15話 マッスルベアー討伐戦
〈キャラクター紹介〉
ダレン・スターバックス
オークの冒険者。悪魔によってオークとして転生させられた転生者。
オークらしく悪さをしていたところ、オーガのサチコに見つかり教育的指導をされる。以降は改心し、サチコと共に行動している。
釣りが好きだが、魚は捌けない。毒無効スキルを手に入れて毒魚を食べる事に憧れている。
~冒険者ギルド~
昨晩、シャムネ湖南遺跡を拠点としていたインテリ系ゴブリン達がマッスルベアーに襲撃され壊滅したらしい。
今朝、唯一の生き残りのイケメンゴブリンが、命からがら町に逃げ延びた。
「奴を倒して、部下の無念を晴らしてくれ…頼…む…」
「…イケメン?返事しろ!イケメン!!」
「大丈夫。気を失っただけよ。彼は治療魔法を掛けて病院に運んでおくわ」
イケメンの事はセイラや他の冒険者に任せた。
「いずれ誰かがやる事になっていたマッスルベアー討伐クエスト。ダイスケさん、まさか1人で行くつもりですか!?」
オーガのサチコとオークのダレンは早朝に町を出た。
強そうなゴリラ系亜人達も、南の中立国に拠点を移してしまった。
狼系亜人で強い冒険者が居るらしいが、マッスルは犬系亜人を見ると一目散に逃げてしまう。狼なんてもっとダメだろう。
猫系は…セシールが付いて来る気満々だったが、男爵家の執事達に連れ帰ってもらった。
「今、この町で奴と戦えるのは俺以外に居ないだろ?俺も奴とまともに戦ったら勝ち目はないが…」
「私も行きます!」
聞き覚えの有る声に振り返る。声の主はローリーだった。
冒険者支給品の白いYシャツに黒のズボン。その上に茶色の戦闘用コートを着ている。武器は魔道士の杖。
「ローリー!?君は戦えるのか?」
「戦闘は得意では有りませんが、サポート系の魔法は任せてください。こう見えても、元冒険者ですから」
ローリーは犬系と猫系のハーフ。耳は猫。尻尾は犬だがコートで隠れている。ローリーを見たマッスルベアーが逃げ出す事は無いだろう。
だが連れて行くには抵抗がある。
「データも集まってます。マッスルベアーを倒す秘策も持ってますよ」
「…分かった。俺とローリーで行く。だがローリー、無茶はするな。危なくなったら俺の転移魔法で強制的にでも帰って貰うからな」
~ギルド内の売店~
「…ローリー。コレは?」
「対マッスルベアー用の罠に必要なアイテムです。『大型樽爆弾』と『火炎瓶』に『足止めワイヤー』それから『気配消し香水』『発煙筒』等です」
アイテムが有れば優位に立てるだろう。しかし、この量…俺達は今から戦争に行くんだろうか?店ごと買い取る勢いだ。
「ローリー。差し支えなければ教えて欲しいんだが…冒険者を辞めた理由は?」
「…何故か私がクエストに出ると、報酬金よりアイテム代の方が高くて赤字になってしまってて」
「あ~、やっぱり…」
必要最小限のアイテムだけに絞り込み、出発した。
~シャムネ湖 南遺跡~
マッスルベアーはボディビルダーのようにポージングをしていた。なんともシュールだ。
「ダイスケさん、準備は良いですか?」
「ああ。樽爆弾、設置完了だ。」
気配消し香水のお陰で、爆弾の設置には気付かれていない。
「行くぞ…せーのっ!」
物陰から2人同時に飛び出す。
「連続魔法、行きます!攻撃力低下!防御力低下!速度低下!」
ローリーの趣味は読書だ。休暇の間に、マッスルベアーに関する書物を読み耽っていたらしい。
更に俺やサチコなどの戦闘記録もまとめ、マッスルベアーのスキルを見破った。
マッスルベアーは相手の強化魔法をコピーして使う。
俺の高速化魔法、サチコの巨大化魔法を奴が使えたのも、このコピー能力のお陰だ。
『強化がコピーされるなら、弱体化魔法を使えば良い』という結論に至った。
ローリーの様子がおかしい。
「ローリー!?まさか…」
「やっぱり弱体化魔法もコピーして返されました。けど予想の範囲内です!」
ローリーの使った弱体化魔法は敵単体狙いだ。マッスルが返した弱体化魔法は全てローリーに掛かり、俺には来ていない。
「筋力低下!はぁっはぁ、それで最後!命中率低下!ダイスケさん、後は頼みます!」
「任された!」
マッスルは弱体化して、今の俺と強さは五分五分くらいだ。
攻撃魔法はコピーしない筈だが、念のため魔法は使わず金棒で戦う。奴はスピードが低下しているが、それでも必死に金棒の攻撃を防ぐ。
「くっ!?弱体化してもまだこんなに戦えるのか」
一進一退の攻防が続く。この殴り合いは先に集中力が切れた方が負ける。全集中だ!!
「っ!?今だ!!」
マッスルの見せた一瞬の隙を突いて収納魔法から剣を抜き、そのまま一文字に斬る。俺流の居合い斬りだ。
だが剣は空を斬った。その隙は奴のフェイントだった。
剣の一撃が大振りになってしまい、大きな隙が生まれた。そこにマッスルの強烈なラリアットが炸裂する。この一撃で5m程吹っ飛ばされてしまった。
「ダイスケさん!?」
「痛っ…大丈夫だ。予定通り誘導して、結果的に安全地帯まで避難できた」
殴り合い中に少しずつ後退し、マッスルを遺跡のど真ん中に誘い込んだ。この下は地下室が有る。そして周囲には樽爆弾が設置されている。
「これで終わりだ!」
火炎瓶に火を着けて樽爆弾に投げ付ける。
樽爆弾は次々に誘爆。この爆発で遺跡が崩壊し、マッスルは遺跡の崩壊に巻き込まれた。
遺跡にポッカリ開いた穴を覗き込む。胸から下が遺跡の崩壊に飲み込まれているマッスルを確認。息の根は止まっている。
「ダイスケさん。マッスルベアーは?」
フラフラのローリー。弱体化返しをされつつも魔法を使い続けたのが応えたようだ。
「奴は倒した。君のお陰だよ」
礼を言った直後、ローリーが意識を失い倒れ込む。慌てて彼女を受け止めた。
「ローリー!?しっかり…酷い熱だ。待ってろ、直ぐに町に戻る。転移魔法!」
~ガルシアの町 冒険者ギルド休憩室~
「ん~。あれ?ここは?」
「ローリー君、目が覚めましたかな?」
「ノアール叔父さん。えっと…何が有ったんですか?」
「ヘラクレス症で倒れたのを、ダイスケ君が大慌てで連れて来たんですよ。もう泣きながら『ローリーが…誰かローリーを助けてくれ!』て大声で助けを呼んでて、てっきり致命傷を負ってしまったかと思いましたよ」
「ヘラクレス症…確か急激なレベルアップに体がついて来なくて体調不良になるやつですね。マッスルベアーを倒したらヘラクレス症になるかもしれなかったのに…私とした事が、失念してました」
「いやいや、そんなに落ち込まずとも。姪が無事で何より」
「ところで、ダイスケさんは?」
「そこのソファで寝てますよ。ローリー君が起きるまで待つと言って聞かなくて…」
話し声で目が覚めた。
「ローリー!無事か!?」
目が覚めたローリーは元気そうだ。何か良く分からないが、負傷したわけでは無かったらしい。
「ところでノアール叔…ノアールさん。報酬を受け取りたいのですが…」
ノアールが持って来た報酬金は10万ゼニだった。
「…あれ?少なくないですか?」
「ゲスト冒険者と登録抹消した元冒険者ですから、正規冒険者の3分の1ですよ」
ローリーが頭を抱え込む。全額貰えると思ってたようだ。しかも樽爆弾等の購入で13万ゼニ使って居る。3万ゼニの赤字だ。
「それと、これはダイスケさんの別クエストの報酬金です」
「別クエスト?受けてないぞ?」
「手続きは済んでます。クエストの書類が間に合わなかったので申し訳ない」
ノアールから渡されたのは『要人警護クエスト』の達成済み書類と10万ゼニだった。
報酬が減額されるのを知ってたノアールの計らいらしい。有難く受け取る事にした。
残り時間 2日




