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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第八話 クリスマスパーティー

 冬休み前の終業式。それはイベント的にクリスマスと重なり、翌日から訪れる連休とともに心躍らせるものである。

 ……恋人がいればな!!


「裕美様~私気合入れてクリスマスケーキ作ったんですけど、ウチでクリスマスパーティーしませんか?」


 終業式も終わり、下校時間になった瞬間を狙って幸が声をかけてくる。


「パーティー?ねぇねぇさっちゃん!アタシも行っていい?なぁ裕美もいいだろ?」


 そして、それに反応を示す美咲。


 何で私に寄って来るのはこんな連中だけなんだよ?捕虫器になった気分だよ。

 いや、別に気になる異性がいるとかそんなのは一切ないよ。でもさぁ、クラスの連中の半分くらいが「今日は彼氏とデートするのぉ~」とか言ってるのを聞いてると無性に腹が立つんだよ!ってかココ女子校だぞ?近くに男子校があって登下校で一緒になる、とかいうイベントが起こりえる可能性なんて微塵もない程度には近くに高校無いぞ!?何で男との出会いがあるんだよ?


「っチ!クソビッチ共が!!お望み通りに孕まされて学校退学しろや!」


「……あの、美咲さん。裕美様、私達の話まったく聞いてないみたいなんですけど」


「大丈夫大丈夫。裕美がこのセリフを吐くのは毎年の恒例行事だから。ちなみに次のセリフは『誰が父親かわからないくらいに廻されて、それでも喘いでろやクソビッチ共』……だったかな?」


「孕んだ後に『誰が父親かわからない』とか言って勝手に泣いてろやクソビッチ共!」


「あ、ちょっと違いましたね」


「裕美のやつ、今年はちょっとアレンジ加えてきたな……」


 ってかさっきから脇でうるせぇな!何で人のひとり言にちゃちゃ入れてくんだよ?


「……で?お前等何の用だ?」


「あ……本当に聞いてなかったんですね」


 何やら悲しそうな表情をする幸。


「パーティーだよパーティー!クリスマスパーティーやるぞ裕美!」


 そんなに連呼しなくてもわかるっての!ってか、ひとり言言ってた時も、ちゃんと話は聞いてたからわかってるっての。ちょっと幸をイジメてみただけだし。


「いちおう、サクラちゃんとのぞみんにもメール送っておいたから、裕美も来れば5人になるかな?」


 行動早ぇよ!!?いつメール打った!?


「わかったわかった。色々と忙しいけど行ってやるよ」


 別に嘘は言ってない。私は中二病さんの回復を待って事情聴取するっていう重要な仕事が実際にあるわけだし……


「そんな見栄はってもいい事ないぞ裕美」


「裕美様、あまり妄想の世界に入り浸ると現実世界がつらくなりますよ」


 そろいもそろってこの馬鹿二人組は、私をいったいなんだと思ってるんだ?


「あ、のぞみんから返信きた……『ちょっと予定があるんで遅れて参加でもいいッスか?』だってよ」


 …………は?クリスマスにぃ?予定が入ってるぅ?


「行くぞお前等……一人血祭に上げないとならない奴を発見した」


 私はそう言うと、返事を待たずに幸と美咲の肩に手を置いて、転移魔法を使ってノゾミちゃんの魔力反応がある場所へと転移する。

 そこでは、今まさに帰ろうと、昇降口で靴に履き替えてるノゾミちゃんがいた。


「おうおう!クリスマスに予定があるとか、いい御身分だな?ちょっとお姉さんと成層圏からスカイダイビングしに行かねぇ?」


「もう殺す気満々じゃねぇッスか!?ってか裕美さん絶対勘違いしてるッスよ!私の予定は家の手伝いッスよ!!安心してほしいッス!私は今は彼氏とかいねぇッスから!!」


 …………は?


「のぞみん……最後の一言は余計だ……」


 美咲が小声でつぶやく。


「……『()()』?じゃあ去年は?その辺ちょっと詳しく聞かせてくれねぇか?」


 私の顔色がマジな感じに変わってきたのを確認したノゾミちゃんは、何も言わずに突然転移魔法を使用して、目の前から消える。


「希美さん、ちゃっかり転移魔法を裕美様から盗んでたんですね」


 たしかに今まで何度か、ノゾミちゃんと一緒に転移魔法で移動した事はあった。ノゾミちゃん本人は使用してなかったせいで、習得しているかも、っていう可能性を失念していた。……でもなぁ。


「私のサーチ魔法から逃げられると思うなよ!世界中どこにいても、どんなに微弱な魔力でも拾ってやるぞ!」


 幸と美咲の肩に手を置いたまま、ノゾミちゃんの魔力を辿って転移魔法を発動する。

 やってきたのは、ノゾミちゃんの部屋だった。


「ノゾミちゃん……私に殺されそうになったからって、自殺未遂してたら本末転倒だろ?」


 そこには、魔力を使い果たして、動けなくなってぶっ倒れているノゾミちゃんがいた。これ、ちょっと間違えたら、前の時と同じで消滅してた可能性あっただろ?


「いや……ちょっと見栄はっただけだったんスけど……裕美さんの目がマジだったんで……逃げなきゃヤバイって思って……でも裕美さんから逃げられる可能性のある魔法ってコレしかなくて……一か八か使ってみたんスけど……結果は無駄に死にかけただけだったみたいッス……」


 ぶっ倒れたままの状態で、必死に状況説明をするノゾミちゃん。

 ってか、この後家の手伝いするんじゃなかったっけ?無理だろコレ?


「あ、ちょっと申し訳ないんスけど、母さんに『諸事情で動けなくなったから手伝いできなくなった』って伝えといてもらっていいッスか?」


 軽いなぁ……クリスマスで忙しくなるから、手伝い絶対必要なレベルなのかと……ん?大衆食堂にクリスマスあんま関係ないか?じゃあアレか?ノゾミちゃんが特にやる事なかったから、手伝いする流れだったのか?

 ちなみに伝言に関しては、美咲が真っ先に動いていた。


「それと裕美さん。この状態で、しかも運んでもらえるなら、最初からクリスマスパーティー参加できる事になったッス」


 さて、そこまでして参加したいのか?それとも断る……ってか断ってもらうための口実に言ってるのか?まぁ後者だとは思うけど……


「参加するもしないも自由だぞ、どうしたいんだ?」


「じゃあ参加させてほしいッス」


 断る口実じゃなかったのかよ!?


「このまま一人でここにいたら、私が動けるようになるのが先か、トイレ行きたくなるのが先かのデスマッチに突入しそうなんで、できれば事情を知ってて介護してくれる人が近くにいてくれた方がありがたいッス」


 まぁたしかに……この歳でお漏らしするのは、ちょっと避けたいところだな。


「大丈夫だ!下の世話は幸がやってくれる!なぁ幸?」


 私に命令されたら逆らえない幸は、無言のまま泣きそうな顔をするのだった。


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