第二話 魔法少女とマスコットキャラ
案の定というか何というか、今井さんは私の隣の席に案内される。
「よ、よろしくね~……えっと、今井さん……て呼んでいいかな?」
一応社交辞令的な挨拶をしてみる。
結果は、チラ見されただけでシカト……
このクソ女、ちょっと可愛いからってお高くとまりやがってぇ
「おい美咲、後でこの女レ〇プしとけ」
「それを女のアタシに言ってどうすんだよ?」
「私に男友達いると思ってんのか?美咲のギャル的交友関係当たればヤ〇チンの5人や10人くらい余裕でいるだろ?」
「いねぇよ!女子高のギャルに何期待してんだよ!そんな事ばっか言ってると、同性でもセクハラでうったえるからな!」
後ろの席の利点を活かして、美咲の椅子をガンガン蹴りつつ言い合いをする。
授業中だろうとお構いなしにやるのが私達の……
「ねぇアナタたち、先生には聞こえないだろうけど、隣の私は丸聞こえなの、勉強に集中できないからもう少し静かに騒いでくれないかしら?」
まさかの隣からの刺客。
ってかこいつ私の挨拶は無視したくせになんだその常識人っぽい言い方は?挨拶まともにできるようになってから言えよ。
「なぁ……」
美咲も若干頭にきているのか、声のテンションが下がっている。
「裕美……あんたアイツ後でレイ〇しとけ」
「うるせぇ……お前が〇イプされろ」
結果、隣の女にチクられて、二人して職員室へ呼び出されたのだった。
説教が終わり、職員室を出ると休み時間は終わり、二限目の授業のチャイムがなった。
「急がねぇと次の休み時間も説教で終わるぞ」
美咲はそれだけ言って、即ダッシュで教室へと向かう。
私を置いてけぼりにしようとしての行動なのだろうが、それは無視する。
私は、近くに置いてあるごみ箱をあさり、中に入っていたフカフカの物体をつかみ取ると、そのまま廊下の窓を開け、屋上へジャンプした。
一階から屋上への跳躍なので、周りに人がいないのはもちろん確認済みだ。
屋上に着地し、先程つかんだ物体を床に投げつける。
「相変わらず乱暴なんだね君は。まったく、隠れていたつもりだったのだけど、やはり君にはバレていたんだね」
その物体は地面にバウンドする事なく、宙に浮く。
いつかのマスコット浮遊狐である。
「オマエさぁ、魔法少女量産すんのやめてくれねぇ?世の中平和なんだから魔法少女とか必要なくね?」
「それは表面上そう見えるだけだよ。現に魔物は災害認定されているのが何よりの証さ」
「別にそこまでの悪さしてなくね?人を殺したりするのは禁止してるし、無暗に暴れたりした奴は私が直接ぶっ飛ばしてるし」
「そこだよ。今は君が君臨しているからいいかもしれないけれど、君がいなくなったら元通りになる。君の魔力は化物レベルだけど、人間なんだ。いつかは寿命がくる。そうなってから対処するんじゃ遅いんだよ」
何事もなるようにしかならないと思うんだけどなぁ……
そんな私の持論を言ったところで会話は平行線だろうから、言わずにおいた。
「じゃあせめて、私の近くで魔法少女スカウトするのやめてくれねぇ?いつか身バレしそうで嫌なんだけど」
私がそう言うと、浮遊狐は口をつむぐ
「……最初のうちは、才能のある子をスカウトするために、他国の少女にも声をかけたんだ……でも、戦うべき敵が日本にいるって言うと、やれ『親の了承がないとパスポート申請できない』だとか『交通費や宿泊費はどうするの?』とか僕の力だけじゃどうしようもない難題が降りかかるんだ……」
あ~……こりゃ地雷踏んだな……
「そんななか、幸はとても正義感が強くて良い子なんだ。元々住んでたのはここから200㎞ほど西の方なんだけど、魔物がよく出没するのがこの地域なんだって教えたら、両親を説得して、単身ここまで来てくれたんだ」
つまり面倒臭いタイプの人間って事ね……自分に酔ってるタイプ同士通じ合うものでもあったのかな?
「もう気付いてるだろうけど、今日転校してきた幸は魔法少女だ。でも魔王の正体が君だという事は話していない。使命感も強い子だから、知ったらすぐにでも君に戦いを挑んでしまう。あの子には魔法の才能がある。大器晩成なタイプなんだ。成長途中で潰すような事はしないであげてほしいんだ」
わかってないなこの浮遊狐。そんな事聞いたら逆にやりたくなるのが私なのに。
「な……なんだその顔は!やはり君は最低の人間だね」
おっといかん。顔に出てたか。
「心配しなくても高校入ってからは、手を出されない限り、こっちからは仕掛けてねぇだろ?そのスタンスは変えてないから安心しろって」
「君にこんな事言うのは変なのだけど、ありがとう。僕は彼女の成長を見守ってあげたいんだ」
「あんたがそんな事言うなんてねぇ……幸ちゃんに惚れちゃった?私の力を初めて見た時失禁してビビってた子狐が大人になったねぇ」
「漏らしてない!相変わらず下品だな君は!」
煽り耐性低いなこいつ。
「君の近くにいると下品さがうつるのかい?だったら幸にはあまり近づかないでほしいな」
「うつるって……失礼な浮遊物だなぁ」
「現に君に潰された2人目の魔法少女の彼女……昔はとても清い心の持ち主だったのに、君の近くにいたせいで今ではあんな……」
うわ、自分が1番目と2番目に目を付けた魔法少女同時にディスりやがった。
「まぁいいや、これ以上話してると授業に遅刻するから私はもう行くぞ」
「もう十分遅刻してると思うのは気のせいかい?」
良い返しだ。私の予想通りの反応だ。
私はただ新しく使えるようになった魔法を自慢したいだけなのさ。
「時空間を歪めて、過去の空間と強制的に扉を繋ぐ魔法を開発してみたから大丈夫。と言っても、ブレが激しいから数分前までしか遡れないけどね」
浮遊狐は絶句していた。
「時間軸をどうこうする魔法なんて過去誰一人として成功した事なんてないよ……やはり君は化物だね」
その言葉を背後に聞き、私は教室へと戻っていった。