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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第二十一話 恐ろしい念話

 他の連中のはどうか知らないが、私のサーチ魔法は非常に便利である。

 効果範囲は、地球上の全てを網羅しており、人だけではなく、物ですら、少しでも魔力があれば、感知できる。

 実際に目で見ているわけではないけれど、目で見ているように、どの魔力反応が何なのかがわかる。

 意識すれば、任意の反応を見つける事ができるのだ。まぁ、人ごみ中から知人を見つけるような感じで、人ごみにいる全員の顔を認識しているわけではなく「アイツはどこだ?」と意識する事で、その人ごみから意中の人がひょっこり出てくるような感覚でである。

 人ごみ一人一人を認識してたら脳がパンクするだろうし、そうならないようにするために、私の体が自己防衛のために勝手に、そういう仕様にしたのかもしれんけど……

 そんなわけで、サーチ魔法さえ使用していれば、私は基本何をしてても、意中の人達がどこにいるのかは把握できる。


 そして現在は、ステラちゃんの動向を常に見張っている。

 ステラちゃんが、美咲・サクラ組とブッキングしそうになったら、いつでも転移できる体制を維持している。

 例え、ノゾミちゃんちで呑気に飯食べていたとしても、そうは見えなくても警戒は続いている。

 ……それなのに。


「何で裕美さんしかいないの?魔王様はいないの?」


 私は今、予想外にも現れたミキちゃんに絡まれていた……


 そりゃあ昨日、魔王の姿で、この店を利用してって宣伝はしたよ。

 『私の行きつけのお店なんだ』とも言ったよ。

 でもさぁ、いくら魔王でも2日連続で来ないだろう、って発想はないのかよ?


 あ、いや……実際のところは2日連続で来てるんだけどさぁ……


「あのなぁ……昨日ウチの魔王がミキちゃんに何言ったか知らんけど、毎日ココに食いに来てるわけじゃないぞ」


 まぁ、何言ったのかは、発言した当人なんだからよく知ってるんだけど、とりあえず知らないふりをして適当に誤魔化す。


『裕美さん、ほぼ毎日のようにウチ来てんじゃねぇッスか?』


 まさかの別方向からの念話でのツッコミが入る。

 そりゃあ、飯食わなくても、ちょくちょくノゾミちゃんちには来てるけど、ややこしくなるから、その辺は聞き流せよ!?


「『ウチの』?……何、魔王様を独占してるみたいな言い方してるのよ。そんな風に魔王様独占しようとしてると、裕美さんファンクラブから脱退させるわよ」


 ソレ入った記憶がないのですが?


『え?裕美さん、自分のファンクラブに自分で入会してるんスか!?それはちょっと引くッスよ……』


 こっちはコッチで鬱陶しい!いちいち念話挟み込んでくんなや!!


「っていうか『毎日ココに食いに来てるわけじゃない』とか言いつつ、裕美さんは2日連続で来てるじゃない?」


 鋭いツッコミだなミキちゃん。


「私は昨日、食う前に追い出されてるからいいんだよ」


 まぁ実際は食ったけどね。普通に2日連続で食いに来てるんだけどね。


『昨日、しっかり完食してったじゃねぇッスか。しかもその後、私の部屋で、私が大事に取っておいたアイスもデザートとか言って勝手に食ってったじゃねぇッスか』


 だから念話いちいち鬱陶しいわ!!

 あれだろ?実は念話で茶々入れるの楽しんでるだろ?


「で?そもそもミキちゃんは、何のために、来てるかどうかもわからない魔王を探しに来たんだ?」


 全然話が進まないので、とりあえず話の軌道修正をする。


「それを裕美さんに言ってどうすんのよ?魔王様連れてきてくれんの?」


 むっかつくなぁオイ。

 そりゃあ、そんな面倒臭い事なんてしねぇけどさぁ……


『やっぱ裕美さん学校でいじめられてんじゃねぇッスか?いや、違うッスね……これは、まったく信用されてないやつッスね。何をやったらここまで不信感抱かれるんスか?』


 うるせぇよ!知らねぇよ!何もやってねぇよ!たぶん。


「今、魔王は色々と忙しいから、連れて来るのは無理だろうけど、伝言くらいだったらしてやってもいいと思ったんだけどな」


「本当に!?それならそうと早く言ってよ」


 手のひら返し早ぇなオイ。


「裕美さんの事だから、要件言ってもいつも通り『ふ~ん……で?』とかいう反応するかと思ってたけど、今日はどうしたの?」


『ああ、毎回そんな反応じゃ信頼もされないッスね。まぁ裕美さんらしいっちゃらしいッスね』


 なるほど、何もやってねぇってのが問題だったわけね。ここにきてまさかの新事実が発覚したわ。


「まぁ裕美さんの機嫌が良いのはどうでもいいとして……」


 どうでもいいのかよ!?もっと私に興味持とうよ!?一応中身はアンタの好きな魔王様だよ!?


「公式ファンクラブホームページのトップページ用の写真を撮らせてもらおうと思ってたのよ。ほら、今使ってるやつって、一応は戦闘中のやつを望遠で撮影したやつだから、トップページを飾るのにはちょっと合ってない気がするのよね」


「ああ、そういえば写真の端っこの方に、銀髪の魔法少女が微妙な感じで映り込んでたな」


 私とミキちゃんの会話を聞いていたノゾミちゃんが、座っていた椅子から盛大にズッコケる。


「ちょ、どうしたの急に?大丈夫?」


「だ、大丈夫ッス!気にしないで話続けてくださいッス!」


 事情を知らないミキちゃんが、椅子から転げ落ちたノゾミちゃんを心配して声をかける。ノゾミちゃんもすぐに椅子を起こして、ゆっくりと座りなおす。


『ど、どういう事ッスか!?銀髪って事は私ッスよね?』


 大混乱なノゾミちゃん。ミキちゃんの手前、見た目は冷静そうな表情で黙り込んるけど、内心の焦りっぷりが面白ぇな。


『そりゃあウチの学校に乗り込んできたノゾミちゃんをボコってた時の写真だし。映り込んでても何も不思議はないだろ?』


『は?裕美さんの学校にカチコミした記憶なんて無いんスけど!?』


 何言ってんだコイツ?

 ……あ、そうか、あの時ボコったのって、再生魔法使って消滅しちゃった方のノゾミちゃんか。そりゃあ今のノゾミちゃんは記憶にないわな。

 まぁ、でも面白いから、そんな事をわざわざ教えてあげたりはしないけどな。


『疑うなら見てみろよ。魔王公式ファンクラブで検索かければ出てくるだろうし』


 凄まじい勢いでスマホを取り出して画面を凝視しはじめるノゾミちゃん。

 ……っと、念話に夢中になっててミキちゃんをほったらかしにしてたわ。


「まぁとりあえず、魔王単品で映ってる写真な。そういう要望があるって事は伝えといてや……」


「なんじゃコレぇ!!?どっから見ても私じゃねぇッスかコレ!!?」


 声出てるぞノゾミちゃん。念話はどうした念話は?動揺しすぎだよ。


「え?何?いきなりどうしたのこの子?」


 案の定というか何というか、ミキちゃんがノゾミちゃんに不審な目を向ける。


「ほっといてやれミキちゃん。そいつ頭がちょっとアレな子なんだよ」


 サイコパスだしな。


『ちょっと動揺しただけッス。頭がアレってなんスか?わかってたッスけど失礼な人ッスね』


 あ、復活した。まぁいいや、とりあえず無視で。


「まぁともかく写真な。魔王がOK出したら幸にでも持たせておいてやるよ」


「本当に!いやぁ話してみるもんね。裕美さんがこんなに協力してくれるなんて思ってもみなかったわ」


 本当に、私を今までどんな目で見てたんだよ?


『その、持たせるべき幸さん、今現在お亡くなりになってる……の……あ、アレ……?』


 ノゾミちゃんからの念話が弱くなってきたと思った瞬間、目の前に座っているノゾミちゃんが、食べ終わってスープだけが残ったラーメンの器の中に顔面を突っ込む。


「ちょ!?今度は何!?何なのこの子!?」


 動揺するミキちゃん。

 ノゾミちゃんをよく見ると、髪の色が銀色になっている。って事は変身魔法が解けてるなコレ。そしてピクリとも動かない。

 あ、コレやばいやつじゃね?

 私はノゾミちゃんの髪を掴むと、ラーメンの器から顔を引き抜き、そのまま魔力を若干ノゾミちゃんの体に流し込む。


『助かったッス。危うくラーメンのスープに殺されるところだったッス……』


 嫌な死因だなオイ。魔力切れで動けなくなったせいで、ラーメンのスープで溺死した魔法少女とか歴史上初だったんじゃね?


『念話は意外と魔力食うから、多用すんなよ』


『申し訳ねぇッス』


 本当にわかってんのかコイツ?ただでさえ魔力総量そんなに多くなくて燃費悪いのに、常時変身魔法使ってるせいで、さらに燃費最悪状態な事理解してんのか?


 そして、可哀想な子を見るような表情をするミキちゃん。

 一瞬だけ、ノゾミちゃんの髪が銀髪になったのは、ゴタゴタしてたせいで見えてなかったっぽいな。


「まぁ……裕美さんの知り合いだもんね……うん」


 何やらつぶやいて、妙に納得したような表情をするミキちゃん。


 ちょっと待て。

 ソレどういう理屈だよ?

 何で納得してんだよ?


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