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魔王少女  作者: mizuyuri
第一部
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第六話 舐めプ魔王VS魔法少女

 まぁ何というか……

 昨日寝る前に色々と考えていたものの、特に何もなく一日が過ぎ放課後となった。

 あの転校生が、何かしらアクションとってくるかと思ったものの、一言も絡んでこなかった。

 それどころか、昨日包帯グルグル巻きで登校してたくせに、今日は、何もなかったかのように包帯パージで来ていた。

 クラスメイト全員の『あ、これ関わっちゃダメなやつだ』って空気がヒシヒシと伝わってきた一日だった。


「裕美~今日どっかよってく~?」


 いつものパターンで美咲が声をかけてくる。

 特に用事は何もなかったが、家に帰ってもヴィグルの小言に付き合うだけなので、その選択肢を選ぶ事はしなかった。


「特に用事はないけど、どっか行くなら付き合うぞ」


「マジかぁアタシも暇だったから声かけたのに……じゃあ適当に男誘惑しに行くか?」


「そうだな、じゃあさっそく行くか」


「……悪かった。でも、ボケに対してのツッコミ放棄は勘弁してくれよ」


 じゃあ言うなよ。


「じゃあ、とりあえずカラオケとかどう?」


「美咲と二人でカラオケェ?お互いのレパートリー知り尽くしてるレベルなのに二人きりぃ?」


「わがまますぎんだろ裕美……わかったよ、だったら二人きりじゃなきゃいいんだろ?お~い!さっちゃ~ん!」


 おい!よりにもよって幸に声かけるなよ!

 ってか何だ『さっちゃん』って?いつからあだ名呼びしだしたんだ?


「何か用ですか?美咲さん」


 クラス全体『コイツには関わらない方がいい』って空気出してたのに……

 たぶん美咲に「気付かないのか?」って問い詰めても『だって無視は可哀そうだろ?』とかお節介発言がでることは想像できるんだけど……

 浮遊狐に『成長途中で潰すのはやめてくれ』ってお願いされてるから、魔王だって事がバレないように、あまり関わりたくないんだけどな。


「おうよ!今から美咲が公開オナニーするから見ててほしいそうだ」


「しねぇよ!!」


 極力、自分から引いてってくれる事を願って言った発言なのだけど、美咲と幸に二人がかりで睨まれてしまった。


「とりあえず、このセクハラ女はほっといて……今から三人でカラオケ行かね?」


「カラオケ……」


 幸は少し困ったように悩みだす。

 うんいいぞ、そのまま断れ!


「あの……お付き合いするので、その後で構いませんから魔法の練習に付き合ってもらえませんか?」


「ん?そんくらいなら別にいいよ。なぁ裕美」


 マジか!?私も付き合わなきゃならんのか?


「あ~……うん……少しなら……」


「美咲さんがいてくれれば大丈夫なので裕美さんは嫌なら無理強いはしないわよ」


 ん?何か私と美咲の扱いに差がない?


「そうは言ってもさっちゃん、魔力の扱いなら裕美すげぇよ」


 空気を悪くしないようにか、美咲は咄嗟にフォローに入る。


「でも裕美さんは魔族でしょう?根本が違いますから、特に教わる事はないわ」


「いや……私、魔族じゃなくて、一応ただの眷属……」


「同じようなものよ」


 コイツ……今すぐ魔王としての正体明かしてボコボコにしてやろうか?


 とはいえ、私と美咲の扱いに差がある理由が何となくわかった気がする。

 美咲は、魔法少女としての先輩であり、魔王に負けたとはいえ、幸では到底太刀打ちできないほどの実力のある『人』

 いっぽう私は、力はあっても敵勢力に寝返っただけの元人間の『魔族』

 『正義』と『悪』を明確にわけてる幸のなかでの図式はこんな感じになっているのだろう。


 ふと、私が本気でキレたらどうなるかを身をもって経験している美咲の顔が青ざめているのに気が付く。

 それを見て、私のイライラは若干収まった……けれどぉ~面白そうなのでこのまま美咲の胃を痛くさせておこう。


「ふ~ん……ずいぶんとでかい口たたくじゃねぇの?そういうのは私に勝ててからにすれば?」


「乗ってきてくれて助かるわ。悪魔に魂を売った者はこらしめないとと思っていたの。私からケンカを売るのは正しい行いとは言えなくなってしまうから困っていたの。そちらから来てくれて助かったわ」


「御託はいいから。変身する時間与えてやるから、さっさとかかってきなよ」


「殺しはしないから安心しなさい……ただし、後悔だけはさせてあげる」


 そう言うと、誰もいなくなった教室で幸は変身する。

 髪は灰色、衣装は白と黒の混載する、何事も二分化して考えようとする幸の性格を形どったかのような格好である。

 いっぽい美咲は「ひぃぃ……」とか言って頭抱えてうずくまっている。

 そんなに私にやられたのがトラウマになってんのか?あれから何年親友やってんだよ?いいかげん慣れろよ。


「覚悟してください!」


 幸はそれだけを一言いうと、炎魔法を使い火球を投げてくる。

 まぁ避けるまでもない。


 自動発動の防壁魔法が、私の皮膚に到達する前に火球をかき消す。


「やはり、この程度の威力では、アナタの防壁を破る事ができませんか……なら!」


 次は、右手に雷撃魔法を溜め、足に強化魔法をかける。

 強化した足の瞬発力で、私との距離をいっきに詰めると、右手で直接殴りかかってくる。

 私はもちろん避けずにそのまま受ける。


 私の左頬に当たった拳は、皮膚に触れた状態で止まりビクリとも動かない。


「これでも……ダメ……なのですか?」


 そのまま拳を振りぬこうと歯を食いしばりながら幸はつぶやく。


「いや、少しピリっとした」


 そう返答し、そのまま幸の頭に向かって手を伸ばす。


「うわあぁぁぁ!」


 幸……じゃねぇ!?戦いを見てただけの美咲が半泣き状態で悲鳴を上げている。

 ああ、この動作がトラウマなのね。


 美咲の奇行に一瞬気を取られて反応が鈍った幸の頭を鷲掴みし、雷撃魔法を使う。


「―――――――っっ!!」


 咄嗟に魔法抵抗値を上げる魔法を使っていたみたいではあったが、そんなのはお構いなしに、私の放った雷撃は身体中を駆け巡り、結果声にならない叫びを上げる。


「お・か・え・し」


 私はそう一言放ち、幸の頭から手を放す。

 支えを失った幸の体は、そのまま膝から崩れ落ちる。


 変身が解けていないので死んではいないだろうけど、気を失っているのか、痺れているだけなのか、倒れたまま動かない。


 美咲も泣きながら「ごめんなさい……ごめんなさい……」とか繰り返して、うずくまったまま動かない。


 どうすりゃいいんだ?この状況。


 それはそうと、美咲が言っていた通り、さっちゃんあんまり強くないな……

 せめて、変身前の私の自動防壁くらいは破ってもらわないと話にならないだろ?

 個人的には、RPGのラスボスみたいに、倒したと思ったら、真の姿に変身して再度戦闘~みたいなシュチュレーションをやってみたいのになぁ……


 まぁそれはともかくとして、とりあえずこの状況を何とかするか。


「おい!いい加減戻ってこい!」


 まずは美咲の頬をペチペチ叩いて起こす。

 正気に戻った美咲に、こんな心臓に悪い事は二度とするな、と怒られたけど、たぶん忘れた頃にまたやると思うので、先に謝っておく事にした……心の中で。

 すまん美咲。たぶんまたやる!だってお前の反応超面白いから。


 次に幸に回復魔法をかけてやる。

 すると、今度はこっちが泣き出した。


「何で……何で私は……強くなれない……弱いまま……」


 あ~~鬱陶しいなぁ。


「何だ……えっと……本気になって悪かったな」


 私はそう言いながら、そっと手を差し出す。


「ほら、面倒臭いけど私も練習付き合ってやるから、とりあえずカラオケ行くぞ」


 何だかんだ言っても、私も意外とお人好しなのかもな……

 いや、美咲の影響かもしれないな。


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み、美咲さん…
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