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魔王少女  作者: mizuyuri
第二部
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第十二話 最新版魔法少女の実力

 場の空気は完全に氷ついていた。


 空気読めない奴の乱入は、全員の次の行動を抑制した。

 うっかり動きを止めてしまった状態で、うかつに動けば即、死につながる可能性もでてくる。


「それじゃあオジサン。私はあっちの羽女の方をやるッスから、そっちの名誉魔族っぽい方を……」


 やはりというか、膠着状態を崩したのは、空気読めないノゾミちゃんだった。


「黙れ……消えろ!」


 こちらもまぁ案の定というか何というか、全力を出せる戦いを楽しんでたにも関わらず、それを邪魔されたポチがキレていた。


 ポチは、さきほどの一言を呟き、魔力を込めたコブシでノゾミちゃんの横っ腹をぶん殴る。

 たぶん本日で一番魔力がこもっているっぽいコブシを受け、吐血しながらふっとぶノゾミちゃん。

 あれ、あばら何本折れた?


「ガッ……ハァ……ク……い、ってえッス」


 血と涙を流して、数秒のたうち回り、回復魔法をかけるノゾミちゃん。

 残念。即死か失神していてくれれば、何事もなくさっきの続きが始められると思っていたんだけど……やっぱ頑丈だなコイツ。


 ノゾミちゃんを殴り飛ばすと、ポチは何事もなかったかのように先程までと同じように、近距離でサクラを、遠距離で幸を攻撃しはじめる。


 ノゾミちゃんがやってきてぶっ飛ばされるまでの間を、仮に編集でカットできたとしたら、違和感無くつなぎ合わせたと感心するレベルで、先程とまったく同じ構図が出来上がっていた。


「まったく……何だったんですか今のは?」


 ポチの攻撃を防ぎつつ、幸がぼやく。


「ポチさんが、どうするかの賭け……成立しませんでしたね」


 三人の戦闘に目を戻してヴィグルがつぶやく。

 いや……あたりまえだろ!?

 だってポチがとる行動を考えると、キレる以外の選択肢はありえないだろ?


「それにしても、場の状況が変化しないですね……もうどれだけ同じような動きを繰り返してるんでしょうか?」


「ぼやきたい気持ちはわかる。私もだんだん飽きて来た」


 そんな私達の心境を察したかのように、戦場が大きく動く。


 接近戦状態のポチとサクラ二人の頭上に大きな水の塊が出現すると、滝のように凄まじい勢いで流れ落ちてくる。

 二人ともそれを察知し、お互い別々の方向へと飛んで回避する。


「状況が何となくわかってきたッス……」


 サクラが避けてきた位置で待機していたノゾミちゃんが、サクラの頭を掴み地面に叩きつけ、そのまま雷撃魔法を直接叩き込む。

 そして、そのまま向きを変え、魔力で弓と数本の矢を作ると、幸に向かって放つ。

 幸も咄嗟にガードしたものの、防壁を無視するかのよに2本ほどの魔力矢が腕に刺さる。


「……つまるところ全員敵って事ッスね!」


 ノゾミちゃんはつぶやき、魔力を込めた踏み込みで、一瞬にしてポチとの距離をゼロにつめる。


「いいッスね、この戦い方……」


 そう言ってノゾミちゃんは、魔力を込めたコブシでポチを殴りつける。

 ポチも応戦して、攻撃を受けつつも、ノゾミちゃんと同じように魔力を込めたコブシでノゾミちゃんを殴りつける。


 防御をかえりみない零距離での殴りあい。


「……まさかの展開だな」


 私はそっとつぶやく。

 ノゾミちゃんを甘く見ていた。

 浮遊狐が言っていた『性格より実力を重視した』ってのを信じていなかったけれど、まさか事実だったとは……


「あの魔法少女が使っている、魔力をコブシに込めるやり方……人によって癖が出るものなんですが、アレはポチさんの癖と全く同じですね」


 つまりアレか?このノゾミちゃんの才能ってのはそこの部分か?


「ひょっとして、一度くらった魔法を即分析して、寸分たがわぬ威力で使用できるような能力を持っているのかもしれないですね」


 なるほどね……だから美咲が使ってた魔法や、幸がやってた攻撃方法をそのまま使ってたのか。

 自分自身の攻撃魔法の威力が弱い部分を、他人の攻撃手段でカバーする。あとは……


「グッ……!?」


 ノゾミちゃんとポチの闘いが終わる。

 先に地面に膝をついたのはポチだった。


 そう……攻撃力っていう弱点をカバーして、あとは持ち前の耐久力を加えれば、ある意味、攻防最強の魔法少女の誕生ってわけだ……

 あ、もちろん私を除いてね。


「ハハっ……だんだん力の使い方がわかってきたッスよ」


 その発言を、自らの頭上で聞かされたポチは、悔しさで震えているようだった。

 まさか自分が、魔力を使い始めて数か月程度の、やっと使い方がわかってきた程度の奴に、膝をつかされ、ダメージと魔力消費が大きく立ち上げれないでいるなんて思ってもみなかったのだろう。


「……おっと!?」


 ポチにとどめをさそうと一歩踏みだしたノゾミちゃんも、蓄積されたダメージと魔力消費によって上手く歩けずによろける。


「予想以上に手こずったッス……魔王軍幹部でもない、ただの名誉魔族相手にここまで苦戦するとは思わなかったッス」


 ノゾミちゃん……気付いてなさそうでけど、今の一瞬で魔王軍幹部の四天王2人をほぼ同時に倒してるよ。

 まぁ、どんな容姿のなんて名前の奴が四天王、とかって別に公表されてるわけじゃないから、一般的には知らないよな。


「そこの下っ端魔族共!魔王に伝えておくッス!もう少し力を付けたら、すぐにまた挑みに行くッスから首を洗って待ってるッスよ!!」


 そう言って、よちよち歩きで帰っていく。

 飛んで帰るほどの魔力が残ってなかったのか……

 でも、決め台詞言った後は、無理してでも飛んで帰って欲しかったなぁ……

 すげぇカッコ悪いよノゾミちゃん。


「裕美様……『また』とか言ってましたけど、一度戦った事あるんですか?裕美様の規格外の魔法まで使えるのでしょうか?」


 そうだよね『また』とか言われたら、そういう反応するよね。私の魔法使えちゃったらヤバイもんね。


「安心しろヴィグル。アイツの言う魔王って美咲の事だから」


 詳しい説明は面倒臭いので省きつつ、とりあえず要点だけをしぼって言ってみる。


「言ってる意味がわからないですけど、美咲さんがよく使う魔法を使っていたのは、そういう理由なんですね」


 意味がわからない、と言いつつも、とりあえずは理解してくれるヴィグルが好きです。


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