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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第七話 仮復活の中二病さん

 冬休みまであと一歩。暦上仕方ないとはいえ、土日をはさんで、月曜だけ登校してからの長期休暇。もういっそ月曜も休ませろよ、という気分でいっぱいの若干憂鬱な土曜日。

 そんな気だるい感じの土曜の午後。突然ヴィグルから呼び出しの連絡を受けた。

 呼び出されたのは、駅前にある10階建てのマンション。その1003号室に来てくれ、ってな事なんだけど……この近辺じゃ一番高いマンションの最上階の部屋って誰が住んでる部屋だよ?ヴィグルの別宅代わりの部屋か何かか?


 まぁそんな疑問を持ちつつも現場へと向かう。入口で呼び鈴を鳴らして、ヴィグルに施錠を解除してもらいエレベーターに乗り最上階のボタンを押す。

 ってか、都会ってわけでもないこの町にしては、随分しっかりした防犯してんな。築年数も新しいし、絶対に家賃高いだろココ?

 そんな事を考えつつ目的の部屋の前まで来て、何のアクションもせずに扉を開ける。


「わざわざ来てやったぞ~感謝しろ」


 誰の家かもわからないので、とりあえず声だけはかけておく。

 ……にしても、パッと見た感じ、随分と生活感のない部屋だな。本当にココ誰か住んでんのか?


「キミが彼等の組織の長かい?是非お礼がしたくて呼び出してもらったんだ。わざわざご足労感謝するよ」


 部屋の奥から、どこかで聞いたことある声が聞こえてくる。


「どうだい?キミが望むのなら何でも願いを叶えて……」


 奥の部屋から、喋りながら歩いてきた人物と思いっきり目が合う。

 ああ、やっぱりこの声、昨日の中二病さんだったか。つまんねぇな、生きてたのかよ。


 やって来たのが私だと認識した瞬間絶句して、一瞬にして顔が青ざめる。そのまま逃げようと踵を返すも足がもつれてその場に倒れこむ。それでもなお逃げようとしているようだったが、どうやら腰が抜けているようで、満足に進んでいかずに、床に寝転んだ状態でビクビクしつつも、動く腕だけは先行して逃げようと夢中になって床をビッタンビッタン叩いている。


 何コレ?超面白いんだけど。

 ってか初登場の時の黒ずくめ衣装着てるせいで、パンツ丸見えだぞ。必死になりすぎじゃね?


「ご……ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!やだ!もうやだよぉ!!死にたくない!死にたくないよぉ!!助けて!誰か……たすけ……た……すけ……」


 叫びだした上に、必死になりすぎて過呼吸になってるし……現状私、入り口で突っ立てるだけじゃん。


「やっぱり裕美様が何かやらかしたんですね?また心的外傷負った方を増やしてしまって……どんな恐ろしい事したんですか?」


 中二病さんの背中をさすりながらヴィグルが質問してくる。

 別にそんな大それた事はやってないだろ?


「やられたから、やり返しただけだっての。ただの正当防衛だよ」


「あ~はいはい。いつも通り過剰防衛したんですね」


 聞けよ人の話!何勝手に解釈してんだよ。ってか『いつも通り』って何だよ!?


「つうか私はいつまでココにいればいいんだよ?誰の部屋か知らんけど上がってもいいか?」


「大変失礼をした。この部屋は我が生活している部屋だ。裕美殿だったら土足で上がってもらっても構わん」


 部屋の奥からポチがやってくる。

 いや、さすがに土足で上がるほど常識外れな事はしないっての……にしても、この部屋ポチの部屋かぁ……部屋にはベッドとテーブルが一つ置いてあるだけ。まぁポチっぽいっちゃポチっぽいけど、もうちょっと生活感出せよ。せめて窓にカーテンくらいはつけとけよ。


「……で?この中二病さんは何なんだ?どこから拾ってきたんだ?」


「サクラさんからの情報を基に、日本の真南の赤道近辺で微弱な魔力を感知したので向かってみたところ、魔力を生命維持にまわして海面を漂っているこの方を発見したので保護してきました……まぁその結果『命の恩人である、組織の長にお礼がしたい』という事になって今に至ります」


 そんな所にいたのか……って事は本当にギリギリ生き残れてたって感じなのか?


「いけません!ウチではペット飼えないから元の場所に捨ててらっしゃい!」


「そんな『捨て猫拾ってきた子供を叱るお母さん』みたいな事言っても駄目ですよ。冗談を真に受けて、本当に元の場所に捨てられると思って、この子さらに怯えてしまってますよ」


 ヴィグルの言う通り、中二病さんの目から涙が零れ落ちている。

 ただのお茶目なジョークじゃん?マジに受け止められると思わなかったわ……


「それにココにいるのは私とポチさんだけなので、ボケるなら、美咲さんみたいなキレのあるツッコミは期待しないでボケてくださいね」


 たしかに、この二人がノリノリでツッコミ入れてくるのは想像できないな……せめてこの場にサクラがいれば、幸と同程度のツッコミは期待できたのになぁ。


 まぁそんな事はどうでもいいか。

 とりあえず、この中二病さんには、事の経緯とか、もう一人の異世界人の事とか色々と聞きたい事があったから、ちょうどいいっちゃちょうどいいな。


「おい……確かエフィとかいったよな?いくつか聞きたい事があるんだよ。嘘つかずに正直に答えろよ?」


 倒れこんでいる中二病さんの目の前に腰を下ろして話しかける。


「な……何でも答える!絶対嘘なんてつかないから!!だからもう……これ以上は……ゆるし……ゆる……して……くださ……」


 いやいや!私が話しかける度に過呼吸になってたら会話できないじゃん!!魔力ほとんど封印された状態での、成層圏からのスカイダイビングそんなに怖かったのか?……あ、いや……うん、そりゃ怖いよな。


「裕美様。数時間前まで死にかけていた彼女には酷ですよ。もう少し落ち着くまで時間を与えてあげてください」


 再び中二病さんの背中をさすりながらヴィグルが口をはさむ。


「ポチさん。隣の1002号室に布団だけは用意してあるので、彼女を運んであげてください」


 ヴィグルはそう言うと、ポチに鍵を投げ渡す。


「承知した」


 その一言だけを言うと、ポチは鍵をキャッチすると、ずっと震えている中二病さんを抱えて部屋から出て行く。


 ってかちょっと待て!?今聞き捨てならない事言ってなかったか!?


「隣の部屋?ポチ二部屋も借りてんのか!?それとも隣はヴィグルが借りてんのか?どんだけ金無駄遣いしてんだよ!?」


「言ってませんでしたっけ?このマンションは魔王軍所有ですよ。社宅のような扱いにはしてるので、魔族は格安で入居できるようになってますよ」


 私の叫びに、ヴィグルはサラッととんでもない事を言い出す。


「馬の合う家庭が見つけられずに、どうしても人間と同居できない魔族を救済するような形をとってるんですよ……前に裕美様にも言ったかもしれませんが、不動産会社通しての賃貸ですと、通常の賃貸契約書類以外にも魔王軍を通しての国への書類提出・地方自治体への許可申請等、色々と追加でやらなければならない事が山積みで発生してしまって面倒ですので、私の業務負荷を減らす意味でも重要なんですよ」


 いや、賃貸だと色々とメンドイってのは聞いた気がするけど、マンション経営までは聞いてねぇよ!?


「それと一部ですが、魔族以外の一般の方も入居されてますが、そちらはこの近辺の相場に合わせた通常の料金をいただいてます。まぁ住んでるのがほぼ魔族なので、防犯に関しては他よりだいぶ優れていると思うので、そのあたりを考慮しますと、格安になるかもしれませんね」


 ってかそれ言ったら、このマンションに元から付随してるセキュリティいらなくね?なんで魔族メイン入居目的で、ここまでのセキュリティつけたよ!?


「裕美様も入居したければ、まだ部屋に空きは若干あるので、魔族料金でどうですか?」


「いらねぇよ……」


 私は自宅の広さ6畳のマイルームで十分だっての。


 ……っていうか、人間と同居できなかった魔族って事は、基本一人暮らしだろ?


 オール電化の3LDKはやりすぎだろ!!?

 なんで一般魔族が、魔王及び四天王よりいい暮らししてんだよ!?何か色々とおかしくね!?


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