第三話 来訪者の経歴
サクラ二号は中々帰ってくれなかった。
まぁ、帰る場所がないからなのかもしれないけど、とにかく「どんな些細な事でもいいから女神様の情報があったら教えてほしい」ってな感じでしつこかった。
とりあえず「何かわかったら教えてやる」という事で納得してもらい、お帰りいただいた。
ってか「教えてやる」って言っても連絡先とか何も知らないなら、教えられないと思うんだけど、その辺わかってんのか?
そんなわけで、サクラ二号が帰ったのは、ノゾミちゃんが帰って来る2・3分前。
サクラ二号にだいぶ粘られたせいで、ノゾミちゃんが帰って来るまで、ゆったりしてる、というプランが台無しである。
「何か部活やって帰ってきた私より疲れてるッスね?」
ほんと疲れたよ。アイツしつこすぎ。
色々と察してくれたノゾミちゃんに労われつつ、ノゾミちゃんの部屋へと向かう。
「やぁ、皆そろっているね……待っていたよ」
そこには偉そうに浮かんでいる、浮遊狐がいた。
「あ?何偉そうにしてんだよ獣?ってか目が覚めてるならとっととどっか行けよ?何で人様の家でくつろいでんだよ?」
「相変わらずの口の悪さだね。ともかく、僕がどこで何をしていようが僕の自由だろう?」
生意気にも口答えしてきやがった。
「まぁまぁ裕美様、怒りを鎮めてください。キューちゃんが『待ってた』って事は、私達全員に何かしら話があったからではないですか?」
「さすがはサチだね。察しが良くて助かるよ。キミ達全員の反応が集まってたんで、いずれここに来るだろうと思って、待たせてもらっていたよ」
幸って察しが良いか?まぁ空気が読めない事は確かだが……
「ええと、まずはミサキ。事の経緯は聞いているかい?」
この中で唯一、浮遊狐から説明を聞いていない美咲への確認作業が行われる。
そりゃあ、持ってる情報量が違う連中に話をするのは面倒臭いからな。全員均等に情報持ってるのが一番話しやすい。
「えっと……たぶん。アレだろ?また異世界からコッチの世界に来た奴がいるって話だろ?」
まぁ美咲の頭じゃ、詰め込んでおける情報量なんてそんなもんか。
「……そうだね。概ねそんな感じであってるよ」
あっ!?浮遊狐、美咲の馬鹿さに匙を投げたな!?
「実は、向こうの世界を担当している仲間から、対象の情報が入ってきたんで、それを伝えておこうと思ってね」
対象の情報って……その対象って、さっきのサクラ二号じゃねぇの?
「対象の名前はエフィ・イリファ。19歳の女性だ」
よかった……今回は和名じゃなかった。また和名だったら、本当に異世界人かどうか疑うとこだったよ。
「物心ついた時には自分の魔力を自覚して、怖くなって14歳まで引きこもり生活をしていたらしいんだけれど、何がキッカケかはわからないが、急に自分は神に選ばれた存在なんだという思考になったらしい」
え?何がキッカケって……ただ中二病発症しただけじゃね?年齢的にも適齢期だし。
「前に説明した通り、その世界は魔法が存在しない世界なんだ。そんな世界で魔法を使って奇跡のような事を体現して、新興宗教をつくって自らが、その教団の教祖になったんだ」
ああ、後々黒歴史になるやつね。
「恐ろしいのはその後だ。彼女は、彼女に異を唱えた国を一人で滅ぼしたんだ。何度も言うが魔力が無い世界だ。科学技術もこの世界ほど発達していない……彼女に抵抗できる者は一人もいなかった」
力を持っちゃった中二病患者は限度を知らないから、たちが悪いなぁ。
「彼女はその勢いで、彼女を快く思っていない態度を示していた国も、見せしめに滅ぼした。彼女は恐怖で世界を支配したんだ」
「何か裕美さんみたいな人ッスね」
ちょ……!?待てオイ!!?
「だな。やってる事裕美と同じだし」
「何言ってんだお前等!?いつ私がコイツと同じ事したよ?この世界平和だぞ!」
馬鹿な発言をしている二人に抗議の声を上げる。
「裕美様……国を一つ焼け野原にして、核でも倒せないアピールして無条件降伏を迫って、現在各国で恐怖の代名詞にもなっている、恐怖と武力で世界を支配してる魔王は誰ですか?」
……私か?
「いや……でもそれはヴィグルが……」
「バックに魔族がいるかいないかだけで、基本やってる事は同じじゃねッスか?」
ちくしょう!何も言えねぇ!!
「ともかく、そんな事があったんだ。そこで僕達の世界が介入を始めたんだけれど、5年間彼女を倒せずにいるんだ」
私は3年でもうんざりしてんのに、5年かぁ……ストレスで鬱にでもなってんじゃねソイツ?
「そして、ついこの間、史上初の人間災害認定を受けた人物が異世界に現れた事を知ったらしいんだ……」
ん?何か嫌な予感がしてきたぞ。
「どうやら彼女は、自分の方が優れた人間だ、という事を証明したいがために、この世界に来たらしいんだ」
「標的私じゃねぇかよ!!!?」
じゃあアレか?サクラ二号が言ってた『女神様』って私の事か?そういや『女神様を倒す』みたいな事も言ってたな……
「そうなんだ。そこが問題なんだよ。彼女はキミを狙ってきているんだ。ただ、キミが動くと色々と厄介なんだ」
じゃあどうしろってんだよ!?
「そこで皆にお願いしたいんだ。彼女は強いが、キミ達皆で戦えば決して勝てない相手じゃない。ユミが何かやらかす前に、キミ達3人で……いや、この際、異世界から来た子や魔族達でもいい……とにかくユミじゃなければ誰だってかまわない。彼女を倒してくれないか?」
どんだけ私に戦わせたくねぇんだよ?
いや、まぁ楽できるなら、別にそれでもいいんだけどさぁ……何か釈然としないなぁ。
「アタシは別にかまわないよ。何か面白そうだし」
真っ先に賛同する美咲。理由が「面白そう」ってどんだけ馬鹿なんだよ……
「美咲さんが参加するんでしたら、私もお付き合いしますよ」
幸は主体性がねぇなぁ……
「私は、一人を大勢で襲うのにはちょっと抵抗があるッスけど、裕美さんに暴れられて、この町が消されるのは勘弁してほしいんで、加勢するッス」
ノゾミちゃんはノゾミちゃんで、私の事を何だと思ってんだよ?
「ありがとう皆……とりあえず、彼女の格好を伝えておくよ。向こうの世界だと、教祖をしていただけあって、もの凄い派手な司祭のような格好をしたままコチラの世界に飛んだらしいんだ」
ん?もの凄い派手な司祭のような格好?
さっきのサクラ二号はどっちかといったら、質素なシスターみたいな格好してなかったか?
『なぁキミ達?そろそろ話は終わったかな?』
突然、頭の中の響くような、魔力による言霊が聞こえてきた。
『外は寒いんだ、悪いんだけど勝手に上がらせてもらうよ』
そう言うと、そのまま、魔法でノゾミちゃんの部屋の窓をすり抜けて女性が一人入ってくる。
その格好は、黒いハイネックのセーターに黒いロングコートを羽織り、黒のミニスカートに黒のタイツという『黒=格好いい』的な中二病全開な格好だった。
……ていうか誰?
「おっと、すまないね。この世界で目立たないように擬態していた格好のままだったね」
いやいや、全身黒づくめは意外と目立つぞ。
ともかく、中二病っ子はそう言うと、足を一度トンッと鳴らす。すると、それに合わせて服装がガラリと変わる。
その格好は……
「強い魔力反応が固まっていたので、突然お邪魔させてもらったよ。さて……この中で、史上初の人間災害についての情報を持っている子はいるかな?全然サーチ魔法に引っかかってくれないんだ。知っていたら教えてほしいな」
確かに司祭っぽい格好かもしれないけど……派手すぎだろコレ?
って事はアレか?コイツが、さっき浮遊狐が話してたエフィ・イリファって奴なのか?
ちょっと待ってくれ?じゃあ……さっきのサクラ二号は何者だよ!?




