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魔王少女  作者: mizuyuri
第七部
239/252

第十九話 貰い事故

「ノゾミの時に『性格に難がありそうな子は避けてた』って言ったのを覚えてるかい?クルミはそれに該当してて避けてたんだけど……まさか変身アイテムを自力で手に入れるとは思わなかったよ」


 気を失った胡桃を、コスプレ研究会の部室に運び込み、浮遊狐に事情聴取を開始する。


 ちなみに、ルリちゃんは現在ここにはいない。

 胡桃の介抱ために、水と濡れタオル持ってきてくれ~……的な事を言ったら「任せて!」と言って走り去っていった。

 ていの良い厄介払いなのに、素直に従ってくれるルリちゃん、やっぱスゲェ良い子なんじゃね?


「クルミの持ってる変身アイテムを見たけど、アレはたぶんアミに与えた石だね」


 この浮遊狐、石見ただけで誰にあげた物かわかんのか?

 そんな石マニアなのか?何か胡散臭ぇな。

 でもまぁ、ぶっちゃけ誰が使ってた変身アイテムか、なんてどうでもいいんだけどね。


「『アミ』?う~ん……聞いた事あるような気がするな。15番目くらいの魔法少女だっけか?」


「15番目はノゾミだよ……アミは13番目。そんな事も覚えてないのかいユミ?」


 誰が何番目とか覚えてるわけねぇだろ?馬鹿なのかこの浮遊狐。


「とにかく何だ?えっと……そのアミちゃんとやらが落とした変身アイテムを胡桃が拾ったって感じか?」


「『落とした』んじゃない……おそらく『捨てた』んだよ」


 捨てた?

 おいおい冗談だろ?魔法少女が変身アイテム捨てるか?

 私の次に魔法少女になった美咲ですらまだ持ってるぞ。もちろん目の前にいるクソガキ先輩だって、しっかりと保有している。


「その顔……キミがアミを、どう脅したのか覚えてないのかい?」


 何か特別な脅しとかしたっけか私?


「拷問紛いな事した後で、『私のサーチ魔法は、変身アイテムの位置も把握できる。例え変身しなくても、お前がどこにいるかは手に取るようにわかるって覚えとけ』とか言っていたじゃないか!そんな事言われたら怖くて、変身アイテム捨てるに決まってるだろ!」


 そういや、そんな事言ったかもしれないな。

 でもそれって、枕詞に『魔王軍(わたしたち)に喧嘩を売り続けるなら』ってのが付いてたハズだけどな……

 逆らってこなきゃ何もしねぇのに。


「拷問紛いって……その子にはどんな酷い事したのよ裕美?」


 どうやらクソガキ先輩は、後輩魔法少女が気になるようだ。


「たしか……最初は好きなだけ攻撃させて、ちょうど10発攻撃魔法を受けた段階で、拘束魔法で動き封じて『一発は一発な?』って言って、指の爪全部をジワジワと剥いでいっただけだったと思うぞ」


 割と優しい方じゃね?


「その行為を『たったそれだけ』で済ませるのはキミの感性が狂ってるんだよ」


 失礼な畜生だな。


「攻撃すらさせてもらえずに、全部の指を折られた上に窒息死させられた私よりマシなんじゃない?……そのアミって子、根性ないんじゃない?」


 おっと、ここにも感性が馬鹿になってるヤツがいたよ。


「……2人とも、クルミには、あまり酷い事はしないでくれないかな?」


 何か色々と諦めたな浮遊狐。



「ただいま~!水と濡れタオル持ってきたよ!」


 会話的にキリの良いタイミングでルリちゃんが戻ってくる。


「あれ?魔王さんはいなくなっちゃった?代わりに裕美ちゃんいるし」


 ちなみに、気絶した胡桃は、魔王状態の私が部室まで運んでいる。

 魔王とはいえ、流石に気絶した胡桃を放置するのは気が引けたのだ……

 いちおうは「どこか休ませられる場所あるか?」と声色変えて演技をして、部室まで案内してもらった感じになっている。


 んで、ルリちゃんに「水と濡れタオル持ってきて」と指示して、部室から追い出したところで変身解除している。


 そんなわけで『私=魔王』ってのを疑われないようにするために、いちおうは言い訳をしなくてはならないわけである。


「魔王?私は見てないけど、トイレから戻ってきたらこんな事になっててビックリしたよ」


 どうだコレ!見事なすっとぼけだろ!


「あ……裕美ちゃん、本当にトイレこもってたんだ……」


 しまった!!?さっき電話出なかったのは、トイレ行ってるって設定にされてたんだった!!


「いや!トイレ行ったのは、ついさっきだぞ!ずっとこもってたわけじゃないからな!」


「そんな必死にならなくてもいいよ裕美ちゃん。うんうん、そうだね。トイレはさっき行っただけなんだよね」


 あ、コレ「大丈夫!そういう事にしといてあげるよ!」的な感じだ。

 完全に誤解されてんじゃん!変な誤解されるくらいなら『私=魔王』ってバレた方がマシだったんじゃないかコレ?

 とりあえず、後でクソガキ先輩は3・4回くらい殺そう。


「あ、とりあえず、せっかく濡れタオル持ってきたんだから、胡桃ちゃんのおでこに乗せとこ~」


 たしかに胡桃の介抱は大事だと思うんだけど、私の便秘疑惑を「とりあえず」で流さないでほしいところである。



「…………ち、違う……私は……私は…………嫌わないで…………春花先輩……」


 ルリちゃんが、濡れタオルを乗せると、胡桃は呻くような声で寝言をこぼす。

 『春花先輩』?ハルカちゃんと何かあったのか?


「胡桃ちゃん、副会長とケンカでもしてたのかな?」


「春花からは、特にそんな話聞いてないけど……裕美は?」


「さっぱりわからん」


 3人顔を見合わせるが、胡桃の寝言の真相は謎のままだった。


「どういう事だ浮遊狐!」


「僕がわかるわけないじゃないか!何で僕に聞くんだいユミ?」


 いや、わからないだろうなぁ~とは思ったけど、いちおう流れ的には聞かないとダメかなぁ……と。オチは大事だし。


「あ!胡桃ちゃんの介抱ですっかりスルーしちゃってたけど、魔法少女のマスコットキャラクターって本当にいるんだね~」


 視界に入ってたのに、このUMAをスルーできるって、ある意味大物だなルリちゃん。


「ねぇねぇ、私も魔法少女になれたりする?」


 目を輝かせて浮遊狐にお願いしてるけど、やめといた方がいいぞルリちゃん。

 魔法少女になっても最終的には魔王(わたし)にボコボコにされて終わるだけだし。


「残念だけど、魔法少女になるには、特殊な潜在的な才能が必要なんだ。失礼な言い方になってしまうけれど、キミは魔法少女に変身できる才能は無いみたいだ」


 よかった。ルリちゃんが変な魔法少女詐欺に引っかかる心配はなさそうで、本当によかった。


「そっか、残念……そういえば、さっき裕美ちゃんの名前呼んでたけど、知り合いなの?裕美ちゃんも変身できたりするの?」


 あ!言われてみれば、さっきポロっと人の名前呼んでやがったな!?どうしてくれんだ浮遊狐!?これだから、知能が小動物程度しかねぇのに喋る畜生は嫌なんだよ!


「わ……悪いけど、詳しい事は言えないんだ」


「おいクソ狐!何を意味深な事言ってんだよ?誤解されんだろ。一言『無関係だ』って言えよ」


 相変わらず嘘つく事ができねぇのかよ?

 疑似生物なんだろ?その辺ちゃんとアップデートしとけよ!こんどレイの野郎に文句言わねぇとな。


「だ、だって……し、仕方ないじゃないか!ぼ、僕は嘘付けないんだ!」


 胡桃並みにどもりだしたなオイ。


「だったら余計な事言わねぇで黙ってろよカスが!」


「う、うう~……どうしたらいいんだい?……もうキミだけが頼りだ!マヒル、僕を助けてくれないかい?」


「え!?裕美ちゃんだけじゃなくて会長も!!?」


 うわぁ~……これクソガキ先輩、完全な貰い事故じゃん。


「…………裕美。うっかりマスコットキャラ殺しちゃっても、罪にはならないわよね?」


 目がマジだなクソガキ先輩。


「3・4回くらいまでならセーフじゃね?」


 とりあえずは適切なアドバイスを送っておく。


「1回でもアウトだよ!!」


 何ムキになってんだよ?うるせぇUMAだな。


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