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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第六話 ケーキの価値

「……テメェは人んちで何してんだよ?」


 家に帰ってきた私の目に飛び込んできたのは、何故か私の家のダイニングテーブルに座って飯を食っているサクラの姿だった。


「あら裕美?いつ帰ってきたの?今日ヴィグルさんが仕事で帰ってこれないみたいなのよ。それでこの子がヴィグルさんの使いで来てくれたんだけど、まだ夕飯食べてないっていうからご馳走してあげてるのよ」


 サクラの代わりにおかんが返答してくる。

 サクラはサクラで、ウチのおかんが返答したのを確認すると『そうそう、そんな感じ』みたいな顔をして、無言のまま食事を再開しだす。

 ってか、こんな不審人物をホイホイと家にあげるなよ!馬鹿か?ウチの両親?


「使いってなんだよ?帰ってこれないならメールでも電話でもすりゃいいだけだろ?わざわざサクラをウチによこす意味がわかんねぇよ」


「この子、サクラちゃんっていうの?っていうか裕美、この子と知り合いなの?」


 名前すら聞かずに餌付けすんなよ!!?やっぱ馬鹿か?馬鹿なのかウチのおかん!?


「ほらケーキ。ヴィグルさんがいただいた物らしいんだけど、日持ちしないから今日中にでも食べてほしいって事らしくて、この子が持ってきてくれたのよ」


 おかんは嬉しそうに、高級そうなケーキを見せてくる。


「ってかオマエ……ヴィグルが帰って来れないほど仕事忙しい状況なのにお使いって……ひょっとしてパシリくらいしか使い道ないのか?」


「しつへいな!ほへはほへへふゅうはいなひんふはほほ!」


 顔を真っ赤にして何やら反発してくるが、口の中に物がつまっているせいで何言ってるかさっぱりわからない。

 でもな、お約束な『口の中綺麗にしてから喋れ!』とかいうツッコミなぞしてやらんぞ!そんな事したら何かに負けた気になる。


「あらあら……口の中の物飲み込んでからゆっくり喋りな」


 おかん!!?私の態度見て察しろよ!!やっぱ馬鹿だ!ウチのおかん馬鹿だ!!

 そしてサクラが口の中の物を飲み込むのを待つための沈黙が訪れる。


「私もデザートにそのケーキもらってもいい?」


「てめぇ……絶対さっきモゴモゴ言ってた時と違う事言っただろオイ?ってかどんだけ厚かましいんだよコラ」


 問答無用でサクラの胸ぐらを掴む。掴まれたサクラ当人は、何故か不思議そうな顔をする。


「ごめん『こういう時はボケた方が裕美様の心を掴めますよ』ってヴィグル社長に言われてたから、私なりにボケてみたんだけど……間違ってた?」


 あのクソ魔族の入れ知恵かよ!!?


「……そうだな、ヴィグルのそういうアドバイスは話半分くらいに聞いとけ」


「あら?冗談だったの?でも別に構わないわよ。ちょっと待っててね、今ケーキ切ってくるから」


 そう言いながら、台所へとケーキの箱を持って引っ込んでいくおかん。

 ああ、やっとペース乱されずに会話ができるよ……


『ねぇ、魔王としてのアナタに話があるんだけど、ここで話してもいいの?』


 突然サクラの声が頭に響いてくる。


『ヴィグル社長からの伝言もあるし……アンタみたいに馬鹿げた魔力持ってないから、ずっと念話は疲れるのよ。話してもいいなら口頭で伝えたいんだけど……いい?』


 ダメに決まってんだろオイ!!

 ってか私その念話とかできねぇし!でも便利そうだな、後でサクラに教わって習得しとくか……って、いやいや!今はそんな事考えてる場合じゃなくて!!?

 

 私は両手を使って大きくバツ印を作る。ついでに『ちょっと待ってろ』という合図を手で送る。


「おかん!明日休みだし、今日はもう遅いからサクラに泊まってってもらおうかと思うんだけど問題ないか?」


 台所に向かって叫んでみる。


「サクラちゃんの両親がいいって言うならいいけど……じゃあとりあえず切ったケーキはアンタの部屋に持っていく?」


「サクラの両親の許可は取ってあるから問題ない!ケーキは適当なタイミングで取りにくるから、冷蔵庫にでも入れといてくれ!」


 おかんからの問いかけに即返答して、サクラの手を掴んで、私の部屋へと連行する。


「私……両親の許可取ってないけど?」


 マジメかコイツ!?


「両親ってかお前の場合、幸が保護者代わりだろ?幸だったら私が命令すれば一発OKだから何も問題ねぇよ」


 微妙に納得できなさそうな表情をしつつも、サクラは私のベットに腰を下ろす。それを確認しつつ私は勉強机の椅子に腰を下ろす。


「んで?私に伝える事ってなんだ?」


 単刀直入にサクラへと質問する。


「えっとね……何でも異世界から2つほどの魔力反応が、この世界にきたらしいのよ」


 ……えっと、うん、知ってる。


「それでね、何かおかしな行動をとらないか監視してたらしいんだけど、その魔力反応の一つを、つい数時間前にロストしちゃったらしいのよ」


 ……うん、すっげぇ身に覚えがあるわ。


「突然魔力反応が消えるなんて事は普通はないのよ。その場で即死したとしても、魔力の残滓は残るものなのよ。もちろんアンタ達魔法少女が変身を解いても同じで、少しの間残滓は残るのよ……それなのに、突然消えたのよ」


 ……転移魔法で一瞬にして5000㎞くらい移動したうえに、魔力のほとんどを封印したからなぁ……追い切れなかったかな?


「今は、魔王軍の魔力分析班が必死になって探してる最中だから、とりあえず経過と現状だけでも魔王軍トップであるアンタの耳に入れるべきだろうっていうヴィグル社長のお達しで、私が来たのよ」


 そうだな……もし生きてれば、そのうち魔力探知に引っかかるんじゃないかな?生きてれば……あの中二病さんが死んでたら、ヴィグル達は一生探し続けんのかな?それはそれで面白いな。


「それと、これはヴィグル社長からの伝言なんだけど……」


 そういや、ヴィグルからの伝言もあるとか言ってたな?この現状報告以外で何か私に伝える事が他にあるのか?


「えっとね『裕美様の仕業ですよね?』だって」


 バレてんじゃん!!?


「そうなの?」


 念を押すようにサクラが迫ってくる。


「ヴィグル社長をはじめとして……まぁヤガミはどうでもいいとして、魔力分析班皆、このままだと2・3日寝れない状況になりかねないのよね……それが実は上司である魔王のせいだったとかはさすがにないとは思うんだけど……」


 責められてる?もしかして、私今すげぇ責められてる?


「実はあのケーキも、貰い物じゃなくて、ヴィグル社長がこの家の皆と食べようと思って買っていた、ちょっと早めのクリスマスケーキだったのよね……」


 …………


「……適当だったから経度は覚えてないけど、太平洋上の赤道周辺を調べてくれってヴィグルに伝えてくれ」


「協力感謝するわ!」


 私の発言に、サクラは一言だけ礼を言うと、そのまま窓から外に飛び出して、夜の闇へと消えていった。


 ……あの言い方は卑怯だろ?


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