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魔王少女  作者: mizuyuri
第二部
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第八話 ポチの本名

「裕美様……何がしたいのか私にはわかりかねますが、後で幸さんの羽はブラッシングしてあげてくださいね」


「いや……違うんだよヴィグル……これには深い理由があるんだよ」


 幸の家で昼飯を食べた後、サクラが元の世界に帰る方法をヴィグルなら知っているかもしれない、という事を幸とサクラに説明し、私の家へと移動した。

 しかしヴィグルが留守だったため、すぐに戻るように連絡したのはいいが、ヴィグルが到着するまでの間暇になってしまった。

 そこで、お色気系を重視したアニメなどで羽が性感帯になっているモノが多い事を思い出し、幸もその口かどうか試してみたのである。

 結果……


「普通に手とか足とかを触られてる感覚と一緒ですね」


 という何ともつまらない発言を受け、こうなったら意地でも、羽で性感帯になっている個所を探してやる!ってな感じになり、サクラと一緒に、幸の羽を甘噛みしたり息を吹きかけたり顔を突っ込んでみたりとやっていたところをヴィグルに発見されたのである。


「深い理由か……察するに、この小娘を制裁しているのであろう?よければ我が代わろうか裕美殿」


 ヴィグルの後ろからポチも一緒に部屋に入って来る。


 このパターンは予想してなかったわ。

 まさかこんな場所で、ポチとサクラがご対面するとは……


「あいかわらず礼儀がなってない人ですね……アナタごときが裕美様の代役を務められると思っているんですか?」


 オイ!?何挑発に乗ってんだよ!?幸こそ、あいかわらず沸点低いな。

 とりあえずポチをサクラに紹介してやれよ。


「そうだな。少なくとも貴様よりは裕美殿の側近に相応しいと思うのだが?」


 私の側近にはヴィグルって奴が既にいるんだが……

 ってかポチも幸を煽ってないで、あきらかに浮いてる服装した奴に目を向けて…………ん?


 サクラの服をよく見ると、少しダボダボではあるが、現在日本で普通に着用されている服装をしている。

 そういえば、今の今まで、特に違和感無くいたのって、本来は違和感を放っているべき服が無かったからか!


「おいサクラ……前に会った時着てた服はどこいったんだ?」


 ポチと幸の言い争いを横目に、サクラに耳打ちする。


「洗濯中よ。ずっと着てたせいで気づかなかったけれど、汚れと臭いが酷かったみたいで、幸さんが洗って干しといてくれてるのよ。ちなみにコレは幸さんの服ね」


 だからブカブカなのか。


 というか、ポチを見て何の反応も無いって事は、本当に魔王の顔知らないんだな……

 どうやって魔王探すつもりなんだ、このガキは?


「なぁ、全然関係ないかもしれねぇけど、普段はどうやって魔王探してるんだ?」


 わからない事は即聞いてみる。


「魔王は戦闘狂だから、何かしらそういった事件が起きていないかの情報収集がメインだったわね……最初のうちは」


 今は違うのか?


「情報収集している内に、この世界にも別の魔王が元々いるって事がわかったの。私達の世界の魔王だったら絶対に、この世界の魔王と戦おうとするだろうから、そのタイミングを押さえるために、この世界の魔王がいそうな場所を色々探してる感じかしら」


 そうだな、この世界の魔王と戦おうとするっていう予想はある意味正解だ。

 問題は既に戦いが終わってるって事だな。


「あと、この世界では私達の世界の服は目立つから、それを目印にして魔王を見つけられればいいかとも思っているわ」


 それは良い着眼点だとは思う。思うんだが……

 ポチが着てた服は、私との戦闘でボロボロになったから、新しい服をヴィグルから支給されていて、今はご覧の通り、偶然ブッキングしても気づかないような服装になってるんだ。

 さすがの蘇生魔法でも、服までは再生できないんだよ……

 魔法少女の衣装はどんなにボロボロにしても、本人の魔力で構築されてるから復活するけど、さすがに同じようにはいかなかった。


 そうだな……お前が異世界の服を着てれば、お宅の世界の魔王の方から気付いてくれたかもしれないのにな。


「何だ……その……とりあえずがんばれ」


 もうそれしか言葉が出てこなかった。


「ちなみに、魔王が服装ごと変身魔法で姿変えてたらどうする気なんだ?私だって使える魔法なんだぞ。魔王だって使えるんじゃねぇのか?そうなったら探せなくね?」


 ちなみに、初対面で会った時の私の姿は、個人情報を保護する目的で、魔法で姿を変化させてたってな感じで言い訳してある。


「噂話程度で確信はないけれど、魔王は回りくどい事が嫌いで我が強いタイプっぽいから、わざわざ変身魔法使って隠れるとかしないで、堂々と暴れると思うから大丈夫だと思うわ」


 そうだな……確かに、あの格好のまま学校で暴れてたな。


「裕美様。私が呼び出されたのは、そちらの方が関係しているのでしょうか?」


 幸とポチの言い争いを無視して、ヴィグルがコチラの会話に割り込んでくる。


「そうそう、幸とポチのせいで出鼻をくじかれたけど、本来の目的はそっちだった」


 良いタイミングで来てくれたヴィグルに感謝しつつ、サクラが異世界から来て帰れなくなった旨を、ザックリと説明する。


「そうですね……残念ながら私共の魔法では力になる事ができなさそうですね」


 ヴィグルの答えは、サクラにとっては残酷な言葉だった。


「我々は一度いった世界の空間座標を記録しており、それによって一度行った世界の位置を正確に認識して移動する事ができているんです。そして新しい世界に行く時は、ランダムで座標を選んでおりました……なので行った事のない世界へ行くには、その世界の正確な座標を認識している人物がいない限り不可能なのです」


「く……空間座標?」


 大丈夫かコイツ?ちゃんと理解してるのか?

 何となく幸と仲良くなってる時点で、幸と同じ匂いがするんだよな……


「ちなみに……えっと、サクラさんでしたっけ?サクラさんが探している魔王というのは、ソウガ・ヤガミという名前でしょうか?」


 誰だソレ?


「そう!そいつ!!何で知ってるの!?」


 ん?異世界の魔王ってポチじゃないのか?


「ちょっとした知り合い、といったところでしょうかね」


「どこに!ソイツはどこにいるの!?隠すとためにならないわよ!!」


 すごい剣幕でヴィグルに迫っていく。

 突然のサクラの大声に、言い争いから軽い殴り合いに発展していたポチと幸も動きを止めて視線を向けている。


「申し訳ありません。なにぶん神出鬼没な方ですから、何処で何をしているのかまでは把握していないのですよ」


 迫られている当人であるヴィグルは特に気にする事なく飄々と返答している。


「また彼に会えたら、それとなくサクラさんの事を伝えておきますから安心してください」


「そんな伝えとくだけじゃ話にならないわよ!会ったならすぐに私に連絡して!」


 ヴィグルはそこで話を終わりにしたいようだったが、サクラは引き下がらなかった。

 そりゃあ一人、異世界で心細くなるなか必死に探し続けても一月近く見つからない魔王の超重要情報が目の前に転がってれば、簡単には引かないよな。

 ヴィグルもその辺を甘くみてたな。


「そうは言われましても連絡手段がありませんし……第一、今日初めて会ったアナタよりも彼の方が付き合い長いのですから、簡単に彼をアナタに売るわけにもいきませんよ」


 何だ?ヴィグルらしくないな……わざとサクラを煽ってる?


「だったら今この場で、あなたを人質に取って魔王を呼び出すまでよ。魔王なんだから魔力感知くらいできるでしょうし、あなたの魔力が弱ってれば助けに来るかもしれないし……」


 魔王なのに自前で魔力感知できないポチに謝れ。


「面白い作戦ですね。上手くいくといいですね」


 ヴィグルは完全にサクラを挑発している。

 そしてサクラもその一言で完全にキレたようで、右手に魔力を込めだす。


「オイ!ちょっと待て私の家で全力バトルは……」


 私の静止の言葉が完全に言い終わる前にサクラは、魔力を込めた右手で横一線に手刀を振るう。

 そして、それは真空波となってヴィグルを襲う。


 ヴィグルは咄嗟に手を前に出し防壁を張る。


 しかし防壁では完全には防ぎきれずに、ヴィグルの手のひらに切傷をつける。

 ついでに余波によって、私の部屋の壁に刀傷のような跡をつくる。


「ふむ……実務ばかりやっていたせいで感覚が鈍ってしまいましたね」


 手の傷を見ながらヴィグルがつぶやく。


「小娘。我の眼前で我の大切な友人を傷つけるとはいい度胸をしているな!」


 いきなりポチが割り込んできたかと思うと、魔力を込めたコブシでサクラを殴りつける。


 スピードをつけるために、ポチが踏み込んだ床は完全に抜けている。


 サクラは腕を交差して防御したうえで防壁を張るが、勢いは消せずにそのまま後ろに吹っ飛ばされ、窓ガラスを割ったところで止まる。


 臨戦態勢のポチとサクラ。

 まだ飄々とした態度でいるヴィグル。

 オロオロしている幸。


 そして……


「お前等……私に消し炭にされたくなければ、今すぐここから出ていけ……」


 完全にキレた私……

 もちろん既に変身済みである。


「サクラさん!ここは一旦私の部屋に帰りましょう!」


 恐ろしさを知っている幸がサクラを抱き抱えて、もの凄い勢いで帰宅していく。


「どうでしたか?」


 まだ部屋に残っているヴィグルがポチに問いかける。


「我の全力に耐えたのは予想外だった。それとヴィグル殿に手傷を負わせた点も踏まえれば余裕で合格点だな」


 何の会話をしてるんだ?


「次に会う事があれば、しかるべき場所できちんと相手してやるとしよう」


「ちょっと待てお前等……何の話をしてるんだ?」


 私の存在を忘れていたかのように二人で私の方へと視線をむける。


「うむ、ヴィグル殿から、我を追って挑戦者が来たと聞いていたので、どれほどの力量があるか調べたかったのだ。そこでヴィグル殿に一計を案じてもらって、先程実行したのだ」


 さっきまでの一連の流れは全部ヴィグルの計画かよ。

 ってかサクラが異世界からポチを追って来たって知ってたのかよ?


「その顔は、私が何も知らないと思っていた顔ですね。魔力関連から人間の軍事関連まで全ての情報が私のところに集約されてるって知っていますか?」


 知ってるよ……知ってるからこそ気付かなかった私が馬鹿みたいじゃねぇか……


「あ、部屋に関しては、この後、無機物の修復魔法が得意な者が来る事になっているので安心してください」


 何もかも用意周到だなオイ。


「では裕美殿、我々も失礼する。迷惑かけて申し訳なかった」


 そう言い残して二人は部屋から退散していく。


「ああ、行く前に教えてくれ『ソウガ・ヤガミ』って誰だ?」


 いや……聞かなくても、何となく予想はできるんだけど、何というか一応……


「我が既に捨てた名だ」


 だよね!だと思ったわ。


 ってか何でヴィグルにはしっかりと教えてんだよ。


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