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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第十一話 魔法少女ステラ

「何?何か用なの?」


 無表情で、サクラと中二病さんに前に立つステラ。

 若干うろたえるサクラと、まったくの無反応の中二病さん。ってか何か反応しろよ。お前の客だろ?


「ワタクシの方からは何度か拝見していましたが、こうしてお目にかかるのは初めてですね……お初にお目にかかります。ワタクシの名前はステラと申します……以後お見知りおきください女神様」


 ステラが膝をつき口を開く。それを見て何かを理解したような顔をする。……コイツ、もしかしてステラが自分の客だってことに気付いてなかったのか?


「ふむ、その姿……以前教団内部で見た記憶があるね。私を追ってここまで来たのかい?」


 嘘つけよ!さっきまで全然気付いてなかったじゃねぇかよ!


「この場所まで来るのも、だいぶ苦労したのではないかい?そこまでして私に謁見して、何か叶えてほしい望みでもあるのかい?」


 余裕がある時の、自分に酔ったような中二病演技が続く。


「ワタクシの願いですか。そうですね……女神様……」


 そこでいったん言葉を切るステラ。


「……死んでくださいませんか?」


 そう言うと、ステラは魔力で衝撃波をつくり、中二病さんを攻撃する。

 咄嗟に防壁をはる中二病さんだったが、防壁を貫かれ、思いっきり後ろへと吹き飛ばされる。

 さらに追い打ちをかけようとするステラだったが、すぐ隣にいたサクラによって止められる。


「この世界での女神様の信者の方ですか?ワタクシの邪魔をしないでくださいませんか?」


「邪魔するわよ!女神様とか信者とかよくわからないけど、エフィさんの治療は、私が任されてる仕事なんだから、何かあったら私が無能だって思われるじゃない!もう後が無いのよ!!」


 サクラ。お前……無能認定される一歩手前まできてたのか?


「その程度の事情なのでしたら、そこをどいていただけませんか?ワタクシは女神様を殺さなくてはならないのです!」


「その程度ぉ!!?私にとっては重大な事なのよ!あんまふざけた事言ってるとぶっ殺すわよ!!」


 やっと見つけた標的を目の前にして、冷静さを欠いているステラのみならず、サクラまで、完全に頭に血が上っているようだった。

 ……このまま放っておくと、ちょっとまずい事になりそうだな。


「「っ~~~~!!!?」」


 私は、一触即発状態の二人に拘束魔法をかけて、近づいていく。


「とりあえず落ち着けお前等。……えっと、ステラだっけか?コイツ等全員私の関係者なんだよ。落ち着いて色々と説明してもらえると助かるんだが?」


 二人の間に入るように歩きながら話しかける。少し後ろで過呼吸になりかけている中二病さんはあえて無視する。


「わ……かった……から……魔法解いて……苦しい……」


 サクラからクレームが飛んで来る。

 ってか私の拘束魔法にかかった状態で喋れるとか、意外と優秀だな……魔力関係に関しては。

 まぁともかく、このまま長時間拘束してたら窒息しちゃうんで、二人ともいったん落ち着いたのを確認してから拘束魔法を解く。


「ハァ……ハァ……恐ろしい魔法ですね……」


 拘束魔法を解いた瞬間に崩れ落ちるように膝をつくステラ。


「説明と言われましても難しいですね。ワタクシ達の世界の情勢を知らなければ、説明しずらいです」


 いや、何となくだけど知ってるぞ。


「前にキューちゃんが言っていた、エフィさんが国をいくつか滅ぼして、圧制を敷いていた、という世界の事でしょうか?」


 幸が話に加わってくる。


「知っていたのですか?それを知っているのでしたら、何故女神様を倒さねばならないか理解できると思うのですが?」


 まぁ危険人物を倒さなきゃならない、って思考はわからんでもないな。


「だからって、わざわざ世界移動してまで命狙う事ねぇんじゃねぇか?自分達の世界からいなくなったんだったら、そんなのほっときゃいいだけだし、仮に帰ってきたなら、そん時やればいいんだし」


「あと、狐さん、この人の事を『新興宗教の教祖をしてた』ってのも言ってたろ?このエフィって人を『女神様』とか呼んでるって事は、ステラちゃん、その宗教に入信してる人なんじゃないの?何で信者なのに、教祖を殺そうとしてんの?」


 私の発言に美咲ものってきて、二人がかりで質問攻めをする。


「……そうですね。これはワタクシの個人的な事情でもあるのかもしれませんね」


 答えになっていない、意味不明なつぶやきをするステラ。


「ワタクシは女神様が起こす奇跡を信じていました。しかし、フーリンさんから魔力の存在を聞かされた時、そのすべてが崩壊したんです」


 フーリン?誰だよそれ?


「女神様は神ではなかった……ただ魔力を持っていただけ。そして魔力があれば、誰でも女神様と同じ事ができる。それを知った時、ワタクシは女神様に今まで騙されていた事に気付いたのです……怒りがこみあげてきました。なのでワタクシはフーリンさんと契約をしたのです」


 だからフーリンって誰だよ?


「フーリンって誰?」


 ステラがまだ話している最中なのに、それを遮って質問をする美咲。お前空気読めよ!ちょっとくらい待つって事ができねぇのかよ?だがグッジョブだ美咲!!


「失礼しました……フーリンさんとは、ワタクシを魔法少女にしてくれた、空を飛ぶ猫のような妖精さんの事です」


 ああ……浮遊狐の同類か。別の個体でも厄介な事しかしねぇんだな……場を引っ掻き回す発言しかできねぇのかよアイツ等は?


「もしかしてステラさんも魔法少女だったんですか?でも何で変身してないのに魔法を?」


 たぶんここにいる皆が気になった疑問を幸が代表するかのように質問する。


「変身していますよ。コレが変身した姿です」


 は?どういうこった?


「常に変身した状態でいられるように、魔力核を身体になじませる特訓をしました。気を失ったりしてしまったら元に戻ってしまいますが、通常時なら変身した状態を維持できる程度にはしてあります」


 すげぇな。そんな事できるのか。


「あの……ついでで申し訳ないんですが、質問したい事がもう一点……エフィさんにあるんですけどいいですか?」


 少し遠慮がちに幸が続けて喋る。


「ステラさん、食べる物や寝る場所にすごく苦労してたみたいなんですけど……エフィさんは大丈夫だったんですか?」


 あ、言われてみればそうだな。


「その辺の事に抜かりはないよ。石をパンに、水を葡萄酒に変える魔法を使用していたからね。飢える事はなかったよ」


 何コイツ奇跡の無駄遣いしてんだよ!?本物の神様に謝れ!!

 ってか吹っ飛ばされて、立ち上がってすらいないで、その場で座ったままの状態で中二病演技されても全然カッコよさはないぞ。


「味に飽きたら、店で買って食べたりもしていたよ『会計を済ませた』と思わせる暗示を、魔法でブーストしてかけていたので、まず失敗する事はなかったね。寝る場所も同様に、適当なホテルで同じ魔法を使って寝泊まりさせてもらっていたよ」


 クソみたな魔法の使い方してんなコイツ。

 やってる事はただの無銭飲食じゃねぇかよ。


「……確信いたしました。やはり女神様はこの世に存在してはいけない人です!!」


 額に青筋立てながら、怒りで震えながら声を絞り出すステラ。

 いや、お前の場合、単なる逆恨みだろ!?


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