通りだ。人気HellTuberになりたくてダイスケを使った。じゃが儂に転生させる権限は無いから、連れ戻す必要があった。それでイイネの数を細工した。最初から決めていた事だ」

 シュワルツ君が拳を振り上げる。

「待ちなさい!」

 シュワルツ君の動きが止まった。

「そこで提案なんだけど、コイツの身柄は私が預かるわ。私が転生させた事にすれば、全て解決でしょ?閻魔の再教育はシュバルツだったかしら?アンタに任せるわ」


 どうやら地獄行きは免除になったらしい。

 閻魔大王はシュワルツ君により別室に連れて行かれた。

「ありがとう。死神さ…」

「あ゛~、疲れた。偉そうに振舞うのってガラじゃないのに」

 死神の威圧感の有る声が、急に可愛らしい声になった。

「さて、今からお兄さんを送り返…」

 会話の途中でメロディが流れ出す。うん?この曲は初音○ク!?…何て曲だったかな?曲名が思い出せそうで思い出せない。とにかく早口過ぎて歌えないあの曲だ。

 電話の着信音だったようで、死神がポケットからスマホを取り出し、誰かと通話する。

 死神がスマホ、閻魔もPCを使っていたが、あの世ってのは意外と技術発展してるようだ。


「また紛争ですか?分かりました。直ぐ刈り取りに向かいます」

 死神の通話が終わったようだが、何やら物騒な単語が聞こえた。

「ごめん、お兄さん。急用が出来たから行かないと…シュバルツ!」

 別室に行ったシュワルツ君が大急ぎで駆け付ける。

「シュワルツです。と言うか正確にはシュワルツェです」

「どっちでも良い!お兄…コイツをガイヤルド世界まで送り返しなさい」

「え?いや、私はコイツを連れて来たので魔力切れ…」

「『死は救い。死は自由。死は解放』」

 死神が魔法の詠唱を始める。

「ひぃぃぃぃ!?返します!返しますから核属性魔法はお止めくださいぃぃ!」

 え?核?核って言った??何それ怖い。

 死神は転移魔法で何処かに行ってしまった。


~3時間後~

「いや~、あの時は死ぬかと思った」

 疲れ切った表情のシュワルツ君。

 核属性魔法とは、最強の攻撃魔法らしい。死神もホントに撃つ気は無かったと思うが、脅すには充分すぎる。


「すまんな。昨日夜更かししたせいで、肝心な時に魔力切れを起こした挙句、回復に手間取った」

「問題ない。おかげで地獄を堪能できた」

 地獄はイメージと大きく違った。

 平成30年の日本くらいの生活水準で、鬼も亜人も人間も楽しそうに過ごしていた。

 一部地域は非常に治安が悪く、バイクに乗ったモヒカン達が暴走しているらしい。そこに近づかなければ地獄の暮らしも悪くなさそうだった。


「それじゃ、転移魔法をやるぞ」

「ああ。また会おう」

「地獄で会お…いや、もう会う事は無いだろう。達者で暮らせよ。最上級転移魔法アナザーゲート!」

 シュワルツ君が特殊な転移魔法を使った。 



~冒険者ギルド~

「う~む…何処に行ったのでしょう?忽然と姿を消すなんて」

「やっぱり筋肉モリモリマッチョマンな鬼に連れて行かれたんじゃ…」

「ダイスケさん…」


 転移魔法から出る。戻って来…空?

「うわぁぁぁぁ!落ちる!!」

 転移魔法が穴になったり出口が空だったり。シュワルツ君、疲れてるのだろうか?

「飛行魔法!…と、止まれねぇ!?」

 ドンガラガッシャーンと轟音を立てて、ギルドの職員用休憩室に落下した。

「痛ってー!強化魔法が間に合わなかったら死んでたぞ…あれ?前も同じ事を言ってたような?」

 立ち上がり、瓦礫から脱出する。

 廊下から誰かが走って来る足音が聞こえる。

「一体、何事…ダ、ダイスケさん!!」

 ローリーが、こちらを見るなり抱き付いて来た。

「良かった!無事で。突然現れた穴に引きずり込まれたって聞いたから心配したんですよ」

「悪い。心配かけたな。ちょっと地獄で鬼と閻魔と死神に絡まれてな」

「え?死神も??けど、ここに帰って来たって事は…」

「ああ。地獄行きは回避できた。これからも宜しくな。ローリー」

「…はい!ダイスケさん」


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