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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第五話 裕美攻略法

 転移魔法でノゾミちゃんの家の前へと戻ってくる。

 そこでは、壊れた窓ガラスを、浮遊狐と幸の二人がかり……いや、正確には1人と一匹だけど、ともかく、浮遊狐と幸の魔法で修復しているところだった。ってか、コイツ等いれば、壊した物何とかなるのか?


「うりゃぁ~!!ただいま~~!」


 直せるってのがわかってれば遠慮なく壊せるってもんだ。

 私は、直してる最中の窓ガラスを蹴り破って、ノゾミちゃんの部屋へと入っていく。


「ですよね~……裕美様ですもんね~……何となくこうなるんじゃないかって思ってました……」

「どこまでクソみたいな性格なんだキミは!!何でそう人の嫌がる事ばかりをやろうとするんだい!?」

「まぁ直るなら何でもいいッス。ってか裕美さん上機嫌ッスね?あの人殺したちゃったんスか?」


 まさに三者三様な反応だった。

 そして部屋のなかに美咲の姿はなかった。逃げたまま帰ってこない気だなアイツ。


「そう怒んなよ獣。私は『人の嫌がる事を率先して行える人間になれ』って小さい頃から言われてて、それを実践できる人間になっただけだっての」


「裕美様、意味をはき違えてますよ……『人の嫌がる仕事を~』ってのが正しい意味ですよ」


 まさかの幸からのツッコミが入る。……いや、そんな事改めて言われなくても知ってるよ。ボケに対してマジレスすんのは勘弁してくれよ。


「それはそうと、彼女をどうしたんだい?ノゾミが言うように殺してしまったのかい?そうなってくると死体の回収とか色々と厄介なんだけど、どこに遺体を放置してきたんだい?」


 何かその言い方……私を死体遺棄の常習犯みたいな異常者のように言うのはやめてくれ。


「今落ちてる最中だろうから、まだ死んではないと思うぞ……たぶん」


 とりあえず現状を伝えてやる。


「落ちてる……ってどういう事ッスか?」


「魔力を軽く封印した状態で成層圏から落としてみたんだよ。あ、そろそろ着水する頃だろうから、死体になるか、生きて逃げ出すかがわかるぞ」


「私の時に、その方法思いつかれなくてよかったって感想しかでてこねぇッス……」


「魔力さえ封印されなければ、ちょっとしたスリリングなスカイダイビングってだけだぞ……やってみるか?」


「全力で拒否するッス!」


 黙々と窓修復作業をしている幸と浮遊狐を放っておいて、ノゾミちゃんとの喋りに興じる。


「そういや腕折れてたみたいッスけど、もう大丈夫なんスか?」


 ああ、そういやそんな事もあったな。


「私の回復魔法なめんなよ。もげた腕でも一瞬で治せるんだぞ。折れた程度なら変身直後の自動回復魔法(オートリジェネ)で即全快よ!」


 得意げな顔で、左腕を振り回してみせる。


「……裕美さんの攻略法ってあるんスか?」


 呆れたような表情で、ノゾミちゃんがつぶやく。

 う~ん……変身前に倒せばいいんじゃね?


「おそらくだけど、ユミを倒す事は不可能だと思うよ。だからこそ僕等の世界のお偉いさん達は、ユミを初の人間災害認定したんだよ」


 修復作業をしながら浮遊狐が会話に加わってくる。


「変身したユミの防壁は、どんな近代兵器を用いても破れないだろうし、唯一通じるのは防壁を中和できる魔法攻撃だけなんだけど、反魔法(アンチマジック)なんていう防御方法を取ってるせいで、魔法攻撃は全て無効化されてしまう……バカげた話だよ。魔法でしか倒せないのに魔法を無効化されるんだからね」


「……どんなチート性能してんスか?ゲームでそんな魔王(ラスボス)出てきたら、即クソゲー扱いされるッスよ」


「しかも、何か間違いが起こって偶然攻撃が通ったとしてもダメージは即自動回復魔法(オートリジェネ)で全快されるっていうオマケ付きなんですよね?」


 何故か幸まで会話に加わってくる。


「……クソゲー確定ッスね」


 私の生き方をクソゲー扱いすんのはやめろや!?


「おいおい!人の人生クソゲー扱いする前に、お前等には変身前に倒すって選択肢は出てこねぇのかよ」


 私の叫びに、3に……2人と1匹が呆れたような表情をする。


「あの……裕美様。変身前でも裕美様の自動防壁破れる人ってそうそういないと思いますよ」


 いや……そんな事ないだろ?さっきの中二病さんに破られたし、ポチにも破られた事だってあるぞ。


「ユミ……言っておくけど、さっきの彼女や魔王軍四天王レベルは、全異世界合わせてもトップレベルの実力者だからね。それぞれが、一人でも世界を支配できるレベルなんだよ。それを基準に考えるのはやめた方がいいよ」


「つまり変身前でも、裕美さんもそのレベルに属してるって事ッスよね?やっぱクソゲーじゃねッスか?」


 ってソレ、ノゾミちゃんに言われたくねぇよ!?そんなレベルの四天王3人を相手して圧倒してたじゃねぇかよ!お前の魔法特性もチートだろ!?魔力総量は低めだから燃費は悪いかもしれんが……


「そうだね。そんな同レベル以上の相手の自動防壁を破ったうえに即死させる攻撃を繰り出さなくてはならない。即死させられなければ……結果はさっきの彼女と同じ運命をたどるだろうね」


「いや待てって!?それでも私が変身しなければ倒せるだろ?な?これならクソゲーじゃないだろ?」


「……裕美様、攻撃くらっても『キレずに』『冷静に』『落ち着いて』変身せずにいられる自信はあるんですか?」


 ……ないな。


「いや……でも……何かしらあるだろ?攻略法?何かこう……光の玉とか闇の4戦士とか?」


「……3作品目が好きなんスか?」


 うるせぇ!そんな事にいちいちツッコミ入れんなよ!例えだよ!察しろよ!好きだよ!


「キミの攻略法があるのならとっくに実践されているよ。それにさっきも言っただろう?キミを倒す事が不可能と判断されたからこその人間災害なんだよ」


 ダメだ……もう何も言えねぇ……


 そこで会話は途切れ、幸と浮遊狐は窓の修復作業に戻る。


「ってか、やけに時間かかってね?いつまで直してるんだよ?」


 あまりに時間かかってるから、ついツッコミを入れてしまう。


「裕美様がさらに壊さなければ、もう少し作業すすんでたんですけどね……」


「割れたガラス片を全部集めてジグソーパズルのようにして修復すれば魔力の消費は抑えられるけど、それでは時間をくいすぎるし、細かい破片まで回収はできない。だから、魔力を大量に消費する創造魔法で、ゆっくりと窓ガラスを作っていくしかないんだよ。急ぐと急速な魔力消費で動けなくなってしまうからね……それなのに途中でキミにふりだしに戻されたしね」


 幸と浮遊狐からの恨み言を浴びせられる……言わなきゃよかった。

 ……ん?ちょっと待てよ?コレって再生魔法効果あるのか?


「お前等ちょっとどいてくれ」


 私はそう言って、幸と浮遊狐をどかして、窓枠に再生魔法を使ってみた。


 私の思惑通り、あっという間に窓は修復された。

 無機物にも一応は元の状態の記憶ってあったんだな……


「やっぱり再生魔法使えば直るじゃん。お前等無駄に時間かけすぎだろ?」


「……こんな魔法使えるのはキミくらいだよ」

「……この魔法使ったせいで希美さんがどうなったか覚えてないんですか?」

「……やっぱクソゲーっスわ」


 あっさり直して時間短縮してあげたのに、全員から冷ややかな言葉を浴びせられる。

 ちくしょう!やらなきゃよかったよ!!


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