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魔王少女  作者: mizuyuri
第二部
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第十九話 食卓での煽り合い

「サクラさんおかえりなさい。あ、裕美様も一緒でしたか?遅くなっちゃいましたけど今、夕食作ってるんで裕美様も食べていきますか?」


 ノゾミちゃんとの一戦の後、幸の様子を見に急いで幸のアパートへと戻った私達は、何事も無かったかのようにいつもの生活をしている幸と遭遇する。


「よい心がけだ小娘。だが我は濃い味付けは好まんから気を付けて調理するがいい」


「あ、ごめんなさい。今ドッグフード切らしてるんですよ、かわりにぶぶ漬け用意しますね」


「うむ、ではもらってやろう」


「遠回しに『帰れ』って言ってるのわかりませんでしたか?」


 いつもと何も変わらないポチと幸のやりとりが行われる。


 ポチも、おそらくだが幸も、何だかんだでお互いを認めてはいるんだろうが、素直じゃないというか何というか……

 ってかもしかして、嫌味を言い合うのが、お互いに一種の挨拶みたいになってんじゃね?


 でも幸……異世界人のポチに『ぶぶ漬けでもどうどす?』の暗喩は通じないだろ。


「ケンカすんなってお前等。まぁ夕飯はせっかくだからもらっとくとして、メニューは何だ?苦手なもんだったら遠慮なく残すぞ、私は」


 と言っても、そこまで好き嫌いがあるわけでもないけどな。


「えっと……今はアジが旬ですので、アジの料理にしようかと思ってます。苦手ですか?」


「いや、大丈夫だ」


 まぁ、嫌いなもんは残すぞ発言自体、「いつも通りな雰囲気でいこう」ってな流れ、というか空気だったんで言った事なんで、特に意味はないんだよな。


「アジとは何だ?」


「向こうで言うところのシンヴォアみたな味の魚よ」


「ああ……焼いてしか食べた事ないが、調理すると何か味は変わるのか?」


「アンタ向こうでどんな食生活してたのよ……」


 異世界組は異世界組で何やら会話に花を咲かせている。

 ってか実は仲良いだろコイツ等。


「とりあえず今さばいたところなので、完成まで少し時間かかってしまいますが、アジのムニエルとアジのつみれのおひたし、それとアジのなめろうでも作ろうと思ってます」


 何というか……数時間前まで死体だったヤツがパッと作るメニューじゃない気がするんだが?

 それはともかく私の嫁になれ幸。一生ぐうたら生活送ってやるから。


「作りながらでいいんだけど、ノゾミちゃんの気に障る事……ってかマジギレさせるような事何かやったか?」


「何か?えっと……たぶんそこまでの事はやってないと思います。まぁ殺されといてなんですけど」


 まぁそうだよな……


「いやぁ、ポチがノゾミちゃんを追い詰めた時、ノゾミちゃん魔族に対して狂ったように怒ってたから気になってたんだよな」


「ん~……あれって単に、魔王より強くなったと思い込んでたあの子が、魔王でもない配下の一人にやられたのが気に入らなかっただけじゃないの?自分の思い通りにいかないからキレたってだけの現代っ子の典型的なパターンよ」


 異世界人のお前が現代っ子語るなよ!?

 でもなぁ……あの感じはもっと根深い感じなキレ方だと思ったんだよな。


「ちょっと待ってください裕美様!今何て言いました?」


 包丁を握りしめたままの幸が固まっている。


「ポチがぁ?ノゾミちゃんを?追い詰めたぁ~?」


 ああ、先程の闘いをまったく知らない子が一人いたんだった。


「いったいどんな卑怯な手段を用いたんですか!?闇討ちですか?トラップですか?」


 ポチとの勝負に勝つために、学校サボってまで他校にカチコミしたやつが「卑怯な手段」とか完全にブーメラン発言になってるぞ。


「いちおう普通には戦ってたぞ。隙を突くタイミングを狙って伏兵として用意してたサクラに一撃魔法打たせてたけど、それ以外は普通にポチ一人で善戦してたぞ」


「うわ卑怯!?いまだかつてないほどの卑怯さですね!一人で戦ってると見せかけて、実は2対1だったなんて!四天王の一人として恥ずかしくないんですか?というか一武人としてプライドはないんですかぁ?」


 自分がボロ負けして命まで奪われた相手を、ポチに倒されたのがよっぽど悔しかったのか、もの凄い罵倒と煽りを言い続ける幸。

 ポチのプライドを守るために言わないでおいてやってるけど、ポチのやつ自分のプライドを捨ててまで幸のためにがんばってたのになぁ……

 さすがコレはポチが可哀想に……


「負け犬の遠吠えというのを目の前で聞くのも中々におつなものだな……ん?どうした小娘?我の発言など気にせずにもっと吠えてていいのだぞ」


 煽り返したぁ!!?


「それはそうと。アノ魔法少女に勝てたのは、我とサクラとミサキという事になるのだが、あと一人四天王がいたハズなのだがな?唯一ボロ負けした四天王の名前は何といったかな?知っているかサチ?」


「チクショウ……ポチめ……ポチの分際で……殺して……絶対殺してやりますよ……」


 何やらブツブツと、ノゾミちゃんみたいな事言いながらキレだす幸。

 ってか最初に煽ったの幸だろ?

 煽り耐性低いんだから、煽り合いやめればいいのに……


「あ~……とりあえず落ち着けお前等。これ以上煽り合い続けると飯の時間が遅くなる。腹減ってんだよ私は」


「あ、ごめんなさい裕美様!すぐに用意しますね」


 包丁を投げるモーションに入っていた幸が、動作キャンセルして調理に戻る。


「ああそれと、サクラさん。私のために敵討ちしてくれてたんですね。ありがとうございます」


 会話がなくなり、わずかにできた沈黙を狙ったかのように幸がサクラに感謝に言葉を投げかける。


「え?いや……だって幸さんにはお世話になってたし、これくらいでしか恩返しできないんだから、お礼なんていいわよ」


「ではコレで貸し借りなしですね。ですから、サクラさんは今後は私のためにあまり危険な事はしないでくださいね」


 幸のやつ回りくどいな……

 サクラが安定収入得られるようになったから心機一転してほしいんだろ?「私の家でヒモやってた時の恩は返さなくていいぞ」って正直に言えばいいのにな。


 まぁでも、幸の事だから『危険な事はするな』って部分は心底そう思ってるのかもな。


「サチよ。我に対しての謝辞が聞こえんが?」


「あ~はいはい。今から夕飯ご馳走しますから、それで貸し借り無しにしてくださいね」


 お、幸のヤツいったんクールダウンしたおかげか、ポチの煽り流せたな。

 いや……『小娘』じゃなくて『サチ』って呼んでた時点で、ポチもある程度わかったうえで発言したのかもな。


 さて、約一名を除いて四天王の絆が強まったわけだが……

 明日は当初の予定通り、絆結束に一役買ったノゾミちゃんを、私が直接ぶっ飛ばすのだが、やっぱりあのキレ方は気になるな。

 心折って魔法少女辞めさせなきゃならないのに、ポチにあそこまでやられて心折れるどころか、余計に火がついちゃった感じだったしなぁ。


 大丈夫か?新生四天王の前で魔王としての威厳を見せられるか?

 ……まぁ、なるようになるか?ってか、なるようにしかならないだろうしな。


 それよりも、ノゾミちゃんのアノ狂いっぷりを考えると、明日私が学校終わるまでに何かやらかしそうで怖いなぁ……

 ヤダぞ!ノゾミちゃんと戦う前に蘇生魔法10連発とかやるハメになるのは……


 ……

 ってかいい加減腹減ったな。

 飯まだか?


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