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魔王少女  作者: mizuyuri
第一部
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番外編4 ~14人目の魔法少女の日記~

4月24日

 今日からついに一人暮らしが始まります。

 良い機会なので、今日から日記をつけ始めようかと思います。


 キューちゃんと初めて会ってから約一か月。

 実家にいる時は魔族がいなくて、魔法少女としてのデビューは遅れてしまってましたが、本日からがんばろう!と意気揚々としてはいたのですが、結果としては散々でした。

 この町に着いて、早々に見つけた魔族を退治しようと、戦いを挑んだのですが、どうやら幹部の一人だったらしく、返り討ちにあってしまいました。

 「お嬢さん……もうちょっと力付けてからもう一回来な?」と言われた時は悔しくて涙が出そうになりました。

 そんなわけで気を取り直していくことにします。

 明日からは、たとえ負けてもいいので、どんどん戦っていき私自身のレベルを上げていきます。


 ともかくまずは、明日の学校です。

 転校生、というだけで人は集まってしまうものです。

 明日までに何とか、人が寄り付かなくなるような方法を考えておきたいと思います。



4月25日

 今日は、新しい学校への最初の登校でした。

 私の予定通り、包帯グルグル巻きが効いたようで、特にクラスの方に話しかけられる事はありませんでした。

 それと、人と話す時、敬語になってしまう私の癖を出さないように頑張ってみたのも効果があったかもしれません。


 これから私は魔王を倒すために、魔物達と戦わなくてはいけませんから、巻き込まないようにするためには、誰も私には近づいて来ない方がいいのです。


 …そう思っていたのですが、予想外の収穫がありました。

 偶然に魔法少女の先輩に会う事ができました。


 過去に魔王に負けてしまった経験があるそうなのですが、とても強い人でした。

 私に一つ目指すべく大きな目標が見つかりました。


 それと美咲さんと常に一緒にいた裕美さんという名誉魔族の方。

 お二人がどういう関係なのかはわかりませんが、人間である事をやめて、魔族として力を手に入れるという、そのやり方はあまり好きにはなれません。


 ただ、おそらく私よりも実力はあるのでしょう。

 ちょうどいいので、私の力を伸ばすための実戦練習に付き合ってもらう事にします。

 性格は単純そうなので、少し口車に乗せれば簡単に動いてくれそうな気がします。


 あと一つ。

 魔法少女の活動とはまったく関係ないかもしれませんが、今日初めて、学校帰りに友達と喫茶店に立ち寄る、という行為をしました。

 色々と嫌われようと行動していたので、私の事を友達と思ってくれているのかは疑問ですが…

 誘ってくれた美咲さんはともかく、文句言いつつも付き合ってくれていた裕美さんもけっこう良い人なのかもしれません。

 名誉魔族という点を除けば、裕美さんとは仲良くできそうな気がします。

 何だかんだ言いつつも、このお二人とはうまくやっていけるかもしれない、そんな気がします。



4月26日

 今日は色々と得るものが大きかったかもしれません。


 それはそうと、昨日色々と書いていた裕美さんですが、予想以上に強かったです。

 もう少し善戦できるかと思っていたのですが、軽くあしらわれたのでショックは大きかったです。


 そして、そのおかげかもしれませんが、本物の魔族と話す機会を得ました。

 それも二人もです。

 一人目はカラオケ店でナンパされて困っているところを助けてもらいました。

 悪人だと思っていた魔族に助けられた事に驚いたのですが、それよりもむしろ、生まれて初めてナンパされた事に驚いてしまいました。

 たぶん、性格も明るくて美人な美咲さんを目当てに声をかけてきたんでしょうが、混乱してうまく喋れなくなってしまいました。

 あまりに混乱してしまい、変身アイテムを握りしめてしまっていたようで、裕美さんが助け舟を出してくれるまで気付いていませんでした。

 裕美さんが助けてくれなかったら、混乱したまま変身していたかもしれません。

 危うく大騒ぎになるところでした。

 裕美さんには感謝です。


 それと、カラオケに来たのはいいのですが、私、流行りの歌とかわからないどころか、歌自体まともに歌えないので、混んでいてくれた事と、待つのが苦手な裕美さんの短気さに感謝です。


 その後は裕美さんの自宅に伺いました。

 そこでヴィグルさんという魔族の方とお話させていただきました。


 魔王の強さ・恐ろしさを教えられました。

 しかし、世界の平和のためにも、私には魔王を倒す使命があります。

 簡単にあきらめるわけにはいきません。


 ただ…

 お話させてもらった感じですが、このヴィグルさんも決して悪い人には見えませんでした。

 魔族を全滅させる事が平和への道…

 そう思っていたのですが、悪人には思えない魔族を倒す事が善行なのか、それがわからなくなってきてしまいました。


 それはそうと、ヴィグルさんの話を聞けば聞くほど、魔王の正体は裕美さんに思えてきてしかたありませんでした。

 せっかく仲良くなれそうだというのに、裕美さんであってほしくはありません。

 大丈夫!何だかんだで裕美さんは良い人なので、極悪人としか思えない魔王なはずありません。


 それと、ヴィグルさんから「魔王の正体を暴く事」が魔王に挑む最低条件だと伺ったので、家に帰った後、魔法少女衣装に細工をしました。

 襟元に小型の隠しカメラを設置しました。

 これで魔王とニアミスした時や、何かあって私が気を失ってしまった時でも証拠が残せます。


 あ、隠しカメラといっても、私の財力では買えないので、魔法を使っての即席アイテムを作っただけなのですけどね。

 強化魔法をかけたガラス玉をカメラレンズに見立てて、私が変身している間はそこに映った物を記録できるように、同時に私のスマホにバックアップ用にその映像を転送して保存できるようにしました。


 これで準備は万全なので、明日から魔王探しをがんばりたいと思います。



4月27日

 何から書けばいいのでしょうか?

 どのように書けばいいのでしょうか?


 結論から言えば、魔王の正体が判明してしまいました。

 もしかしたら、とは思っていましたが、やはり裕美さんが魔王だったようです。


 今日学校に行くと「異世界から来た魔王」を名乗る人に学校が襲われてました。

 私は、人波に紛れて変身をし、異世界魔王と戦いました。

 しかし力及ばず負けてしまい、美咲さんに助けられたところで気を失ってしまいました。


 気付いた時には、美咲さんに回復魔法をかけてもらっており、異世界魔王と戦っていたのは、この世界の魔王でした。

 サーチ魔法をかけてみて、美咲さんやヴィグルさんが言っていた意味がわかりました。

 魔王の魔力は桁違いでした。

 挑むのが馬鹿らしく思えるほどの実力差を感じました。


 その証拠に、私が手も足も出なかった異世界魔王が、逆に手も足も出せずに蹂躙されていました。

 ただ、その一方的な虐殺を見ていられずに、美咲さんの静止も聞かずに飛び出してしまい、案の定魔王に返り討ちにあい、再び気を失ってしまいました。


 再び美咲さんの回復魔法で目覚めた後、二人で教室へと向かいました。

 美咲さんはヘマをしてしまい、クラス皆に正体がバレてしまっていたようで質問攻めにあっていました。

 この時「魔王の名誉魔族が裕美さん」という言葉が聞こえてきましたが、魔王と裕美さんの強さを   考えると納得してしまいました。

 ……この時は。


 この後、本を読むふりをしながら、私が気を失っている間の映像をコッソリと観ていました。

 美咲さんだけじゃなく、裕美さんも私を助けに来てくれていたのを見て嬉しくなったのですが、その後でした。

 どこかに転移し、美咲さんが裕美さんに何かを話しかけた時、裕美さんの手に変身アイテムが握られているのが見えました。

 嫌な予感がしたその瞬間、裕美さんは魔王の姿へと変身したのでした。


 ただ、裕美さんは私を撃退した後、一言「手荒な方法しかなくて悪かったな」と呟き、回復魔法をかけてくれていました。

 極悪人だと思っていた魔王までいい人だったら……

 私の頭は完全に混乱していました。


 そんな混乱した頭で裕美さんに声をかけた記憶はあるのですが、何を話したのかさっぱり覚えていません。

 それだけ混乱していたのかもしれません。


 その後学校が休校になる事がわかり、美咲さんに遊びに来るかと誘われたのですが、私は誘いを断り、逃げるように家に帰ってきました。


 私は一体この先どうすればいいのでしょうか?



4月28日

 やってしまいました。

 初めて学校をさぼってしまいました。


 裕美さんにどう接すればいいのかわからなくなってしまい、会うのが怖くなってしまったからかもしれません。


 とはいっても、学校を休んでしまっても、特にやる事もないので、魔王に関して調べてみようかと思い立ち、ネットを色々とあさっていました。

 すると「本日魔王テレビ出演決定」という記事を見つけました。

 余計に頭が混乱しました。

 裕美さんが何を考えているのか?意図がまったくわかりませんでした。


 とりあえずは、その番組を見てみようかと思ったのですが、一人で見るのが怖くなってしまいました。

 とにかく、悩みすぎたこの状態で一人でいたくありませんでした。

 しかし引っ越してきたばかりで頼る人もいない私……

 恥を忍んで、美咲さんに連絡しました。


 美咲さんは深く突っ込む事なく、私を受け入れてくれました。


 混乱した状態ですが、テレビを見ながら美咲さんと色々と話をしました。

 私が魔法少女になった時の想いを改めて確認しました。


 魔物達は良い人が多いです。

 でも、この世界にいるのは違う気がするのです。


 戦う事なく魔物達に元居た世界に帰ってもらう方法を考えなくてはなりません。

 悪人ではない魔族と戦わなくて済む方法を……


 思いつくのは、この裕美さんが変身している画像を利用する事なのですが、裕美さんの事を考えると、それはやりたくありません。


 私はどうすればいいのでしょうか?



4月29日

 明日までに結論を出さなくてはならなくなってしまいました。


 キューちゃんを含めて、私・美咲さん・裕美さんの4人で話し合いがしたい、という美咲さんからの連絡がきました。


 この画像を、裕美さんへの脅しとして使用して、魔族を元の世界に帰してもらう事ができるかどうか。


 昨日からためらってはいましたが、このままズルズルと裕美さんと友人関係を続けていては、きっと何もできずに終わってしまう。

 魔王の強さを考えると、取れる手段はおそらくこれしかありません。


 ただ、これは、私の事を友達だと思ってくれている裕美さんへの裏切り行為でしかありません。


 こんな事をしようとしている私が許せないのと、こうするしか魔族を元の世界に帰す方法がない、という現実。

 そこで、一つ決め事をしました。

 画像を脅しに使い、裕美さんが従ってくれれば私の勝ち。ダメだったら私の負け。


 負けた場合は、それ相応の罰を受けようと思います。

 例え死ぬような目にあったとしても、私がやる事はそれだけの事なのだから。


 裕美さん……いえ、これから信頼を裏切る行為をしようとしている私が、名前呼びするのはおこがましい気がします。


 大間さん。

 全てが解決して、もし私を許してもらえるのでしたら、また、友達として扱ってくれますか?また『裕美さん』と呼んでも構いませんか?


 明日、私は死ぬかもしれません。

 今日がこの日記の最後になるかもしれません。


 どうか、明日も続きが書けていますように……


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