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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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番外編5 ~女神様 part4~

 絶体絶命な状態の私の前にサクラが立ちふさがる。

 サクラには助けられてばかりで、正直もう頭が上がらない。


 そしてそのまま言い争いを始めるサクラとステラ。

 私の事は完全に置いてけぼりである。

 言い争いを止めるべきなのだろうが、人付き合いが苦手な私には難易度が高すぎた。どう割り込んでいけばいいのかがまったくわからない。


 結局、言い争いを止めたのは人間災害だった。

 止めるために、二人に拘束魔法を使っていたようだったが、その術式の複雑さに驚愕した。

 体だけでなく、魔力の流れすら拘束する仕様になっていた。

 ある程度の魔力の強さがなければ、魔力の流れの拘束は解けないし、ある程度の魔力操作の技量がなければ、拘束魔法の核を見つけて解呪できないだろう。

 こんなのを解呪できるのは、高い魔力と高い魔力操作技術を持ったごく一部だけだろう。


 通常時なら私も解呪できるだろうが、今受けたら間違いなく何もできずに窒息死するだろう。

 私は、ひたすらに私が標的にならない事を祈り続けた。

 呼吸が荒くなるのが自分でもわかった。とにかくそれくらいは必死だった。


 そうこうしている内に、話題は私が元々いた世界の話になった。


「前にキューちゃんが言っていた、エフィさんが国をいくつか滅ぼして、圧制を敷いていた、という世界の事でしょうか?」


 羽の生えた少女が放ったこの言葉が全てを物語っていた。


 やはり私が行ってきた事は、そう受け止められていたのだ。

 私はただ、戦争の無い平和な国が作りたかっただけなのに……戦争によって不幸になる子供のいない優しい世界を作りたかっただけなのに……

 私はどうすればよかったのだろう?

 戦争の絶えない世界を見て見ぬふりして平凡に暮らすべきだったのだろうか?

 いや……おそらく、そんな事はできなかっただろう。

 結局のところ『争いの無い世界にしたい!』という私の自己満足が招いた結果なのだ。

 このステラという少女も、私の自己満足に巻き込まれてしまった被害者なのだろう。


「ステラさん、食べる物や寝る場所にすごく苦労してたみたいなんですけど……エフィさんは大丈夫だったんですか?」


 思考に浸っていたところに、突然質問が飛んできた。


「その辺の事に抜かりはないよ。石をパンに、水を葡萄酒に変える魔法を使用していたからね。飢える事はなかったよ」


 咄嗟にいつもの口調で答える。


「味に飽きたら、店で買って食べたりもしていたよ『会計を済ませた』と思わせる暗示を、魔法でブーストしてかけていたので、まず失敗する事はなかったね。寝る場所も同様に、適当なホテルで同じ魔法を使って寝泊まりさせてもらっていたよ」


 自分で言っていて、とんでもなく無計画に世界間移動したと実感して自己嫌悪に陥る。


「……確信いたしました。やはり女神様はこの世に存在してはいけない人です!!」


 案の定ステラに怒られた。

 何も言い返せない、というか悪い事してるのは自覚しているんだ……反省はしてるんで、そんなに怒らないでほしい。


 というか、ステラが私に対してここまで憎しみの感情をぶつけてくるのは、おそらくはアノ浮遊猫に騙されているのもあるのだろう。

 アノ猫は、真実に混じって多少の嘘を入れて話をする。

 何を言われたのかはわからないが、冷静に考えれば、元の世界に帰れなくなってまで私を殺しに来る意味がわからない。

 ひょっとして、元の世界に戻れなくなる可能性を聞かされていないのか?


「ステラ君といったかな?少し落ち着こうじゃないか。私を殺して、キミに何かメリットはあるのかい?その魔力では、私を殺した後に、世界間移動のゲートを開く事は不可能なのではないのかな?元の世界に戻らない事が望みなのかな?」


 誰だって、わけのわからない世界で朽ちたくはないだろう。


「先程の発言を取り消すというのなら、今ならまだ許してあげてもいい。キミを元の世界に戻す手助けもしてあげてもいい。どうだろう……あぐっ!!?」


 話している途中で攻撃された。

 ……無銭飲食していた事を聞かなかった事にしてほしい、という願望を入れ込んだのはやはり失敗だったか。

 ……忘れてほしかったのに。


 私が攻撃されたのを見て、再びサクラが、私を守るように立ちふさがる。

 そして再びの言い争い。

 こんなに長い間会話していられるなんて……実はこの二人すごい仲がいいんじゃないだろうか?

 現に『誰にも言わないで』と言っておいた、私の魔力が不調な事をあっさりとバラされてるし……まぁ、でもそれは先程までの私を見ていれば誰でも気付くかもしれないが……いや、でも、それでも一応は約束してたんだしさぁ……


 そんな事を考えていたら、話題は人間災害の事に変わっていた。


 ん?いや、待って。人間災害当人、ステラのすぐ後ろにいるよ!?


 話の流れを聞いていると、他の皆は、誰が人間災害なのかは知っているようだった。

 知っているうえで、当人をおちょくるような発言を繰り返していた。

 この連中は人間災害の恐ろしさを本当に理解しているのだろうか?

 そして、ふざけた口調のままステラに「人間災害もやっつける?」みたいな質問をし出す。

 いやいや、普通に考えてその程度の魔力じゃ何もできないまま瞬殺され……


「そうですね……フーリンさんには『接触は避けて、出会ってしまっても逃げる事を最優先に考えろ』と言われていますが、いずれは力をつけて成敗したいと思っております」


 ステラ!後ろ、後ろーー!!?


「ですが……今は女神様です。力を失っているなら好都合です。今のうちに息の根を止めておきます」


 突然話題を私に戻されて焦る。

 ステラの発言にヒヤヒヤしている場合ではなかったようだ。


 再度サクラが私を守ってくれる。

 もう本当に頭が上がらない。


 また言い争いで終わるのかと思っていたが、今回はついに両者ともに魔法を放った。

 とはいっても、サクラの魔力はそこそこ強い。ステラの魔力程度では話にならない。

 結果は手加減した状態のサクラに圧倒されて終わった。


「ステラさん!いったん落ち着きましょう?少し話し合いをしませんか?事情を詳しく教えていただければ、何かしら力になれるかもしれませんし!」


「う~ん……アタシ個人としては、どっちの味方ってのはないんだけど、魔王軍から給料もらってる立場上、エフィさんを守らないとならいしだし……あと、人殺しを黙って見てるほどサイコパスな神経はしてないから、コッチに付かせてもらうよ」


 人間災害の近くにいた二人が、サクラの隣へと移動し、ステラと敵対するような立ち位置で止まる。


 サクラ一人にすら歯が立たないのに、この状況ではステラはどうする事もできないだろう。

 羽の生えた少女はサクラと同程度の魔力を持っているし、金髪の少女は……あれ?

 この金髪の少女、強者っぽい発言してるけど魔力無くない?どういう事?

 ひょっとして人間災害の友人だから強気なのだろうか?

 まぁそれはそうだ。人間災害の友人に手を出して、人間災害の怒りを買ってしまったら確実に殺される未来しかないのだから……

 と、なると人間災害もステラと敵対する事になるのだろう。

 それはさすがにステラが不憫に思えてくる。


 ふと、人間災害に視線を向ける。


 そこには、私を上空から突き落とした時と同じ、アノ笑みを浮かべた人間災害の姿が映った。


 ああ……もう、嫌な予感しかしない……


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