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魔王少女  作者: mizuyuri
第二部
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第二十二話 魔王ファンクラブのサバト

 変身を解いた状態で急ぎつつゆっくりと教室へ向かう。


 あまり早く戻りすぎると『魔王が帰った途端に戻ってくる裕美ちゃん』という、色々と疑われてもおかしくない状況になるだろうと思われるからである。

 とはいっても、遅すぎても不審がられそうなので、微妙なさじ加減が重要だろう。


 ……とか何とか考えてるうちに教室の前にたどり着く。

 そりゃ校内をちょっと移動するだけなんだから、あっという間に着くに決まってるわな。


 とりあえず、教室内の状況を確認するため、ドアの隙間からコッソリと様子を覗き見る。


 そこでは、4つほど机を合わせた周りで円形に並んだクラスメイト十数人が、机に置いたスマホを無言で眺めている。


「……って、どういう状況だよコレ!?こえぇよ!何の儀式だよ!?」


 正体がバレるバレないとかいう事など何も考えずに、ツッコミ最優先でドアを勢いよく開けつつ叫ぶ。


「あ、裕美様おかえりなさい。今忙しいので後で説明しますね」


 謎の儀式に加わっていた幸が一言だけ返し、再び儀式を続ける。


「……いや、説明してくれよ。私がいない間に何があったんだよ?」


 独り言をつぶやきながら自分の席へと向かう。


「お疲れ~……アレに裕美も混じらねぇの?」


 何故かまだ変身したままの美咲が声をかけてくる。

 何というか……学校の席に座ってる魔法少女ってすげぇ違和感あるな。


「生憎だけど私は黒魔術には疎いんでね、儀式の作法とかまったく知らんし」


「その儀式やってんの魔王ファンクラブの面々だぞ。裕美も会員になってなかったっけ?」


「なってねぇよ!?何が悲しくて自分のファンクラブに入らなきゃなんねぇんだよ?」


 ってか魔王ファンクラブいつの間にあんなに会員集めたんだ!?

 このクラスだけで人数2桁いってるじゃんか?

 いや、まぁアノ輪の中に幸とミキちゃんがいた時点で何か嫌な予感はしたんだけどな……


「さっき魔王降臨した時に盗撮しまくった写真の、どれが一番良い写真かを決めてるらしいよ」


「一番良い写真?咄嗟にここからスマホで撮った写真だろ?距離ありすぎて、ピンボケ写真しかとれないだろ?」


 たぶんバズーカ砲みたいな一眼レフカメラじゃないと、ちゃんとした写真撮れないだろ?


「その辺は問題ないっぽいぞ。さっき、さっちゃんが『どんなに引き延ばしてピンボケになった写真も超高解像度で印字される』って魔法を編み出してたみたいだから」


 才能の無駄遣い!!!?

 もっと実用性のある魔法編み出せよ!

 ……いや、これはこれで実用性あるかもしれんけど、幸の現状で考えるなら、もっと戦闘に特化した魔法を編み出せよ!


「ってかそんな魔法作ってまで、一番良い写真決めてどうすんだ?全員に転送して待ち受けにでもすんのか?」


「いや、魔王公式ファンクラブホームページのトップ画像に使うって言ってたぞ」


 肖像権!!!?

 せめて許可取ってから行動に移せよ!

 ……いや、魔王にはそうそう会えないから直接交渉とかできないんだろうけど、せめて幸は許可取りに来いよ!?何が『今忙しいので後で説明しますね』だよ!


「ちなみに今は、登場した時のすげぇ決め顔してる写真か、空気椅子に座ってゴミを見るような目でノゾミちゃん見下してる写真の二択になってるみたいだな」


 証明写真みたいなマジメなやつとまでは言わないけど、もうちょっと普通の写真にしてほしいのだが……


「ってか美咲……オマエまさか、会話を魔法で盗み聞きするためだけに変身解いてないのか?」


 黒魔術集団改め魔王ファンクラブの面々は、外部に内容が漏れるのを恐れてか、密集してすげぇコソコソ話している。

 まぁ外部に内容が漏れたからなんだって話なんだが、当人達が楽しんでるんだったら、別に水を差す気はないけど。


「いやぁ魔法ってすげぇ便利だからさぁ……せめてアノ集会が終わるまではこの格好でいさせてくれ」


 別に否定してるわけじゃないんだから勝手にしてくれ。


「そういや今は本来授業中なハズなんだが担任どうしたんだ?媚薬でも飲まされて我慢できなくなってトイレにでも行ったか?」


「今日この後どうするかの職員会議だとか何とかで職員室いったぞ。常識的に考えればわたるだろこのAV脳」


「失礼な!エロ同人脳って言ってくれ」


「どっちだって同じだよ!?」


 まぁ冗談はさておき、教員がいない理由なんてそんなもんか。

 それにしても美咲の口から『常識』とかいう言葉が出てきた事に驚きだ。


「それはともかく、魔法で戦闘中の話聞いてたけど、ノゾミちゃんすげぇ怒ってなかった?何かしたの?」


「それがわからないから困ってんだよ」


 あ、いや、別に困ってはないか。ちょっと気になる感じではあるけど。


「裕美の知らないところで、魔族に何かされた経験でもあるんじゃね?」


「う~ん……魔族関連の事件・事故はたいてい私の耳に入るようになってるから違うとは思うんだけどなぁ……ってか、何か悪さすれば私に何されるか知らない奴がいるとは思えんし」


 だからこそ何で恨まれてるのかわからないんだよなぁ。


「じゃあアレじゃね?何されるか知らなかった時期に被害にあったんじゃね?今でこそ魔王軍って善人集団だけど、私が裕美にボコられた時期って、平気で悪さする魔族とかいたじゃん」


 それだ!

 いや、むしろ何で今まで気付かなかった私!?

 とりあえず、三年前くらいに、何か他人の人生狂わせるレベルの悪さしたヤツがいたかどうかをヴィグルに……いや、ノゾミちゃん当人を問い詰めればいいのか。


「美咲が言った可能性は高いかもな。とりあえず今夜あたりノゾミちゃんを調教しに行くついでに色々聞いてみるか」


「行動早いな。理由わかったら私にも教えてくれよ。それはともかくノゾミちゃんのあの感じで、戦力差わからせたり、恐怖心植え付けたりした程度で心折れるか?」


「正直わからん」


 そう、まさに今までにないパターンなせいで、何ともやり方がわからない。


 今までは、興味本位だったり、自分が選ばれたっていう選民思想だったり、憧れの魔法少女になれるからだったりと、何だかんだで似たり寄ったりの軽い理由で魔法少女になるヤツ等ばっかり……いや、もちろん私含めてだけど。

 ともかく、心底魔族に恨みがあるガチの理由な魔法少女はいなかった。


 だからこそ、今までと同じようなやり方で心折る自信がない。

 とはいえ、解決しなければ魔族側に被害多数で、蘇生魔法を使い続けなきゃいけなくなる私の心が折れる。


 まぁ……なるようにしかならんか。

 とりあえずノゾミちゃんから話聞く事を優先事項にして行動するか。


「それはそうと話は変わるんだけど……ファンクラブ連中の会話が面白い方向に進んでるぞ」


 コイツ……私と会話してる最中も、アッチの話盗み聞きしてたのかよ。


「今井さん魔王様の名誉魔族でしょ?この写真使っていいか確認したいから魔王様のとこ連れてってよ」


「いや、えっと……私、魔王様がどこにいるか知らなくて……」


「でも大間さんは魔王様呼びに行ったりしてるよね?」


「その……裕美様は魔王様に信頼されてるんで……」


「え?同じ名誉魔族なのに扱い違うの?」


「そ……そんな事はないですよ!魔王様にはいつもよくしてもらってます」


 幸……皆からめっちゃ責められてるじゃん。

 ってか嘘つくの下手そうだなぁ……大丈夫かコレ?


「ってか裕美ちゃんがいなくなるタイミングと魔王様が現れるタイミングって神がかってない?」


「あ、それ私も思った。前回もそうだったけど、大間さんと魔王様って同時に同じ場所には居ないよね?」


「もしかして魔王様の正体って裕美ちゃんなんじゃ……?」


「裕美さんが魔王様ぁ……?」


 やべぇ……超やべぇよ。

 そうだよね、やっぱそう思うよね。

 私が消えれば魔王出てきて、魔王消えれば私が出てくる。

 一度ならともかく二度も同じパターンだしね。


 うわぁ……ミキちゃんめっちゃコッチ見てるし……

 ああぁ~変な汗出てきた。


「いやいや、無いって。10回も20回も同じパターンだったならともかく、1・2回なんて偶然なレベルだって。ってかよ~く考えてみてよ?魔王様あんなドラッグ中毒者みたいな目つきしてないでしょ?」


 ミキちゃん……実は私の事嫌いだろ?


挿絵(By みてみん)


「あははは!言われてみればそうか」


「確かに、素面であんなイカレた目つきしてる人が二人もいてたまるかって感じだね」


 何笑ってんだよ?何納得してんだよ?

 お前等私を何だと思ってんだよ!


 あと、前の席で声を殺しつつも腹抱えて笑ってる馬鹿がすげぇムカつく。

 幸は幸で、顔を青くして『聞いてました……よね?』みたいな表情してるし……


 聞いてたよ!!

 お前等皆嫌いだ!チクショウめ!!


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