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13話 行方不明者捜索クエスト 前編

〈キャラクター紹介〉

セイラ・イノウエ

 冒険者で回復魔法の達人。

 元々は病院で看護師をしていたが、より多くの命を救うため冒険者となり、あちこち駆け回る日々を送っている。

 ステータスを回復魔法に全振りしたので戦闘力は皆無。

 実は転生者だがトラブルに巻き込まれたくないので現地人のフリをしている。

~中央広場~

 朝から何やら騒がしい。

 何か事件かと思って様子を見に行くと、広場に馬車が停まっており、その周りに人が集まっていた。

 どうやら旅の行商人(キャラバンと呼ぶらしい)が、この町に立ち寄って珍しい品々を販売しているらしい。


「オヤジ。このボトルは何が入ってるんだ?『危険』って書いてあるが…」

「あん?ああ!気を付けろ!それは『燃える水』だ。転生者達は『ガスリン』…いや『ガソリン』だったか?そんな名前で呼んでる物だ」

 ガソリンだと!?手に入れたオフロードバイクがガス欠で困っていた。これは欲しい!

 リッター500ゼニで、36L購入した。ガソリンの作り方は教えて貰えなかった。

 因みに、この世界の住民達はガソリンで火炎瓶を作るらしい。モンスターの撃退に大いに役立つんだとか。


~冒険者ギルド~

 クエストボードを見る。今日は変な依頼が多い。

「ワイルドベアー達が墓地で相撲をしてて墓参りに行けないってどんな状況だ?絶対イタズラだろ??」

 真面目な依頼もあった。

「行方不明者の捜索?場所はシェパード山麓の村?うん?シェパード山って確か北の街道を…」


「あ!ダイスケ。昨日はありがとう」

「ん?なんだセシールか」

「なんだって何だ!?」

 考え事をしていたので素っ気ない態度を取ってしまった。

「あ!御主人様って呼ばないといけないのか?」

「それはしなくて良い。もう主人とペットごっこは飽きた。ちょっと考え事を…」


「このクエストがどーかしたのか?」

 いつだったか北の街道で、夜に大急ぎで南下している馬車を見掛けた。

 その時は特に何も考えなかったが、今になって思えば、あれは警察や憲兵が職務質問するべき怪しい馬車だ。

「セシール。北にゴブリンの巣って、俺が見付けた他にも有るのか?」

「そんなの分からないぞ。『ゴブリンの巣』て看板が立ってるわけじゃないし。一応、縄張りとか有るみたいだから、密集はしてないだろうけど」

 行方不明者がゴブリンに連れて行かれた可能性も捨てきれないのか…


 休憩スペースで地図を広げる。

「村がここで、馬車が居たのがここ。…うん?あの馬車、どこから来たんだ?村の他に町や村は無し。山を越えて来たにしては、乗ってた人の服装が軽装だった」

「馬車?北の街道を通ってきたら、普通はこの町に立ち寄るはずだ。でもここ最近、馬車なんて来てないぞ。今日のキャラバンが3週間ぶり位だ」

「セシール。お前、家出してたから知らないだろ?」

「知ってるよ!だって馬車が来たら密輸防止のために記録を録ってて、その記録の管理は男爵家うちの仕事だから!」

 なんと!?つまりセシールの言ってる事は正しい。あの馬車は来ていない。


 昼間なら、街道を逸れて町を通り過ぎても別におかしくは無いだろう。

 だが、あれは夜だった。この辺は夜行性のモンスターも多く、一刻も早く安全な町に着いて休みたいはず。

 よほど大急ぎで運ぶ品物が有ったのか、見られたくない品物だったのか…怪しい。怪し過ぎる。


「なるほど。確かに怪しいな」

「うん?セシールもその結論か?」

「いや、ダイスケの独り言を聞いてた」

 独り言を言ってたのか?全くの無意識だった。

「因みに、どの辺から聞いてた?」

「え?…『セシール可愛い!大好きだ!結婚したい!!』て所からだ(照)」

「そんな事は言ってないだろ!!何が(照)だ!」

「『昨日の件を解決してやったんだ。代金は体で払え』とも言ってた」

 近くで休憩していたゴリラ系亜人の冒険者が勢い良く立ち上がり、イスがガタッと音を立てる。

「だから言ってないだろ!!ほら、勘違いでメッチャ睨まれてるし!」

 ロン毛のゴリラ系が睨んでくる。やたらと恐怖を感じると思ったら、アイツの目が瞬きしてないからだ。


「クエストの受付が完了しました。このクエストは複数パーティが参加してます。報酬は早い者勝ちですが、どうぞ焦らずお気を付けて」

 発情期休暇中のローリーに代わり、受付嬢はエルフだ。

 名前を聞いたり、ちょっと世間話でもと思ったが、ロン毛の睨み付ける攻撃がかなり怖いので、さっさとギルドを出た。



~北門付近~

 町を出て、収納魔法からバイクとガソリンを取り出す。

 町でこんな物を出すと

「うおぉ!何だこれ!?鉄の馬か?」

 そう。こうなるわけで…て

「セシール!?お前、何で付いて来た?しかも鎧なんか着ちゃって」

「そりゃあ、一緒に付いて行くからに決まってるだろ?」

 そんなドヤ顔で言われても…

「俺1人で行く。手助けは不要だ。お前は鎧よりドレスの方が似合ってるぞ」

「なっ!?そんな事を言って、私にドレスを着せてナニをする気だ!?やっぱり両手を鎖で繋いで地下牢に閉じ込めて、夜になったらお嫁に行けなくなるような事を…このヘンタイ!!」

「しないから!て言うか内容が具体的だな!?」

 セシールの悪乗りに付き合っていると日が暮れてしまう。早々と給油作業を終らせる。


 バイクに跨がる。セシールも勝手にタンデムシートに跨がってしまう。

「おおお!?足…車輪が二本しかないから、馬や馬車とは違う怖さが有るな」

 これは、もう絶対に付いて来るやつだ。来るなと行っても無駄だろう。

 諦めてバイクのエンジンを掛け、馬車を探しに走り出した。


~北の街道~

「うひゃー!気持ち良いな!私もこの鉄の馬を1頭欲しいなー」

 意外にもセシールはバイクに直ぐ慣れた。


「お!ここだ。この道の脇の溝に馬車の車輪がハマってたんだ」

 バイクを降りて確認する。

 残念ながら、昨日の夕立で車輪の後は殆ど消えていた。

「車輪の後は追えそうにないな…どうしたものか」

 セシールがわずかに残ってる車輪の跡を見て何かを考え込む。

「ふーん…車輪の幅が普通のより5ミリ太い。外国製、たぶん王国のやつだ。深さからして大きな荷物は乗ってない」

 まるで探偵のようなセシール。ちょっと頼もしくなってきた。

「…そんな期待に満ちた目で見つめても行き先は分からないぞ。ダイスケの方こそ、何か便利な魔法でも使えないのか?」

 魔道書を読んで気付いたが、俺の魔法はシュワルツ君直伝の地獄式で、この世界の理から外れている。だが万能じゃない。

「そんな便利な魔法が出来ればとっくに…うわっ!?」

 何かを踏んで滑って転び、セシールの胸に頭からダイブしてしまう。胸と言ってもセシールは鎧を着ており、ゴツンと鈍い音がした。

 セシールも踏ん張りきれず、2人とも倒れてしまった。


「ダ、ダイスケ!?その…こういうのは外じゃなくてホテルとかで(照)」

「違う!誤解だ!何か踏んで滑ったんだ」

 『何か』を拾う。土を被ってて気付かなかったが、これは手書きの地図だ。雨に濡れても破れない、上質な紙で出来ている。

「こんな上質な紙は王国製だな。…町外れに✕印が付いてる?」

 さっきから話に出てくる王国ってのは技術力の有る国だろうか?

 紙の端っこを少し破ってみる。

「丈夫な紙だが破れるって事は、落としたのは割りと最近だな。馬車の奴等だとすれば、ここに居るかもしれない…あれ?セシール?」

 セシールは既にバイクのタンデムシートに乗っていた。

「ダイスケ!早く行くぞ!」

「全く…先にタンデムに乗られると俺が乗りにくいんだけどな」

 地図を頼りに、馬車を探しに向かった。


 残り時間 4日

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