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魔王少女  作者: mizuyuri
第七部
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第二十七話 ドライブ中

 大学周辺を、特に目的もなく散策する。

 いや……いちおうは目的あるかな?

 まだ、この近辺に不慣れな私と胡桃を案内する、というような名目にはなっている。

 まぁ私の場合、実家からでもギリ通える範囲の大学なので、そこまで詳しくはないけれど若干の土地勘はある、ってな状態なんで、案内されるほどでもなかったりする。

 たしか、胡桃も実家通いだ、みたいな事を前に聞いたような気がするから、下手したら私よりも土地勘あるんじゃないか?


 大学近辺散策案の発案者のルリちゃんは、もう少し私達の情報を入手してから言うべきだったな。

 まぁカナちゃんの授業終わりを待つ時間潰しみたいなもんなんで、そこまで文句言わんけど……あと、車移動なので、疲れたりしないのも良い。


 そう!驚くべき事にルリちゃん免許持ちだったのだ。

 大学までは車通学だという事らしい。人は見かけによらないものだ。こんなボケボケした感じのルリちゃんでも免許は取れるんだな……


 そして案内される場所は、ほぼ居酒屋ばかり。「ここは酒の揃いが~……」とか「こっちは料理が豊富で~……」とか「あそこはお値段が安くて~……」といった感じで、お前この近辺の居酒屋どんだけ通ってんだよ!?と言いたくなるほどだ。


 ちなみに、飲んでどうやって帰宅するのか聞いたところ、とりあえず車は大学の駐車場に置きっぱなしにして、帰らずに車中泊するか、時間かかるけど電車で帰る、との事だった。

 今まではどうしてたのかを聞いたところ、基本的に飲んでいると終電時間をぶっちぎってしまうため、車中泊をしようとはするものの、カナちゃんに止められてしまうらしい。

 そりゃあ酔っぱらった若い女性が一人車中泊とか、治安が良くても止めるだろう。


 そして、そんなルリちゃんを、自分が住んでるアパートに持ち帰ってくれているカナちゃんは結構なお人好しなのだろう。

 話を聞いていて、2年生組の人間関係が何となくわかったような気がした。



「さて……そろそろカナの授業も終わるかな?ゆっくりと大学に戻るねぇ~」


 ある程度案内して満足したのか、大学への帰路につく。


 それと、ほぼ同時だった。

 私の携帯が鳴る。発信者には『美咲』という名前が表示されており、何となく嫌な予感がした。


「……もしもし。どうした馬鹿?私は今忙しいんだよ。用件はサクッと言え」


 無視するような理由もなかったので、仕方なく美咲からの電話に出る。


『馬鹿って誰だよ?まぁいいか……近くに例の魔法少女の子っている?』


 馬鹿は自分が馬鹿だって自覚が無いから馬鹿なんだ。という言葉を送ってあげようかとも思ったが、話が大きく脱線しそうだったので止めておく。

 どうせくだらない内容の電話だろうから、早めに終わらせよう。


「いるけど。それがどうした?」


『ちょっと電話かわってくんね?まぁアタシに任せとけって裕美。例の作戦はバッチリとセッティングしといてやるから!』


 例の作戦?まさか本気で、あの『夕日をバックになんちゃら~』ってやつを実行しようとしてんのか?馬鹿なのか?本気で馬鹿なのか美咲!?

 とりあえず胡桃に電話をかわるのはかまわないが、私が知らないとこで話が進むのは避けた方がいいかもしれない……


「なぁルリちゃん。この車のナビってブルートゥース対応してるか?ちょっと私の電話繋いでいいか?」


「ん~?普段使ってないからよくわからないけど、たぶんできるんじゃないかな?」


 使える機能は、ちゃんと使えよ……もったいねぇな。

 とりあえず勝手にナビに接続する。


「ほら、胡桃にも通話聞こえるようにしたぞ。喋りたきゃ勝手に喋れ」


「え……?わ、私?」


 状況が分からない胡桃は不思議そうに声を出す。

 そりゃあ会った事もないヤツに、いきなり名指しされたら「何で?」ってなるよな。


『ふっふっふ……キミが最近アタシ達に喧嘩売ってるっていう魔法少女だね。アタシは魔王軍四天王の一人でミサ……まぁ『M』とでも名乗っておこうか』


 何を考えてるのかまったくわからんが、演技がかった口調で喋り出し、いきなりウッカリ本名名乗りそうになっている美咲。

 うん、マジで何がしたいんだコイツ?


「……四天王?……もしかして総入れ替えとかしてるの?……でも何か聞き覚えがある声な気がするんだけど……う~ん」


 クソガキ先輩が魔法少女やってた時にはいなかった新四天王に、疑問の声をつぶやいている。

 まぁ四天王人事に関しては、幸が大学来た時に軽く説明したから何となく察したのだろうけど、レイの暗示に掛かってユリ襲った時に共闘してたヤツの声だって事には気付いてなさそうだった。


『さて、今その携帯に写真を送ったので、是非見てほしい』


 その美咲の言葉と同時に写真が送られてくる。


「は……春花先輩!?」

「え?春花!?用事があるって言ってたのに……どこよここ?」

「え?何?何が写ってるの?ねぇ?」


 運転中で画面を見られないルリちゃんは置いといて、そこに写っていたのは、椅子が1つしか置いてない部屋に監禁されており、その椅子に腰かけ不安そうな表情をしたハルカちゃんだった。


『見てわかるように、キミの大事な先輩はアタシが預かっている。無事返して欲しければ、10分後にキミ達が通っている大学の近くにある、大きな川の橋の下まで来るの……』


「やだよ。さっき『私は忙しい』って言っただろうが。この後飲み会があるんだよ」


 美咲の発言を食い気味に拒否する。

 だって写ってる部屋って、コレ魔王軍本部だし。ハルカちゃんの居場所がわからないわけじゃないから、回収しようと思えば、ハルカちゃんいつでも回収できるし。


『ちょっ!?待て裕美!話が違う!!』


 話ってなんだよ?打合せした覚えなんてねぇぞ。


「い、行く!行くから……は、春花先輩にき、危害は加えないで!!」


 ん?焦り出した美咲の発言が聞こえないくらいに、胡桃も焦ってる?

 ハルカちゃんを人質にとるのって、胡桃にとっては予想以上に効果あるのか?よくわからん。


『お、おう……じゃない!?ま、待っているぞ新人魔法少女』


 焦りながらも、演技の軌道修正に成功したのか、言いたい事だけ言って美咲の電話は切れる。


「ちょっと裕美!四天王って事はアンタの部下なんでしょ?コレどういう事よ?」


 隣に座るクソガキ先輩が、他2人に聞こえないように耳打ちしてくる。

 まぁ確かに形式上は私の部下って扱いにはなるのだろうけど……


「アイツ……馬鹿だから何がしたいか、私にもわかんねぇんだよ……」


 とりあえず事実だけを伝えておいた。


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