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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第十四話 お泊り会計画中

 世の中の人達に問いたい。家出した魔王はどこに帰ればいいんだろうか?

 まぁ現代に生きる魔王である私の場合、魔王城みたいな居城があるわけではないから、ハナッから帰る場所なんて自宅くらいしかないわけだけど、馬鹿三人にタンカ切って、即家に帰るとか、何かいじめられて自宅に引きこもるみたいな感じで、負けた気がするので、そんな事をする気にはなれなかった。

 そんなわけで、特に行く場所がないものの、格好つけて捨て台詞を放って転移魔法を使った以上は、どこかに移動しなければ、まったくもって格好がつかない。

 だからといって、この魔王の姿で、どこでもいいから転移する、という選択肢もなかった。少しでも人の目についたら大騒ぎになる。

 じゃあどうすればいいか?私は必死になって頭をフル回転させた。


「……それで私の部屋に来たんスか?」


 私が転移先に選んだのは、ノゾミちゃんの部屋だった。

 ノゾミちゃんは部活中だろうから、誰もいないだろうとふんで、変身を解いて外に出るための更衣室代わりにしようとしたのだが、ちょうどよく部活が終わり、帰宅したノゾミちゃんと鉢合わせしたのだった。


「いきなり出てこられるのは心臓に悪いんでやめてほしいッス……マジでビビったッスよ。出てきたのが裕美さんだったからよかったッスけど、下手したら私人殺しになるとこだったッスよ」


 そうだな……咄嗟にバットをフルスイングされるとは思わなかったよ。ジュラルミン素材の金属バットが折れる……というか粉砕してるんだけど、どんだけ力込めて振りぬいたんだよ?しかもコレ、魔力込めてただろ?反魔法と自動防壁があるから何ともなかったけど、一般魔族くらいだったら、軽く首が飛んでるぞこれ。

 っていうか『転移魔法でいきなり目の前に現れる』とかは、私以外誰もやらねぇよ。つうか、できねぇよ!


「悪かったよ。とりあえず、せっかく帰ってきたんだから、ついでに頼みたいんだけど、夕飯ノゾミちゃんチで食ってくつもりだから、店が開くまでココで待ってていいか?」


 ステラちゃんを私の家に連れ帰ると、両親に不審がられそうなので、とりあえず夕飯だけでもココで済ませておこうかと考えていた。


「まぁそれは別にいいッスけど……その後はどうするんスか?4日間って言ってたッスよね?」


「まったく考えてねぇよ。1日2日くらいならともかく、4日間もウチで寝泊まりさせると、さすがに頭の弱いウチの両親でも家族会議始めそうな気がするんだよな」


 だからといって、ステラちゃんにまたホームレス生活させるのも何だし、ノゾミちゃんあたりに2日間くらい泊めてくれるようにお願いしようものなら、事が終わった後に、サクラあたりから「また見捨てたの?私の時みたいに?」とかネチネチ言われそうだし……


「ごめんなさい……ワタクシのせいで迷惑かけてしまって……」


 心底申し訳なさそうにつぶやくステラちゃん。

 やめてくれ。ステラちゃんが良い子なのはわかったから、これ以上私の良心を直接攻撃しないでくれ。


「良い子じゃないスか、ステラさん。この子を、初めて会った時無下に扱って、追い返したんスよね?裕美さん」


 やめてくれ。ノゾミちゃんが裏表無い性格なのはわかってるから、これ以上私の良心を間接攻撃しないでくれ。


「ったくお前等、私の良心をそんなチクチクと攻撃して何が楽しいんだよ……」


「裕美さんに良心なんてあったんスか?」


 あるに決まってんだろ!?少しくらいなら……


「オマケ程度でも良心があるなら、なおさら今後どうするか考えなくちゃダメじゃねッスか?」


 まぁそうなんだけど。


「中々ないんだよな……ステラちゃんを私の手元に置きつつ、ウチの両親に不審がられずに、4日間寝泊まりできる場所」


「あ、ちなみにウチはダメッスよ。両親、多少は事情わかってるとは思うッスけど、普段はほぼ家に誰もいない状態ッスからね、そんな家に不審人物を2人も置いておくほど図太い神経持ってねぇッスから」


 チッ……先にくぎをさされたか。でもノゾミちゃんの神経はけっこう図太い方だと思うぞ。


「一番最適なのは幸の家なんだけど、今の状態だとそれも無理だしな……」


 まさか、こんな事で幸と敵対したつけがまわってくるとは思わなかった。


「じゃあ、まず幸さん殺して、幸さんの家に居座ればいいんじゃねッスか?」


 発想がサイコパスなんだけど!?


「いや……えっと……ほら、幸の家にはサクラも同居してるから無理なんじゃないか?」


「じゃあ2番目の標的はサクラさんッスね!」


 サイコパス!!?何かノゾミちゃんの将来がマジで心配になってきたんだけど大丈夫か!?


「さすがに、そんな猟奇的な強盗殺人すんのは嫌だな……」


「まぁ普通はそうッスよね。私も『やれ!』って言われても死んでもやりたくねぇッス」


 じゃあ何で私にやらせようとしたんだよ!?


「裕美さんなら、平気でそういう事しそうなイメージだったんスけど……意外と普通なんスね?」


 お前は私にどんなイメージ持ってたんだよ?


「でも、それがダメなら、後はもうビジネスホテルか何かに連泊するしかないんじゃねッスか?裕美さん金は腐るほど持ってるんスよね?」


「腐るほどは持ってねぇよ……」


 でもまぁ、方法としてはそれくらいしか残ってねぇもんな。


「方法はビジネスホテル連泊として、後は、4日間の外泊を両親にどうやって言い訳するかだな」


「ステラさんだけ泊まらせて、裕美さんは随時家に帰って寝ればいいんじゃねぇッスか?」


 まぁそうしたいのは山々なんだけどな……ただ、今の状況でステラを一人にするわけにはいかないんだよな。

 今やってるこのゲームで、アイツ等馬鹿三人が助かる方法が一つだけある。それは、ゲームそのものを無効にする事。ステラをこの世から消して、私が動く理由を無くしてしまえばいいのだ。

 ステラを殺すだけだったら、私の蘇生魔法があるから、いくらでもゲームは続行できる。

 ただ、ステラを誘拐して、元の世界に強制送還されたら、どうしようもなくなる。

 サクラの時と違って、明確に空間座標を把握してコチラの世界に来ている中二病さんがいる。そして、座標さえわかれば世界間移動のゲートを開く事ができるヴィグル達魔王軍がいる。


 普段は面倒臭い事大嫌いな私だけど、今回は全面的にステラちゃんの味方をしようって決めたんで、それを邪魔されるのは絶対に阻止したいところである。


「まぁなんだ……色々あるんだよ」


 その辺の諸々の事情を説明するのは面倒臭いんで、ノゾミちゃんには適当に答えを返しておく。


「色々ッスか……まぁ深くはつっこまねぇッス……じゃあ裕美さんの両親には、ウチに泊まってるって事にしとけばいいんじゃねぇッスか?勉強会とか適当な理由つけて。裕美さんの両親から何か連絡きたら、適当に話合わせておくッスよ。」


 おいおい……勉強会なんて言ったら、無断外泊するよりも不審がられるぞ。私の勉強しなささをあまり舐めてもらっちゃ困るぞ。


「……ただの大規模女子会って事にしといてもいいか?」


「いや、別に理由なんて何だっていいッスよ。どうせ何にしたって嘘なんスから」


 そりゃそうだな……


「まぁコレで、今後の拠点は決まったとして、次は……」


「ホテルの空室状況調べるんスか?この時期なら、この辺のホテルだったらどこでも空いてると思うッスよ」


 いや、そんな事はどうでもいい。


「まずは夕飯だ!そろそろ店開く頃だろ?」


 今日はちょっと無駄に神経使った気がして、腹が減った。いや、マジで……


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