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魔王少女  作者: mizuyuri
第三部
67/252

プロローグ

「お前さぁ……どのツラさげて私の前に立ってんだ?」


 いや……正確には立ってはないし、ツラも表情がよくわからないんだけどね。


「僕だって、正直キミに会いたくはないよ。でも、これは僕の任務なんだ……すまないけど、話だけでも聞いてくれないかい?」


 私の前には、数日前に「もうキミとはお別れだ」と嬉しそうに話していた浮遊狐が立って……いや、浮いていた。

 時刻は日付をまたいだ真夜中。そろそろ寝ようかと思っていた私の部屋へと、魔法で窓をすり抜けて不法侵入してきたのだ。


「僕達の任務は知っているよね?魔力を持たない世界で、魔力を持った者が暴れだしたりした場合、現地住民の魔力を引き出して、悪者に対抗できる術を与える事……」


 平たく言えば「テメェ等の世界の厄介事はテメェ等で何とかしろよ」って事だな。


「この世界だけではなく、他にも魔力を持たない世界というのは無数にある。……そんな世界の一つで、突然変異で魔力を持って生まれてきてしまった子がいたんだ。魔力を持たない世界で、ただ一人だけ魔力を持っていたら……どういう行動にでると思う?」


 浮遊狐は、演技がかった口調で私に質問してくる。……面倒臭ぇなぁ……


「まぁ……他人と違う自分を悲観して引きこもりにでもなるか、他人と違う自分に酔って暴れるか……色々考えられるけど、その辺は性格によるんじゃね?」


 適当にお茶を濁す回答をしておく。


「そうだね、概ね正解だ。その子は幼い頃は、自分の力を恐れて引きこもっていたのだけれど、引きこもり中に何かを悟ってしまったらしく『世界を正しい方向へと導く神に選ばれた存在』と言って、傍若無人な行いをし始めたんだ……その辺はキミと同じような性格になってしまった、と言えばわかりやすいかもしれないね」


「おい!今、最後の一文付け加える必要あったか?」


 ……にしても、引きこもってオドオドしてたような人間が、何かに影響でもされて、今では私みたいな性格に……ん?何か身近にそんな経路をたどった馬鹿が一人いたような気が……


「とにかく、暴れだしたその子を何とかするために、僕の仲間の一人がその世界に派遣されたんだ」


 私のクレームは無視かよ!?


「ただ、その子は、キミほどではないのだけれど、結構強くてね、なかなか現地の魔法少女達は、その子を倒す事ができずにいたんだ」


 何でちょこちょこ私との比較を挟み込んでくるんだよ?


「そして、つい先日、その子は世界を越える魔法を習得してしまったんだ」


 あ……これダメなやつだ。嫌な予感しかしない。


「そして、その子がやってきたのは、この世界なんだ」


 ですよね~!この流れはそういう流れだよねぇ。


「この世界には、既にキミや他の魔法少女、異世界人など、その子に対抗できる戦力はいるのだけれど、世界レベルで見ると『現地人は魔力を持っていない世界』に分類されるため、この世界の担当者である僕が、再びやってきたのさ」


 まぁ、私周りの特例にあたる連中以外は皆魔法なんて使えないしな。


「それで何?つまりは、そいつを何とかするために私の力を貸せ、とか言いに来たのか?」


 随分とむしのいい話だな。私の事危険人物扱いして殺そうとしてたクセに……


「いや、そうじゃないよ。むしろキミに手を出してほしくないから来たんだよ」


 …………はい?


「『人類災害』であるキミが動くと、色々と事後処理が面倒臭くなるんだよ。キミが動いたところで、また、トラウマ持ちの子が増えてしまう上に、僕が上に出す報告書がとんでもない量になるし、事後処理部隊としての仕事が増えるしで、良い事が一つもないんだよ」


 おい、それって全部テメェ都合じゃねえかよ?


「ミサキやサチ、ノゾミには手を貸してもらえるように打診はするつもりだけど、キミだけは絶対に……絶対に!動かないでほしいんだ」


 二回も「絶対に」を言いやがった……そんなに重要か?

 ってか、コイツの言う事に素直に従う必要なんてないよな?むしろ積極的に手出しした方が、コイツが困るっていうなら……


「その顔……やっぱりキミは最悪な人間だね……」


 ……考えがバレたか。


「気のせいだろ?まぁ安心しろって、こっちだって面倒臭い事は避けたいんだよ……とは言っても、手を出されたら自己防衛くらいはするぞ。それくらいはいいだろ?」


 まぁ正直な話、正体がバレる危険を冒してまで、積極的に絡んでいく案件でもないだろ。

 ってか、私が何とかしなくても、私の周りに、何とかできる連中が転がってるしな。


「う~ん……キミの場合『自己防衛』レベルで済む行動で終わるとは思えないけれど……襲われても何もしないでほしい、っていうのは酷なお願いだろうし、仕方がないね」


 いやいや、そんなお願いされても、コッチは従う気なんてさらさら無いし。


「それじゃあ、キミに伝えるべき事は伝えたんで、僕はもう行くよ。またこの世界で魔法少女の選定をしなくちゃならないんで忙しいんだ」


 ……は?


「おい!!?ちょっと待てっ!!」


 私の制止は届く事なく、浮遊狐は来た時と同じように、魔法で窓をすり抜けて帰っていった。


 ……魔法少女、まだ増えるの?


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