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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
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第二話 サクラ二号

「あの……失礼を承知で、あなた達にお願いがあるのですが」


 食品サンプルにハグしている不審者を無視して、店に入ろうとした私達に声をかけてくる不審者。


「あ、間に合ってるんで結構で~す」


 適当にあしらって店のドアを開ける私。こういうヤカラは相手にしないのが一番……


「何でしょうか?私に出来る範囲でしたら力になりますよ」


 さぁ~~~ちぃ~~~~!!!

 ほんと空気読めよ!?厄介事は避けろよ!?何で見えてる地雷を踏み抜いて行こうとするんだよ!!?


「お気持ちで構いません……少しでもいいのでお金を恵んでいただいてもよろしいでしょうか?」


 だよね。うん!どんな事言われるか、だいたい予想できてたわ。


「あ……お金でなくても、食料を少々でも構いません。ここ二日間、水しか口にしていなくて……」


 はい!その発言も予想できてたし!ってかそんなの知らねぇよ!ダム枯渇するまで永遠と水飲んでろよ!


「それは大変でしたね……あの、私達これから、このお店で食事をする予定ですので、ごちそうしますので、よろしかったら一緒にどうですか?……裕美様、いいですか?」


 あ~はいはい……ダメ人間製造機の幸が、そういう行動にでる事も予想できてたし……


「私は金出さねぇぞ。幸が奢るんだったら勝手にしろ」


 吐き捨てるように言って、私はそのまま店の中に入る。


「この子もサクラちゃんみたいになるかもな」


 一緒に入店しながら美咲がつぶやく。

 幸の事を考えると、安易に否定できない……


 とりあえず私達は4人掛けのテーブルに座る。

 ノゾミちゃんは部活やってから来るっぽいので、適当に飯を食いながら待ってよう、というのが当初の予定ではあった。

 まぁ現在、余計なのが一人加わってるけどな。


「おばちゃ~ん!ラーメン・チャーハンセット2つね。あと取り皿4つちょうだい」


 取り皿4つは、量の多いノゾミちゃんちのメニューを皆で取り分ける用である。


 さて、注文も済ませたし……


「なぁ?単刀直入に聞くけど……お前、異世界から来たろ?その程度の魔力でよく来れたな?」


 そう、このサクラ二号の魔力は、魔王軍の元四天王連中とほぼ同じくらいの魔力だった。浮遊狐の話だと、私ほどじゃないけど、そこそこ強いって事だったのにだ。

 いや……元四天王も普通には強いんだろうけど、浮遊狐がわざわざ私達に警告しに来るほどの強さとは思えなかった。

 まぁノゾミちゃんみたいな例もあるから、魔力が低い=弱い、って事もないのかもしれないけど。


「ワタクシとした事が、空腹で注意力が散漫になっていたみたいですね。目つきの悪いアナタと、羽の生えているアナタの魔力……ワタクシでは太刀打ちできないほどの力ですね……」


 一息ついてリラックスしていたサクラ二号は、途端に警戒心むき出しの表情になる。


「だ、大丈夫ですよ!何かしたりはしませんから!ねぇ裕美様!」


「それは返答次第だろ?……オマエ、何でこの世界来た?」


 場合によっては変身するつもりでいた。ノゾミちゃんみたいなパターンもあるから、戦闘になった場合、戦力の出し惜しみで不利になるのも面倒臭いので、相手の勝てる可能性は0.1%ですら残すつもりはなかった。

 幸い、時間帯のおかげか、私達以外の客は店にいなかった。変身するとこを見られるとしたら、ノゾミちゃんの両親だけだ。

 この店は魔王としても、魔王軍連中と一緒にちょこちょこ利用している。前にクラスの連中が言っていた『魔王がいる時は大間裕美がいない、大間裕美がいる時は魔王がいない』を何度もこの店で実践している。なので、ノゾミちゃんの両親に今更正体バレたところで『やっぱりね』程度にしか思われないだろう。


「……女神様が、この世界にはいるはずなのです。ワタクシは女神様を探すためにこの世界に来ました」


 …………はい?

 いや……正直、その答えは想像してなかったわ。

 何この子?電波系?痛い子?


「ねぇねぇ?その女神様を探して、見つけたらどうすんの?」


 怖いもの知らずの美咲が会話に加わってくる。


「……あまり大きな声では言いたくはありませんが、討伐いたします……ワタクシは神殺しをしようとしているのです」


 やっぱ痛い子だ。

 完全に中二病特有の症状が出ちゃってんじゃんコレ?


「ワタクシを止めますか?あなた達お二人の力でしたら可能ですよ……」


「あ~……えっと……うん、がんばれ!」


 おい美咲!余計な質問しといて、お前までドン引きしてんじゃねぇよ!?


「はいよ!ラーメン・チャーハンセットお待ち!」


 空気が固まり、会話が完全に止まってしまったタイミングで、注文していた料理が、ノゾミちゃんの母親の手で運ばれてくる。

 ナイスタイミングだよおばさん!


「あら?今日は魔王様は来てないのねぇ……まぁあの人も忙しい人だからしょうがないんでしょうけどねぇ……裕美ちゃん」


 『いい加減バレてるよ』というようなニュアンスでからかってくるノゾミちゃんのおかん。まぁ最近は魔王としての演技……というか声色変えて喋るの疲れてきたからやってなかったから、あきらかに私と同じ声なんで、ある意味バレてない方がおかしいレベルではあったんだろうけど……


「……『魔王様』?この世界には魔王もいるのですか!?」


 しまった!!今一番投下されちゃマズイ話題だった!!


「あら、アナタかわった服を着てるわね。もしかしてサクラちゃんと同じで異世界から来た子?」


「……サクラ、さん?異世界から来た?」


 ああ……やめておばさん……どんどん爆弾投下していかないで。


「やっぱり異世界から来た子なのね?じゃあ魔王様知らなくても仕方ないわね。魔王様はねぇ、全世界で最強の人なのよ……ねぇ裕美ちゃん」


 やめて……おばさん、マジでやめて。


「じゃあ私は仕事があるから戻るけど、希美が帰って来るまでゆっくりしていってね」


 爆弾を投下するだけ投下して、ノゾミちゃんのおかんは厨房へと戻っていく。

 完全に凍り付いた空気は解凍されたけど……解凍しすぎて炎上しちゃってるよコレ!


「あの!サクラさんという方は……」

「ワカリマセン!」


「先程の御婦人の口ぶりですと、アナタは魔王と知り合い……」

「ワカリマセン!!」


 もうヤダ!私は厄介事に積極的に絡んでいくような奇特な人間じゃないんだよ!しかもコレってアレだろ?不可抗力で巻き込まれても、浮遊狐に後から小言言われたりするパターンのやつだろ?マジで勘弁してくれよぉ……


「裕美様……そうやってイジメるのはよくありませんよ。私でよければ、裕美様の代わりに答えますよ」


 身近にいたよ……『厄介事に積極的に絡んでいく奇特な人間』。


「サクラさんというのは、半年くらい前に異世界からこの世界にやってきた人で、元の世界に帰れなくなったので、今は私と同棲しています。魔王様は……私達の上司のような立場の人です」


 幸が、丁寧に簡潔に説明する。


「そうですか……どうやらワタクシが探している女神様とは関係がなさそうです……」


 あってたまるかよ!!?


「人探しでしたら、力になれる範囲でよければ、私達も手をお貸ししますよ……ねぇ裕美様」


 そうやって、困ってるヤツを放っておけない性格は美徳だよ幸……そういう部分は素直に尊敬できるよ。


「……飯食ったら帰ってもらいなさい!!」


 すまないけど、尊敬はできても、憧れもなければ実践する気も、私には毛頭無いんだよ。


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