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魔王少女  作者: mizuyuri
第二部
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第九話 魔王(代理)VS魔法少女

 人間が関与している事に関しては、不変のものは存在しない。

 それはもちろん人間関係にも当てはまる。


 サクラが幸のアパートに居座るようになってからというもの、幸の付き合いが極端に悪くなってきていた。


「ごめんなさい裕美様。今日はサクラさんが餃子を食べたいと言っていたんで、すぐにスーパーに材料買いに行かないと、準備が夕飯までに間に合わないので今日は失礼します!」


 最近は放課後の恒例となりつつある幸の「言い訳帰宅」を今日も見送る。

 ってかサクラに与えるのなんて冷凍かチルドでいいだろ?幸の事だから皮から手作りしそうだな。

 よっぽど急いでいるのか、なりふり構わず魔法を使って窓から飛んで行く。

 羽で飛んでるよう偽装するため、申し訳程度に羽を動かしている。

 でもな幸……スカートの中身は丸見えだぞ。そこを何とかしとけよ。たぶん、厚手のタイツ履いてるから大丈夫とか思ってるんだろうけどな……


「最近さっちゃん忙しそうだな……今日もフラれたのか裕美?」


 一連のやりとりを見ていた美咲が声をかけてくる。


「フラれた、っていうのか?私が何も言ってないのに毎回一言放ってくんだよな」


 フラれるのは、せめて告白した時だけにしてほしいもんだ……


「ちなみに美咲は今日暇か?」


「わりぃな、今日はこの後バイト入ってんだよ」


 またフラれた……


「そうか……じゃあファミレスまで一緒に行くか」


「来んのかよ!?素直に帰れよ!」


 そんな美咲のツッコミは無視して、美咲と一緒に教室を出て校舎からも外に出る。

 毎日行う一連の行動である。

 ただ一点、いつもと違う事は……


「待ってたッスよ。今日はあの羽女はいねぇんスね」


 校門でノゾミちゃんに待ち伏せされていた事である。


「あの羽女はどこッスか?まだ校内ッスか?隠すとためにならねぇッスよ」


 ここでずっと待ってたのかよコイツ?

 あ、そうか……幸、今日に限って飛んで行っちゃったから会えずにいたのか。


「んだコラ!やんのか!」


 前回ひどい目にあった美咲は、警戒心MAXでその場で変身して身構える。

 正体が全校生徒にバレてると、こういう時躊躇が無いな。


「え!?魔法少女……なんスか!?魔族の羽女と一緒にいたのに?」


 変身した美咲を見てノゾミちゃんはうろたえだす。

 コレはアレか?幸の時みたいに、ゴタゴタした後に魔法少女の先輩が~みたいな流れになって「一緒に魔王を倒す手助けを!」からの「特訓に付き合ってください!」みたいな面倒臭い展開になるのか?

 ……よし!今回はその流れにならないようにフラグをブチ折っとくか。


「あれ?魔王様、今日はいつものピンク色の姿じゃなくて白一色にしたんですか?」


 ノゾミに聞こえるようにわざとらしく美咲に話しかける。


「は?裕美……何を言って……」


 案の定美咲は訳がわからない、といった表情である。

 うん、美咲はそれでいい。

 問題は、与えられている情報だけで、今の発言を聞いたノゾミちゃんはどう考えるかだけど……


「魔族と一緒にいた魔法少女……魔法少女?そういえば魔王は元魔法少女って狐さんが言ってたッス」


 一人でブツブツ呟いて色々と思考を巡らせているようだった。

 良い調子だな。


「魔王の見た目はこの前テレビで……『今日はいつものピンク色の姿じゃない』ってさっき……それと魔王は口が悪いっていう情報も……」


 最後のその情報はどっからもってきた情報ソースだ?


「魔族と普通に一緒にいる魔法少女……つまり、アンタが魔王って事ッスね!!」


 はいOK!誘導成功!


「な!?ちがっ……裕美!さっきのはこういう事だったのかよ!」


 今頃気付いても遅ぇっての。


「それならコッチだって……」


「スミマセン魔王様!私、別に正体をバラそうと思ったわけじゃなく……うっ!?ゆ……ゆるし……て……」


 美咲が何か余計な事を言い出す前に、先手をとって、再びノゾミちゃんに聞こえるような音量でそれっぽい事を言って、その場で地面に倒れこむ。


「人の命を何だと思ってんスか!!魔王!っ!」


 激昂したノゾミちゃんがその場で変身する。


 それにしても寝っ転がりながら色々と様子見してると、この学校の生徒のたくましさがわかるな……

 明らかに異常事態な正門を回避して、別の出入口から下校している。


 いや、そんな事よりコッチはどうなった?


「違う!アタシは魔王じゃないって!むしろ魔王はコイツだって!!」


 足元に転がっている私を指差して、美咲は必死に言い訳しているが、状況証拠がソレを許さない。


「ほれ、早くアノ新人魔法少女を倒さないと、バイト遅刻するぞ」


 美咲にだけ聞こえる音量で呟く。


「クソ!戦闘不能にさせりゃあいいんだろ!!」


 美咲は吹っ切れて、魔力で弓と数本の矢を作ると、一斉にノゾミちゃんに向かって放つ。


「うああぁぁぁ!!」


 美咲の放った矢は、ノゾミちゃんの両手・両足を撃ち抜く。

 手・足から血が滴り落ちる。

 何とか立ってはいるが、一瞬のうちに満身創痍になっている。


「はは……容赦ない攻撃ッスね……まず逃げられないように機動力を奪うんスね」


「いや……じゃあせめて1・2本は避けろよ。牽制で放った矢が全弾ヒットするとは思わなかったよ……」


 あいかわらず、耐久力以外はてんでダメだな。

 いや、避けられなかったのは実戦経験の少なさもあるのか?


「まぁいいや、動けないならちょうどいいか、じゃあアタシは忙しいからもう行くぞ」


 美咲はノゾミちゃんの脇を通って校門を抜けようとする。


「せっかく会えたんス!もうちょっとくらい遊んでほしいッスね!!」


 ほぼ悪足掻きといった感じで、炎を纏ったコブシで美咲に殴りかかる。

 美咲はソレを軽くかわすと、右手で指をパチンっと鳴らす。

 すると、ノゾミちゃんの上あたりの、何もない空間から大量の水が現れ、そのままノゾミちゃんへと落下する。

 水圧に押しつぶされるように倒れるノゾミちゃん。


「それじゃあ。アタシが魔王ってのはただの勘違いだから、もう来んなよ」


 そう言い残して美咲は走り去っていく。

 カッコよく決め台詞残していったのはいいけど、アレは変身解くの忘れて、あのままの格好でバイトするパターンだな。


「クっ……痛ってぇッス」


 美咲が見えなくなるのを確認したかのようなタイミングでノゾミちゃんが起き上がる。


「でも……だいぶいい感じッス。次……いや、その次くらいなら勝てるかもしんねッス」


 ブツブツと呟きながら、回復魔法をかけつつ帰っていく。

 アレは変身した格好を恥ずかしいとも何とも思わずに、変身したまま普通に帰宅する感じだな。


 ……というか、ここで倒れてるフリをしている私は無視かい!?


 もういいや、帰ろう……


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