第二十話 サイコパスコミュ
「そりゃあ、やってる行為や言動は、ただのサイコパスっすからね。ステラさんの反応は普通だと思うッスよ」
「サ……サイコ……パスって、マジでか?」
昼飯ついでにノゾミちゃんチで、今日の出来事を報告……というか、愚痴る。
結果としては、サイコパスなノゾミちゃんにサイコパス扱いされるという、ブーメラン芸を見せられる事になった。
「自分がまともな人間だと思ってたんスか裕美さん?少しは自分を客観視できないと、そのうち痛い目みる可能性があるッスよ」
オマエモナー。
サイコパスは自覚症状がないからたちが悪いんだよな……ってもしかしてワタシモカー!?
「まぁ裕美さんに人としての道徳を説いたところで無駄なのはわかってるんで、その辺は置いといて……この後はどうするつもりッスか?」
何をサラッと、その辺に置いておいたらマズイものを置いた!?
「正直どうしようか迷ってんだよなぁ……コッソリとステラちゃんを見守りつつ、適度に手助けしてやるべきか、言われた通り、本当に手を引いて何もしないか……」
手を引いた場合、どう考えてもステラちゃんじゃサクラや美咲には勝てないし、私がいない事でヴィグルとポチも戦列に加われば、間違いなくフルボッコされる未来しか想像できない。
「……そこで真っ先に『幸さんを蘇生させてあげる』って選択肢が出てこないから、ステラさんにドン引きされて逃げられたって理解してるッスか?」
すまん幸。その選択肢はガチで入れてなかったわ。
でも、ステラちゃんが私から離れていった理由そんな事じゃないだろ……え?違うよね?
「いいんだよ幸は。どうせ、いつ蘇生させても問題ねぇんだから」
とりあえず『幸の事忘れてたわけじゃないよ。優先順位が低かっただけだよ』アピールはしておく。
「とにかく、私はどうしたらいいと思うよ?その辺も相談したくてノゾミちゃんに話してんだよ」
「すげぇ他力本願ッスね……できれば私は巻き込まれたくないんスけど」
おうよ!他力本願で何が悪い。後から選択をミスった事に気が付いても、それを他人のせいにできるなんて最高じゃん。責任も半減だし「私悪くないし~」とか平気で言えるしな。
「何か今、すげぇ悪い顔してたッスよ……」
「気のせいだろ」
意外と鋭いなノゾミちゃん。
「で?ノゾミちゃんが私の立場だったらどうするよ?」
「ん~……一度はステラさんの味方するって決めたんでしたら、貫き通すべきじゃねッスか?」
何か体育会系的な感じだな。
「っていうか、そのノリで魔王軍全滅させちゃえばいいんじゃねッスか?それで万事解決ッスよ」
「うわ……他人事だと思って、超適当だなオイ」
そんな事したら、後で蘇生魔法かける私が過労死するだろ。
「実際、他人事ッスから。裕美さんがやらかしても私関係ないですし、偶然うまくいったら私のアドバイスのおかげ、って言えるッスからね。正直私にとってはどうでもいい事ッスから適当でいいんスよ」
ダメだ……今頃気付いたけど、コイツの思考回路は私と似てるせいで、全然役に立たない。認めたくはないけど、サイコパス同士似た思考なのか?
「でも、実際のところ、既に幸さんの事殺っちゃったんスから、裕美さんの性格上、もう今更あとには引けないんじゃねぇッスか?」
ん?私の性格上?どういうこっちゃ?
「裕美さん、今から美咲さん達のとこ行って『ごめんね。すぐに幸復活させるから許してね』とか言えるッスか?」
あ、そりゃ無理だわ。そんな、自分から負けを宣言するような屈辱的な事できないわ。
ってか、そんな事言いに戻ったら、間違いなくサクラあたりはブチキレるだろうしな。
まぁサクラがキレて襲い掛かってきても返り討ちにするだけなんだけど、それはそれで何かバツが悪い。
「そんなわけで、裕美さんに残された道なんて、もう完全に悪役に徹するっていう行為しか残ってないと思うんスよね」
いかれたサイコパスなノゾミちゃんに、まともな意見もらうとか、何とも複雑な気分だ……
「っていうか、裕美さん『魔王』なんスから『悪役』でいいんじゃねッスか?」
ごもっとも。
「そもそも、ステラさんとの契約?みたいなのも、もう無効になってるんスよね?だったら、裕美さん提案のゲームも無効みたいなもんなんスから、そんななかでもステラさんの手助けするっていうんでしたら、あのエフィさんって人を直接裕美さんが殺っちゃってもいいんじゃねッスか?」
いや、私まだ、ステラちゃんの手助けを続けるかどうか判断してねぇんだけど。
ノゾミちゃんのなかだと、手助けする事継続で確定してる感じだな。これで「手助け続けないよ」とか言おうものなら「は?一度決めた事を反故にするんすか?それって人としてどうなんスか?あ、魔王だから関係ないんスね?やっぱ裕美さんサイコパスっすね」とかボロクソに言われる事が容易に想像できるな……
「でもなぁ……ステラちゃん、中二病さんを直接倒したそうだったから、私がしゃしゃり出たところで……」
「ステラさんの実力じゃ、エフィさんにたどり着く前に、サクラさんと美咲さんに殺されてお終いッスよ。まさか見殺しにするんスか?やっぱ裕美さんサイコパスっすね」
私のセリフ食い気味にきたうえに、予想通りボロクソ言われたし。
ってか何で、そんなに私をサイコパス扱いしたいんだよ!?アレか?サイコパス仲間が欲しいのか?だったら私を巻き込まないで、SNSでそういうコミュでも作って仲間募集してろよ。
……いや、それで大量の仲間が集まってきても嫌だ、っていうか怖いけど。
「っていうか、ステラさんがどうこう言う前に、裕美さんエフィさんの事、既に殺人未遂してるじゃねえッスか。むしろ未遂で済んだのが不思議なくらいに、明確な殺意を持って行動してたッスよね?」
あ、うん、言われてみれば確かにそうだ。
そのせいで中二病さん心的外傷負ってるしね。
「裕美さんが考えるゲームなんて、どうせすぐ破綻するんスから、ステラさんがエフィさんを倒すっていうルールにこだわってないで、もう、とっととこの件解決して、ゆったりと冬休み過ごし方がいいんじゃねッスか?」
いや、別にゲームにこだわってるわけじゃねぇけどさぁ……
でもまぁ、もう色々と頭使うのも面倒臭くなってきたんで、残った冬休み期間をゆっくり過ごすっていうのには賛成したい気分にはなってきたな。
「そうだな……んじゃあ、いっちょ魔王として悪役に徹してみるか」
決意を新たにする。
もうグダグダと迷っているのも面倒臭い。
そうと決まれば、やる事は一つ!
「おばちゃーーん!肉野菜定食一つね!」
さっきから腹減ってしょうがなかったんだよね。
まぁともかく、ノゾミちゃんに話してよかったかもな。だいぶスッキリした。ノゾミちゃんに何かお礼したい気分だよ。
「あ、私もサイコパスコミュに入ってやろうか?」
「は?何の話ッスか?サイコパスの考えてる事は正直理解できないんで、いきなりぶっ飛んだ事言うのやめてほしいんスけど……」
ノゾミちゃん、さては照れてるな?




