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魔王少女  作者: mizuyuri
第二部
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第十四話 魔王(代理)VS魔法少女 2戦目

 魔王軍四天王の二人が同時に攻略されたとしても、それは内々での事。

 ニュースになる事も噂話が広がることも無い。


 そのため大きな騒ぎになる事もなく、いつも通りの平日がやってくるのである。


 そして、何か前にも言った様な気がするが、人間が関与している事に関しては、不変のものは存在しない。

 それはもちろん人間関係にも当てはまる。


「ごめんなさい裕美様。今日はサクラさんと待ち合わせをして、あの新しい魔法少女を探しに行くので今日は失礼します!」


 最近は放課後の恒例となりつつある幸の「言い訳帰宅」を今日も見送る。


 よっぽど急いでいるのか、またもや魔法を使って窓から飛んで行く。

 羽で飛んでるよう偽装するため、申し訳程度に羽を動かしているのは相変わらずだ。

 でもな幸……スカートの中身は今回も丸見えだぞ。そこを何とかしとけよ。ってか今日はタイツ履いてないじゃん……


 というか、もう飛んで帰る事に躊躇がなくなってきてるだろアイツ。


「あいかわらずさっちゃん忙しそうだな……今日もフラれたのか裕美?」


 一連のやりとりを見ていた美咲が声をかけてくる。


「何かすげぇ既知感(デジャヴ)なんだが……」


 『不変のものは存在しない』とか言っといてなんだけど、最近の放課後の行動が不変なんだけど何だこれ?


「いちおう聞いてみるけど、美咲この後暇か?」


「わりぃな、今日もバイトだ」


 既知感(デジャヴ)だ……


 とりあえず、前回は美咲のバイト先に一緒に行く事ができなかったので、今日こそは同行しようと意気込んで、美咲と一緒に校門まで歩いて行く。


 そこでふと違和感に気が付く。

 下校中の生徒が正門を通らずに裏門から下校しているのだ……


 いや、もうね、悪い予感しかしないよねコレ?


「待ってたッスよ魔王!」


 悪い予感って当たるもんだなぁ……

 皆、前回ノゾミちゃんと美咲が暴れてたの知ってるから、触らぬ神に祟りなし精神で正門を避けてたんだなぁ。


「私に未知を見せてくれ……」


 何だよコノ焼き回しは?この流れ数日前に体験したよな?


「何かすげぇ中二病臭いセリフが飛び出したな?」


 私のぼやきに美咲が、馬鹿にするような笑いとともにツッコミを入れてくる。

 うるせぇよ馬鹿。


「余裕ぶっこいてていいのか?アイツの標的お前だぞ」


「え?何で?『魔王!』って言ってたから裕美に用事なんじゃねぇの?」


 不憫な奴だ……数日前の事すら記憶できてないのか……まさかそこまで馬鹿だったとは予想外だな。


「私の言う事信用できないなら、当人に聞いてみろよ」


 私がそう言うと、美咲は自信満々でノゾミちゃんの方へと近づいて行く。


「用事があるのってアタシじゃなくてアッチだよね?」

「いや!アンタっすよ!!」


 間髪入れずにノゾミちゃんからツッコミが入る。

 美咲は何もなかったかのように無言で私の方へと戻ってくる。


「いや、何でアタシなんだよ!!」


 何で私にツッコミ入れてんだよ?当人に直接言えよ!


「おかしくね?アタシこの前ちゃんと『アタシは魔王じゃない』って言ったよな?何でまだアタシが魔王って事になってんの!?」


 すごいうろたえてるな……まぁ面白いからいいけど。


「あのな美咲……例えばだぞ、銀行からニット帽にサングラスとマスクで手に拳銃持った奴が大量の札束抱えて出てきたとするだろ?そいつが『俺、銀行強盗じゃないよ。それじゃあバイバイ』って言って走り去っていったとする。……信じるか?」


「いや、捕まえて警察に突き出す」


「つまりはそういう事だ」


「それでもアタシは魔王じゃないぃ!!」


 んな事は知ってるよ。

 だが現実は直視しろ。


「まぁ落ち着け美咲。魔王とか魔王じゃないかとかはともかく、とりあえずアイツをまた秒殺すればすむ話だから」


「……いや、殺しはしないけど」


「ほら、また前回みたいにちゃっちゃとやらないとバイト遅刻するぞ」


「それは困る!……そうだよな、とりあえず倒しとけば丸く収まるんだよな……」


 んなわけねぇじゃん。

 誤解を解かなきゃ、何度でも待ち伏せくらうんだから解決なんてするわけねぇじゃんかよ。

 いやぁ……馬鹿は誘導するのが楽でいいな。


「悪いな、アタシは急いでるから、また秒で終わらせてもらうぞ」


 そう言い放ち変身する美咲。

 美咲が変身するのを確認すると、ノゾミちゃんもまた変身する。


「リベンジマッチっす。前回ほど簡単に倒せると思わない方がいいッスよ」


 ノゾミちゃんのそのセリフを合図に、即美咲が動く。

 いつも通り魔力で弓と矢を作り、ノゾミちゃんへと放つ。


 前回はこれで、ほぼ決着していたが、今回はそうはいかなかった。

 ノゾミちゃんも美咲に合わせて、魔力で弓と矢を作り放つ。

 ぶつかり合った互いの矢は相殺されて消滅する。


「はぁ?マジで!?」


 動揺した美咲の隙をついて、ノゾミちゃんは美咲との距離を一気に縮める。

 そのまま魔力を込めたコブシで、美咲の顔面目掛けて殴りかかる。


「っぶねぇ!?」


 身をよじって、何とか回避する美咲。

 かわしつつも、両手の指の間に、魔力で出来た大量の針を作り、それをノゾミちゃんへと投げる。


 威力はさほど無いようだが、質より量ってな感じで、とりあえず少しでも攻撃当ててひるんだところを追い打ちで攻撃力の高い魔法で攻撃しようってな考えなんだろう。


 でも、それはノゾミちゃんには逆効果だぞ。


 針は、ほぼノゾミちゃんにヒットする。

 しかしノゾミちゃんはひるむ事なく、同じように大量の針を作り美咲へと投げ放つ。


「くっそ!なんでだよ!?」


 針を後ろに飛んでかわしつつも悪態をつく。

 たぶん、魔法を即パクられてイラついてるんだろうなぁ。


「裕美!コイツ殺しちゃったら蘇生頼む!」


「お……おう!」


 いきなり話振られて、思わず変な声が出る。

 ってか美咲のやつ、ノゾミちゃん攻略法を何か思いついたのか?


「上等ッス!殺せるもんなら殺してみろッスよ!」


 美咲の叫びを聞いていたノゾミちゃんは、挑発にのるかのように、再び接近して魔力を込めたコブシで殴りかかる。

 美咲は冷静に攻撃をかわすと、殴りかかってきたノゾミちゃんの腕を掴み、そのままぶん投げる。


「ば~か!威力は同じくらいかもしれないけど、ポチの方が全然速ぇっての!!」


 今まで押されてたのが、やっと攻勢に出れてテンション上がったのか、超ドヤ顔でどうでもいい事を叫びだす美咲。

 一方のノゾミちゃんは、冷静に受け身を取り、すぐさま置き上げり美咲との距離をとる。


「距離をとっても無駄無駄。もう勝負は決まってんだから!」


 そう言うと美咲は右手の指をパチンっと鳴らす。


「うああぁぁ!?」


 その瞬間ノゾミちゃんが叫び声をあげて、自分の右手を押さえてうずくまる。


 ……ちょっと待て、その魔法って!?


「あれ?おっかしいなぁ?結構大量に魔力込めといたと思ったのに、裕美がやってるみたいにならないな?」


 やっぱりアレ私がよく使う、体内に魔力込めて内側から爆破させる魔法か……

 勝手に使われるなら、この魔法の技名とかちゃんと考えといて著作権料とか取ればよかったな。

 ってか、この魔法美咲のトラウマじゃなかったのかよ!?


「とりあえずアドバイス送るなら、その程度の魔力じゃ腕の骨ボロボロにするくらいしか効果でないぞ、腕ごと爆破したかったら、この2倍の魔力。腕を起点に半身吹き飛ばしたかったら5倍の魔力は突っ込まないとダメだぞ」


「そんなに込めたら、この魔法だけで魔力切れ起こしそうになるっての!やっぱ裕美並みの魔力量を持ってないと、この魔法は無理か」


 自分の魔力を相手の体内に留めさせるのって、普通は結構難しいらしいから、この魔法使えただけでもすごい方なんだけどな。

 調子に乗らせるのも癪なんで、美咲にはあえて黙っておく。


「さすがは魔王ッスね……でもまだ終わってねぇッスよ!まだ右腕が使い物にならなくなっただけっス」


 いや、右腕の骨ボロボロにされた時点で帰れよ。

 痛くて冷や汗出てんじゃん。


「しつこいなぁ……もうバイト遅刻ギリギリなんだから、いい加減あきらめて帰ってくれよ!」


 私はそっと時刻を確認する。

 美咲……たぶんもう遅刻確定だぞ。


「まだ帰るわけにはいかねぇッス!やられた事はやり返さないと気が済まない性格なんスよ私!」


 そう言うと、左手を美咲の方へ伸ばしながら突進してくる。


「ああぁ!もうしつこい!!」


 美咲は叫ぶと右手を上に上げて、そのまま勢いよく地面に向かって手を下ろす。


「げえぇぇぇ!!?」


 ノゾミちゃんがその場で倒れこみ、上から何か重たい物で押さえつけられている様な状態になる。


 ああ……私みたいにクレーターまではできてないだけで、今度は重力魔法か。


 もしかして、美咲のやつ魔王扱いされたから、魔王……私みたいな戦い方してんのか?

 それとも、もっと単純な理由で、私が使う魔法が強力だって事を知ってるから、相手を殺す覚悟で私の魔法マネしてんのか?


 どっちかといったら後者の方かもな……

 ノゾミちゃんが魔法をマネしてくるから、自分もマネしてやる!くらいな感覚で深く考えずにやってんのかもな。


「ん?あれ?もしかしてコレってチャンスじゃね?……んじゃあアタシはバイトに急ぐから、この魔法解呪できたら勝手に帰ってていいから」


 あ、重力魔法で動けないでいるノゾミちゃん放置してバイト行きやがった。


「く……そ……待つッス……魔王!……つ……次こそは……絶対勝つ……ッスよ」


 既に見えなくなっている美咲に向かって言葉を放つノゾミちゃん。


 さて、私はどうしようかな?


「そんじゃあ私も帰るから。がんばれよノゾミちゃん」


「ふぇ!?……あれ?……ちょっと待ってほしいッス……」


 他校に一人放置される事になるノゾミちゃんが何か言っているのはあえて無視して、これ見よがしにノゾミちゃんがもがいている横を通り過ぎて帰宅する。


 とりあえず何だ?

 ポチ、幸。美咲のせいでノゾミちゃん使える魔法追加されたんで再度返り討ちにならないようにがんばれよ。


 ってか、あの状態のノゾミちゃんをソロ撃破したって事は、もしかして美咲ってあの二人よりも強いんじゃね?

 ……かなりの馬鹿だけど。


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