16話 新たな力
〈施設紹介〉
冒険者ギルド
木造2階建て。1階は受付カウンター、休憩所、売店など。2階は食堂になっている。
冒険者と言いつつ冒険(旅)に出る者は居ない。
施設で行っているのも仕事の斡旋などで、職業安定所や派遣会社と呼ぶ方が正しいのかもしれない。それでも尚、冒険者ギルドと呼ぶのは古き良き時代の名残り。
~ボンベイ平原~
今日も良い天気。運動に最適だ。
昨日のマッスルベアー戦でレベルアップしたローリーは、新たに『相手の強さを計測する魔法』を使えるようになった。
早速、ギルドの計測器で強さが測れない俺を計測した。
結果は「レベル200でカンストしてます。限界突破アイテムが無いとこれ以上レベルは上がりません」だそうだ。
スゲー強くなってるらしいので、平原に運動しに来たわけだ。
先ずはその辺を走り回ってみる。確かに足が速くなっている。
計測器が無いから分からないが、感覚的には100mを5秒くらい。亀の仙人並みの脚力だ。
魔法も試してみる。
「無属性の魔力を集中させて…かめ○め破!」
何か出た!威力が少々物足りないが、練習すれば上がるかもしれない。
「体をゴムに…ゴム○ムの~、ピストル!」
しかし何も起こらなかった。
「剣に風属性の魔力を集めて…風○傷!」
風の刃が飛んで行った!
その後も色々と思い付いたアニメの技を試してみる。
~1時間後~
「ゼェッゼェッ…スーパーサ○ヤ人みたいになる強化魔法で暴れまわるのは、ちょっとやり過ぎだったか?平原がクレーターや地割れで荒れ地になっちまった」
せっせと穴を埋めていく。ほったらかしにしとくと馬車が事故ってまう。
「おーい、ダイスケー!」
この声はセシールだ。
「うわ!?何だこのクレーターは?隕石落としでもやったのか?」
「いや…素手で」
「素手!?どうやって素手で…て、今はそれどころじゃない!大変なんだ」
セシールの持っていた緊急クエストの手配書を見る。
「ワイバーンの大群を撃退せよ?それってさっきから東の空を飛んでるデッカイ鳥の大群か?」
「え?…うわぁぁぁ!?もうそこまで来てる!ダイスケも早く戻るぞ!町の防衛部隊が大型弩で迎撃準備してる」
設備が整っているなら迎撃は簡単だ。だが町に戻っての迎撃だと、少なからず町に被害が出る。ここは打って出るべきだ。
ワイバーン達の中で先行していた1匹が目の前に降り立った。
「いやぁぁぁ!ワイバーンじゃなくてドラゴンだ!」
「ほう?コイツがドラゴンか。丁度良い!」
ドラゴンの背中に飛び乗り、指先から魔法の糸を出し、ドラゴンの手足や翼に絡める。
これでドラゴンはマリオネット人形の様に操れる。
「さあ!俺の言うことを聞け!」
ドラゴンを操り、ワイバーンの群れに向かって飛び立った。
「ちょっ!?ダイスケ?ダイスケー!!」
~ボンベイ平原 上空~
ワイバーンの数は、およそ100匹。
ドラゴンを操り、ワイバーンの群れに突っ込む。
ドラゴンの噛み付きや炎のブレスで次々と倒していく。しかし…
「チッ!1匹1匹は弱いが、数が多すぎる。下から来るぞ!この!?言う事を聞け!」
生きているドラゴンを操っているのだ。から○りサーカスのようにはいかない。
1匹のワイバーンがドラゴンの喉元に噛み付いた。ドラゴンが痛みで暴れ出す。
「この!暴れるな!!…クソッ!翼にも噛み付かれたか。緊急脱出!」
魔法の糸を切り、ドラゴンから飛び降りた。
飛行魔法で飛び回る。その後ろをワイバーン達が追い駆けて来る。
「魔貫光○砲!」
振り返りながら放った魔法の光線がワイバーン達を貫通し、一気に数を減らす。
それでもまだ半分以上残ってる。
再度飛び回り、間合いを開ける。
「月牙天…何!?」
技を放とうとした隙を突かれ、上空からの急降下キックを喰らった。そのまま地面に叩き付けられる。
「痛゛ってー!なんちゃってスーパーサ○ヤ人になってなかったら死んで…うわぁぁぁ!」
ワイバーン達はこちらが態勢を整えるのを待ってくれる筈も無く、次々に急降下キックで襲い掛かってくる。
「ちくしょー!調子に乗って1人で凸るんじゃなかった!!」
全力で走って逃げる。
せめてあと1人、銀髪の侍か戦闘民族の仲間が欲しい。
(力が欲しいか?)
誰かの声が聞こえる。これはテレパシーか?
(欲しければくれてやる。さっさと我を召喚しろ)
「何だか良く分からんが、召喚魔法、発動!誰でも良い。手伝え!」
召喚魔法で呼び出してしまったのは、アイツだった。
「マッスルベアー!?死んだ筈じゃ…」
「トリックだよ」
喋ったのも驚きだが、ツッコミ入れてる暇は無い。
「この数を殺れるのか?」
「朝飯前だ。フロントダブルバイセップス!!」
マッスルベアーがボディビルダーでお馴染みのポージングをする。これが技だったらしく、奴の正面に強烈な衝撃波が巻き起こった。
この衝撃波でワイバーンは全滅した。
「ほう?今のを堪える奴が居るとはな」
1匹だけ残っている。ソイツはさっき操っていたドラゴンだった。
マッスルベアーはジャンプなのか魔法なのか分からないが、飛び立った。
ドラゴンに強烈なボディブローを喰らわし、尻尾を掴んでジャイアントスイング。
遠心力を付けて、そのまま地面に叩き付けた。
見事な空中殺法だ。
「ふん。他愛ない」
マッスルベアーがあっという間に片付けてしまった。
次は俺か?
「そんなに警戒するな。別に殺された恨みは持っちゃいない」
「…どういうことだ?確かにお前は俺が殺した筈だ」
「ああ。あの後、我は神々から命を受け召喚獣になった。これは大変名誉なことだ。もしお前に殺されなかったら、不老だった我は今も死に場所を求めて彷徨っていた事だろう。お前には感謝しているぞ」
結果的に良かったのか?ぶっ殺して感謝されるとは、なんとも奇妙な話だ。
マッスルベアーの体が光に包まれる。
「時間のようだ。今後も手を貸してやる。お前のヘンテコ召喚魔法よりは役に立つから、何時でも呼ぶが良い!…あ!ワイバーンの肉、貰っていくね」
マッスルベアーは帰ってしまった。
ヘンテコ召喚魔法というのは、恐らくドクロの兵士や戦闘ヘリを呼び出す魔法の事だろう。確かにあれよりマッスルベアーの方が戦力になるが…そんな気軽に呼んで良いのか?
というか最後の最後で威厳もクソも無かったぞ。
「…見たぞ」
振り返るとセシールが居た。
「ダイスケ…あのマッスルベアーを召喚獣にしちゃったのか!?そんな危険人物は男爵家の監視下に置かねば!と言うわけでダイスケ、結婚してくれ」
「バカな事言ってないで、帰ってギルドに報告するぞ。…その前に後片付けか」
~ローリーのアパート~
ギルドにワイバーン討伐の報告をして帰宅した。
防衛の配置に着いていた冒険者達からはブーイングの嵐だった。ワイバーンの素材を全てくれてやる事で許して貰えた。
「ただいま~」
「ダ、ダイスケさん!大変です!」
ローリーが大慌てで玄関先まで出て来る。何事だ!?
「わ、私…マッスルベアーを召喚できるようになっちゃいました!!」
「…マジか。俺もだ」
ローリーにマッスルベアーの事を説明する。
「なるほど。マッスルベアーの死体が無くなって大騒ぎになってましたけど、召喚獣化したんですね」
「召喚獣化って良く有るのか?」
「いいえ。そんな頻繁には無いです。もっと珍しいのだと神化と言うのも有ります」
神化?スーパーサ○ヤ人ゴッドみたいになるのか?凄く気になる。
「ところでダイスケさん。地獄行き免除の結果発表っていつですか?」
部屋のカレンダーを見る。
「確か…早ければ明日だ!」
「…だ、大丈夫です!ダイスケさんは厄介者のマッスルベアーを召喚獣にしちゃうくらいの英雄です!きっと大丈夫!仮に地獄行きの不当判決が出たら、私とマッスルベアーで地獄に殴り込みます!!」
「プッ!フハハハハ!!それは心強い。だが気持ちだけで充分だ」
運命の時が迫っているが、不思議と心に不安は無かった。
残り時間 1日




